越冬

 ニレの木の女は、ボレアスの寝息に淫靡いんびで初源的なたかぶりを見せ、

陽光の音も聞こうる森閑しんかんに、

年老いた革外套かわがいとうの擦りを響かせ、その肌を耽美たんびに見せる。


パチリ

角は折られて、骨肉は喰われた輓馬ばんば幌馬車ほろばしゃを引かせて、

車輪には氷と泥土でいどよろい、節々にツタの装飾をつけて、

この鬱蒼うっそう茂盛もせいな木々の小部屋を

陋醜ろうしゅう、穴の空いた革靴、帷帳いちょうの蛇に戸愚呂とぐろを巻いた、不興の主人は走る。


そこに一枚の枯葉が落ちてきて、

主人の肩にまとわりつく。

そしてこう言うのだ。

汨羅べきらはここかい!鬼も荷を引くのだな!」


主人は、このわら愚蒙ぐもうを剥がして、走る北風に投げ出した。

彼の耳には、枯葉の声など入ってすらいない。

垂れ流しの獣欲と、紳士と信頼の天秤にかけて(私の観念では、こんな者を紳士と呼ぶ。)得た、冷たくもぬるい金貨が、彼を性の川にいざなうのだから。


さて、かわずの欠伸あくびが根にひびき、

楡の女は若々しい新緑エメラルドの王冠を被る。

次に彼女がその裸体らたいを見せる時、主人を運ぶ幌馬車は、

車輪をつけているのだろうか?

輓馬が引いているのだろうか?

そして、主人を成しているのだろうか。


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