閑話: 壁掛け猫とその妄言
「やあやあ家主。ようこそ我が家へおいでなすった!もう何年振りか!」
この家の額縁には、
普段、額縁の中で
私の前ではこうハキハキ話す。
私はそれにどうと言う気もなく、"まあそんなものなのだろう"と受け入れの体制をとるのであった。
存外彼は立派なもので、ニャンだと人間様を
「おっと。またしても家主はそんな古臭い小刀を
どうだ。我は
家猫は真緑の草原に足を突き出して飛んでいる。
「ああ。とても良い提案だ。これでも私は、乱雑ではあるが、一つの種としての愛を君に向けているからね。
だがまず君はそんな紙切れに写ってないで、私の前に出て来ておくれ。
君の身体は丁寧さに欠けていて、そして奥行きもない。
唯一あるのは、無邪気さだけなのかい。」
「何をいうかな、家主。我にはまだ残っているではないか。我を白紙に描いたあの日の娘の、"幼き純然たる愛情"が。物には心も宿るのだぞ。」
首もなく、太い
小さく塗りつぶされた黒の目がある。
それは変わらず
「情なんて言うのは残存性の低いものさ。なんと言ったって、人の心は旅人。
彼らは北へ南へ走り去るのだからね。」
「
「そこは安心して欲しい。何せ、君の言うお嬢さんはもう病には罹らない性分だからね。」
ああそうさ、彼女はもう病気にも老化にも負けやしない!
「ふむ。ところで家主、お前の懐はやけに熱いのだな。」
「というと?」
「お前の懐からは、"乱雑な愛情"と"女児の純情たる仇視"を知れる。
はてさて、それはお前の、我を一つの種として捉えた愛か。
それは
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