半強制巣ごもりデー

CHOPI

半強制巣ごもりデー

「さて続いては、お天気情報です――……」

 テレビの中のキャスターがそう言ったのを聞いて、テレビの音量を三個ほど上げた。週末にやってくる台風情報を目にして秋の風物詩だな、なんて思う。明日、明後日の二日間にかけて日本列島を横断するらしい台風の情報を見て、今日中に巣ごもりの準備を終わらせなければな、と小さく息をついた。


 ベランダに出て昨日のうちに干しておいた洗濯物を触ってみる。台風前、駆け込みで行った洗濯物はなんとか乾いていて、それを取り込みつつハンガーの類とベランダ用のサンダルも早々にしまっておく。時折空に目をやると、高い空に流れていく雲がいつもの倍のスピードだった。洗濯物をさっさと片付けて、買い出し物をまとめてしまおう。そう思って部屋の中へそそくさと入る。


 洗濯物を片付けて、机に向かって買い出しのリストをまとめる。普段から一週間ほどまとめ買いをしている人間なので、トクベツ大きな買い出しは無いけれど、この際だからストックに不安があるものを。


 水、はこの間買ったばかりか。そうだな、非常食代わりのインスタント麺を少しだけ買っておこうかな。あとはレトルト食品も二個ほど足しておこう。あとはちょうど切れそうなティッシュと、念の為の常備薬。


 そうして買い出し物をザッとまとめてメモをして、今のうちに、と家を出た。


 外に出てみれば、いつもよりも少し強い風が吹き始めていた。自分が学生の頃はこの時期に台風が来ると『台風は進路が決まっていて良いよなー』なんていうのがお決まりのネタだったけど、今ってどうなんだろうか。近年の台風、たまに進路迷走してるしな……、なんてどうでもいいことをぼんやり考えながら、近所のスーパーへの道を歩く。途中、すれ違った近所の小学生の子たちが傘を広げて『飛べそう!!』なんて大騒ぎしているのを懐かしく思った。それを見て『危ないぞー……』と思うのは、きっと自分がいつの間にか大人になっているからだけど。


 買い出しを終わらせて家に戻ったら、もうこの後二日間は引きこもり。仕事も運よく休みだし、久しぶりにおうちの中に引きこもる。この後の天候に不安が頭をよぎるけど、出来る備えはしているからこれ以上はもう、なるようにしかならない。


 ついさっきまで高い青空が見えていたのに、もう薄暗い雲が空の大かたを覆い始めている。その様子を見て、週開け、台風一過のキレイな青空を見上げられることを願いつつ、足早に自分の家へと戻るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

半強制巣ごもりデー CHOPI @CHOPI

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ