第7話 今年は幼馴染と二人でお花見をした

 「確か、こっちです」


 真昼はスマホの地図と道を交互に見てそう呟く。

 俺の知っているところだったら良かったんだが、特に用事がなかったら公園なんて行かないので公園の名前を言われても知らないところだった。

 真昼に着いて行くこと十分、公園に着いたのだが……。


 「人が多いな」

 「咲き始めなのに……」


 花見という名の宴会で大人たちが集まっていた。花の近くはほとんど占拠されている。空いているのは何もない草原くさはらのところしかない。


 「……すみません……朝早くから私が場所をとっとけばよかったのに」

 「ここでも結構桜見えるし。来年、また来ようぜ」

 「はい!」


 元気を取り戻したらしく、真昼は「じゃあ、レジャーシート敷きましょう!」と意気込んでいた。

 真昼はバッグからお弁当箱を出すとレジャーシートの上にお弁当箱を置いた。そして、二段ある弁当箱の上の部分を下の部分の隣に置いた。


 「唐揚げ。美味そうだな」

 「まず、そこですか」

 「でも、今日は茶色が多いんだな」

 「茶色い物は美味しいですから。今日は栄養とかを気にせず美味しい物を食べてほしかったんです」


 真昼は微笑んでそう言う。そういえば、去年は花見なんて予定なくて、桜を見て突然母さんが「花見したい」と言い出したのでコンビニの弁当を適当に買ってレジャーシートの上で三人寂しく他の人が家族が作ったであろう弁当を見ながら食べたことを思い出した。

 俺はそれを思い出して一人で思い出し笑いをしていた。


 「なんで、笑っているんですか?」

 「いや、去年花見した時はさ、母さんが突然「花見したい」って言い出したから何も用意してなくてさ。レジャーシート敷いて三人寂しくコンビニ弁当を食べたの思い出してさ」

 「ふふ。おばさんらしい」


 それにしても――。


 「綺麗だな」

 「綺麗ですね」


 声が重なった。俺たちは顔を見合わせて笑ってしまう。

 桃色に花を色づけた桜の花びらが風に揺られて少しずつ散っていく。その光景はあまりにも儚くてとても綺麗だった。


 「流石、幼馴染って感じですね」

 「だな」

 「来年も……来年もこの景色を二人で一緒に見ましょうね」

 「ああ」


 しばらく談笑した後、談笑ばかりをしてせっかく真昼が作ってくれた弁当をまだ食べていないという話になり、俺たちは真昼の作った弁当を食べることにした。

 唐揚げの横にあるレモンを搾って唐揚げにつける。

 レモンの酸っぱい味とジューシーな唐揚げの味が合わさってとても美味しい。唐揚げの下味もちゃんとされていて前に食べた唐揚げと同じ味で美味しかった。

 焼きそば、だし巻き卵、ソーセージ、そして、おにぎり。それを全て食べ終わる頃には隣でやっている宴会が盛り上がっていた。


 「じゃあ、帰るか」

 「はい」


 俺たちは片付けを始めた。弁当箱をしまい、レジャーシートを畳んだ。



 「楽しかったですね」

 「ああ」


 家に帰るといつもの日常に戻った気がしたが、こっちも悪くないと真昼の笑顔を見て俺は思った。

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一人暮らしを始めて一年、幼馴染が一緒に暮らしたいと言い出した。 森前りお @Sirozakura

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