第114話 作戦会議part……? 数えてないわ


 この世界を手に入れて、随分と経った。

 もはや、私に逆らう者はいない。


 女神教の残党も討ち取り、隠れていた女神教の信者共もあぶり出した。

 踏み絵なんかをしなくても信者リストに載っていないだけでわかるのは手っ取り早くて良い。


 女神教の信者にだって、数ヶ月も猶予はあげた。

 それなのに私の信者になれない者は人ではないのだ。

 そして、それは降伏してきた生徒達も同様である。

 とはいえ、生徒達はミスズさんが上手く説得したようで、すぐに信者リストに載った。


 すでにこの世界の住民はほぼ私の信者だ。

 実際は赤ちゃんとか、ボケたじいさん、ばあさんはリストに入っていないが、さすがにそこはスルーである。

 しゃーないもん。


 私の信者ポイントはすでに1億に届いている。

 予定通り、アテナの信者を丸々もらったのだ。

 それに加え、地球でも私の信者が増えつつある。


 元からいた1万人もだが、世界各国で貧困に苦しむ人々に幸福という名の援助しているのだ。

 物資や食料で簡単に私の信者になってくれた。


 小さい国ではあるが、いくつかの国は完全に政治主導権すら掌握している。

 この辺はさすがのリースである。

 こういうことをやらせたら右に出る者はいない。


 私はいよいよ、すべての準備が整ったため、幹部の一部を社の会議室に集めた。


 メンバーはミサ、リース、勝崎、氷室、エルナに加え、ミスズさんとトウコさんもいる。


「なんで私まで…………」


 ミスズさんが俯く。


「お前には帰還する生徒の引率があるんです。お前は幸福教団の広報です」

「…………いつからそんなものに」

「今です。今日からお前は幹部です。良かったですね」


 新しい幹部の誕生だ!

 でも、広報を取られたリースが憎々しげにミスズさんを見ている。

 ……やっぱり取り上げて正解だったわ。


「…………最悪」

「ん?」

「いえ、何でもないわ」

「よろしい。では、会議を始めます」


 新たなる幹部が誕生したところで会議を開始することにした。


「あのー、ひー様、会議をするのはいいっすけど、これだけっすか?」


 勝崎がこの場にいる皆を見渡し、聞いてくる。

 まあ、確かに少ないと思うだろう。


「その辺も含めて説明します。まずですが、この世界は完全に私の物となったと思っていいでしょう」

「おー!」

「ついにですか!」

「やりましたね!」


 皆が喜んでくれている。

 ミスズさんとエルナは知らぬ存ぜぬでお茶を飲んでいるけど。


「思えば長かったですね。でも、お前達の頑張りと祈りがこの世界を救済したのです……」


 私は袖で目頭を抑えた。


「ひー様……」

「すべてはひー様の御威光でしょう!」

「さすがはひー様!」


 皆、感動している。

 一部はシラーっとしているけど。


「さて、この世界の救済は終わりましたが、まだ、あっちの世界が残っています」

「それは…………では、ついに戻りますか?」


 勝崎が聞いてくる。


「そうなります。すでに一部の幹部は先に帰還させ、工作に入っています」

「おー! さすがですね!」


 でしょ!


「では、帰還後の作戦です。まずは帰還し、一気に国会議事堂を抑えます」

「テロですか? さすがに警察や自衛隊が黙っていませんよ? 俺らにも武器はありますが、向こうも持っています」

「ふふふ。安心なさい。神の前にはすべてが無力です。その辺は私に任せればいい」

「そうですか。わかりました!」


 うんうん。


「勝崎、お前は日本の教団員を率いて、国会議事堂に行きなさい」

「はっ! こっちの世界の兵は?」

「まだ不要です。それは日本を抑えてからです」

「わかりました」


 私は勝崎に指示を出した後、氷室を見る。


「氷室、お前も教団員を率いて、マスコミを抑えなさい」

「了解です。報道します?」


 もちろん、私達に有利になるようにという意味だろう。


「それは後々です。偏向報道で私の子を迫害したヤツらがいます。トップ連中は始末しなさい」


 まあ、偏向報道じゃなくて、事実だけどね……

 マスコミは真実しか報じていない。


「わかりました。お任せを」


 氷室がニヤリと笑った。


「ミスズさん、生徒達にはちゃんと指示した?」


 私は次にミスズさんを見る。


「……したわよ。えーっと、私達はアテナとかいう悪魔によって異世界に攫われました。しかし、ヒミコ様に救われました。ヒミコ様は偉大です…………バカ?」


 ミスズさんが鼻で笑った。


「箇条書きっぽく言うからですよ。もっとそれらしく言いなさい。要は口裏合わせです」

「事実と大きく違うんだけど…………」


 そりゃね。

 攫ったというか、転移させたのは私達だし。


「私が言ったことが事実なんです。とにかく、これを言えないヤツは置いていくって言っておきなさい」

「面倒ねー……」

「間違っても親に事実を言ってはいけませんよ? それをしたらどうなるのかよく考えなさい」

「わかってるわよ。それをしたら親が幸福教に入信しなくなる。そして、信者にならないと殺される…………皆もよくわかっているわ」


 ミスズさんは皆によく言い聞かせたようだ。

 さすがは広報。


「ヒミコ様、私は?」


 ミスズさんの相方であるトウコさんが聞いてくる。


「あんたは何もない。ミスズさんが1人だと寂しいだろうから呼んだだけ」

「えー……私の活躍は? 作戦参謀なのにー」


 トウコさんが残念がると、リースが満面の笑みになった。

 ホント、小っちぇー……


「今回はやることがすでに決まっているのよ。大人しく親のところに帰りなさい」

「ちぇー」


 …………こいつ、ミスズさんのこととか関係なく、作戦参謀をやる気満々な気がする。


「とにかく、国家議事堂を占領後にあんたらを他の生徒と一緒に学校に転移させるから家に帰りなさい」

「そうするわ」

「はーい……」


 ミスズさんはいつも通りの涼しい顔で頷き、トウコさんは渋々、頷いた。


「リース、そういうことだからあんたは待機ね。指示を出すから転移させて」

「わかりました」


 リースには事前に説明してあるからすんなりと頷いてくれた。


「外国の傀儡国家はどうなっています?」

「いつでも軍事行動を起こせます」

「よろしい」


 世界よ、幸福教の恐ろしさと私の力を思い知るがいい。


「作戦会議は以上です。皆は各自、決められた行動を取るように! 決行は1週間後です!」

「了解っす」

「あー、やっと帰れるな。タバコを好きに買える」

「マジでそれ」


 おっさん2人はタバコを吸いたいらしい。

 ちゃんとあげているのに……


「エルナ、私は当分、この世界を留守にします」


 私は喫煙者のおっさんを放っておき、エルナに声をかける。


「ん? 当分? もう来ないんじゃないの?」

「なんでですか……この世界は私の世界ですよ」

「…………そっかー」


 こいつ、私に帰ってきてほしくないと思っているな……


「不満でもあるんですか?」

「ううん。ないよ」


 嘘つけ!


「まあいいです。とにかく、留守にしますからお前が管理するんですよ?」

「え!? なんで!?」


 エルナが驚く。


「いや、あんた、神じゃん。私がいなくなったら神はあんた1人だけなのよ? ちゃんと管理しなさい」

「ボク、ハーフリングの神なんだけど……そっちで忙しい」


 エルナが目を逸らす。


「あいつら、全然、森から出てこないじゃん! 管理もクソもあるか! 一体、あいつら、何してんのよ!?」


 平和な世界になったというのに、まったく南部の森から出てこない。

 国を作るんじゃなかったの?


「あそこの森って落ち着くんだよね。以前いた森よりずっと快適! もうあそこでいいかな。エルフもいいよって言ってくれたし」


 村から離れる時に泣いていたのは何だったんだろう?

 あの感動はどこに行ったの?


「あっそ」


 もういいわ。

 好きにすればいい。


「あ、ミルカが妊娠したよ!」


 ほう……

 ついにイルカが産まれるのか。


「良かったね。巫女も産休でしょ。じゃあ、あんたは中央に行って、ランベルトを見張ってなさい」

「えー! 東雲姉妹がいるじゃん! あいつら、ボクのおやつを取るから嫌!」


 ガキ3人だな。


「東雲姉妹は私の護衛ですから連れていきます」

「じゃあ、中央でいいや。暇だし。適当にしてればいいんでしょ?」


 こいつ、やっぱり暇なんじゃん。


「争いはダメーって言ってなさい。それだけでいいから」

「了解! 任せといてよ、お姉ちゃん!」

「あ、ついでにヴィルヘルミナにアドバイスしてあげて」

「まだヤッてないのかよ…………何してんだか」


 コラ!

 ロリのくせに下品な言葉を言うんじゃありません!


「私はいよいよランベルトの男色説が真実味を帯びてきたと思っているわ」

「人族は怖いなー……」


 私も怖いよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る