すべてから逃げたい君へ捧ぐ

@perappy

第1話 目覚め

カーテンをさっと開けて、セレナは陽光をいっぱいに浴びた。窓から通りを行く人を半目で見下ろしながら、彼女は自分がこの街に引っ越してきたことを思い出した。


朝である。


布団の感触を確かめながら、名残惜しいようにベッドを出る。頭痛がするが、それ以外は健康だ。どこも悪いところはない。自分の体をスキャンするように感覚を確かめるのが彼女の日課で、それが新生活においても継続されていることに少しの安堵を感じた。


身支度を手早く済ませ、、家を出る。これからの生活で食事をどうするかはよく考えていないが、とりあえず今日はこの街のカフェでも開拓しようと思った。


通りに出ると、人々は楽しそうに友達や恋人と話しながら軽い足取りで歩いている。セレナはそれを見て、心底嫌な気分になった。


(結局どこに行っても人間の本質は変わらないか)


こうやって自分の孤独を見せつけられると、心の中に毒がたまっていくのを感じる。その感覚もまた、毒を生み出していく。いけないいけない、と無理やり思考を切ってセレナは足取りを早めた。


テリシア共和国、首都テリシア。石畳の道路に白を基調としたカラフルな家が立ち並ぶ、西洋の街並み。セレナは目を閉じて深呼吸をする。やっぱり、この国のほうが私にあっている。


しばらく歩いて、適当なカフェに入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

すべてから逃げたい君へ捧ぐ @perappy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る