幕間

当時の俺達のパーティーは俺、ルア、リナ、ルイト、ミア、そしてサニーの六人パーティーだった。


サニーとの出会いはアーム闘技場の出来事だった。

当時、俺達パーティーは黄金の鐘と言われる古代人類の宝を闘技場で勝利し王の下に返すのが目的だった。

俺達パーティーはこのアーム闘技場を完全になめていた。もちろんアーム闘技場については一切調べなかった。そこが腑に落ちた……

まさか、アーム闘技場に俺と剣を一緒に交えることが出来る人類がルイト以外にいるとは思ってもいなかったからだ。

闘技場にパーティーで出るとしたら、出られる人数は最高で二人。

このアーム闘技場では魔法が禁止なためロングソードを扱うのが得意なミアに出てもらう事にした。

そして、二人目はと言うと……そう俺だ。

正直のところ、人類最高峰剣使いのミアだけでアーム闘技場のチャンピオンに余裕でなれるだろうと油断していた。そこが、穴だ。

まさか、アーム闘技場にミアを破る程の者がいるとは思っていなかった。

ミアは剣使いでいったら人類最強レベルに値する。そんなミアを破った男の名は、サニー・マルセリン。俺とルイトを抜いたら人類最強の大剣士だ。


「俺の名はサニー・マルセリン。さっきのミアと言う女はなかなかの腕だがまだ鍛錬が足りない。それに比べてあんたはなかなか腕が立ちそうじゃないか」

そういってサニーは俺の方を見ながら笑っている。

さて、どんな攻撃手段なのだろうか……

俺は固有スキル『先読み』でサニーの攻撃の流れを完璧に理解しながらも警戒はしておく。

「始め!」

審判の開始合図とほぼ同じタイミングでサニーは俺に大剣を向けものすごい勢いで斬り刻んでいく中、俺は固有スキル『先読み』によりサニーの全ての攻撃を軽々とかわす。

「我の攻撃を全てよけるとは……」

サニーはどうやら俺に攻撃を全部よけられたことに困惑している様子だ。

そろそろ攻めるか。

俺は鞘から聖剣オーロラを抜き取り、一瞬でサニーとの間合いを詰める。

「スラッシュ」

初期剣術を使うがすでに威力は上級レベルを軽く超えているだろう。

「キン!」

綺麗な音色のような金属音が耳に響いた。

どうやらサニーは俺の剣術をぎりぎりだが受け止めていた。

俺は瞬時にサニーに受け止められていた剣を押込みながら剣術の「ソール」を使いさらに押込む。

「パキーン」

サニーの大剣が大穴を開け砕けた。

俺はサニーの腹の溝に一発蹴りを入れこの戦いに勝利した。

アーム闘技場の優勝物である黄金の鐘を獲得し俺達パーティーはこの国から出ようとしたその時だった。

「アルト誰かが来ています。」

「ああ、俺も気配で感じた。念のため魔法を使う準備はしておいてくれ」

ルアの言った通り何者かがこちらに向かってきているようだが敵意はなさそうだ。俺は特に警戒する素振りすら見せずその場に立っていた。

「兄さん? 殺さないの?」

小さくて静かな声だが、明らかな存在感があり超人じゃなければ今すぐにでも泣き出したくなることだろう……

彼の名は、ルイト・ラガルト。俺の弟だ。

ルイトの強さは図り切れない。

この俺と対等に戦えるまでの実力を持っている。おそらくだが俺を抜いたら世界最強の人類だろう。

「いや、殺意は感じないから大丈夫だ……」

「わかった兄さん」

ルイトは納得したかのような素振りを見せているがその奥にはなにか物足りなさを感じている。

「サニー!?」

俺は思いがけない人物に思わず声を漏らしてしまった。

「アルト殿!」

サニーは意を決したのか俺に暑い眼差しを向け「未熟な我をアルト殿の弟子にしてもらいたい!!!」と予想していなかった言葉を発する。

ミアを破った時点で人類の最強層には入っているんだが……まあ今は考えないようにしよう。

「………………」

長い沈黙の中先に口を開いたのは、ミアだ。

「確かに私はあなたに敗北した。けどこのパーティーの穴はもう空いてないは! 大人しく帰りなさい!」

ミアの言動は少しずれているが多分サニーにはこのパーティーに入って欲しくないのだろう。

「我は己の剣術でアルト殿に勝ちたい。その為にはアルト殿自身から学ぶ必要がある。どうか我をこのパーティーに入れてくれ」

ミアの方を見てみると、サニーの熱い心に負けたのか黙り込んでしまっている。

俺はその様子に心の中で苦笑した。

「アルトどうします? 彼をこちらのパーティーに配属させれば戦力が格段にあがりますが」

ルアは俺以外には聞こえないよう魔法で意思疎通を施した。

「サニーの面倒なら俺が見るからパーティーに入れて損はないはずだ」

「わかりました。アルト」

そこで、ルアとの意思疎通は途切れた。

「お名前はサニーでしたっけ?」

「ああそうだとも」

「サニー、あなたはこれからこのパーティーの一員です。よろしく」

ルアは笑顔でサニーに手を差し伸べサニーとルアはお互いに堅い握手を交わし「ああこれからよろしく」と笑顔で言った。

「ちょっと待って!!」

大きな声で叫んだのはミアだ。

「いくらなんでも軽すぎるよ!!」

ミアの発言にルアは冷たい目で睨みながら「あなたはサニーより弱い。本来ならばミアとサニーを交換したいくらいです」とパーティーを崩壊せざるを得ない言葉を使ってリナを見下した。

さすがの俺も一発言ってやろうと思ったがそれよりも早く口を開いたのは、リナだ。

リナは、このパーティーのお姉さん的存在だ。みんな、リナを頼りそして尊敬している。あの、ルアであっても稀にリナを頼ることがある。それくらいリナはこのパーティーに欠かせない存在だ。もちろん俺もリナを無理のない範囲で頼り尊敬している。

リナに興味すら持たないのはこのパーティーではルイトくらいだろう。

「ルア、今の発言はパーティーの仲間として絶対に言ってはいけない言葉よ」

「リナ……」

「なに?」

「私はあなたの様な心は持つことが出来ない。そんな自分に心底腹が立っている。」

「私はどうやらあなたを殺さないと気が済まないようだ」

「アースランス!」

ルアが土の上級魔法を放った瞬間地面から無数のランスがリナを狙う。

「マジックシールド!」

リナはすかさず上級魔法のマジックシールドを使いルアのアースランスを抑えた。そして「マジックルーム!」リナの領域魔法によりルアの魔法が封じられた。「ルア観念しなさい」リナはそういい魔法発動の印を組む。

と、その時「もうやめて!!!!!!」

あまりの怒声にここにいる全員がミアに目を向けた。

「もう、無駄な争いはしないで! 私達は一つのパーティーでしょ! 仲間同士なんかで争うよりもっと大切な事があるはずよ!」

ミアは目に涙を流しながらリナやルアを含むパーティー全員に訴えかけた。

「で、でもミア……ルアはあなたにひどいことを」

リナは困惑しながら言う。

「もう大丈夫! ルアの事は私が許す!」

「で、でも……」

リナはまだ困惑している。ルアの事が心の底から許せないのだろう。

「リナ私は大丈夫! サニー、さっきの悪態はごめんなさい」

ミアは本当に申し訳なさそうな顔をしていた。

「気にするな」

サニーは一言で返し本当に気にしていないかの様な素振りを見せた。

そこからサニーとミアは互いに握手を交わしたことで新たにサニーがこのパーティーに加わることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最強パーティーが解散したので自由気ままに生きる!!! マシコング @mashikoyuto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ