第6話 幼馴染がバスタオルを巻いて風呂場から出てきた
家に帰ってごろごろしているともう六時半になっていた。風呂に入るかと思い、真昼に声をかける。
「風呂に入るから」
「わかりました」
真昼は見ていたテレビから視線を外し、一度俺の方を見て返事をすると、視線をテレビに戻した。
風呂の湯船に浸かり、ゆっくりしていると、ふと決まりを決めた時の真昼の反応を思い出した。
「あれ……絶対なにか企んでるよなあ」
風呂に入り終わったので真昼に声をかけた。
「真昼、風呂、入り終わったぞ」
「はい」
真昼はソファから立ち上がって風呂場に向かった。
俺を髪を乾かすために洗面所の棚から持ってきたドライヤーをソファの横にあるコンセントに差す。
十分程で髪は乾かし終わったので、真昼が風呂から出たらドライヤーを片付けようと机の上にドライヤーを置く。
二十分程経ってぺたぺたと濡れた足の音が聞こえる。俺は振り返って真昼に声をかけようとする。
「ドライヤー、片付けなくて……いい……か」
振り返るとそこにはバスタオルを体に巻いた真昼の姿があった。
「は?」
思わずそう声を出す。
「渚くんのえっち~」
「っ。真昼がそんな格好で出てくるのが悪いんだろ」
俺は真昼から視線を逸らす。
「下着、今日は違うのを着たい気分だったので置いとこうと思っていたのですが、洗面所に置くのを忘れまして。企んでじゃないので、安心してください」
真昼は恥ずかしがっていないらしかった。いつもは見えない腕のところとか、太ももとかが見えてエロい。
ってなんで、まだ中学生の真昼にそんな感情抱いちゃってんの、俺。真昼は只の幼馴染、真昼は只の幼馴染、真昼……は。
真昼は俺のおでこに左手をつける。
「熱でもあるんですか?」
俺の顔は真っ赤らしい。
「ちが……」
「違うならなんなんですか?」
絶対わかっている顔で真昼は俺に聞く。
「っ」
俺は自分の部屋に逃げ込む。
「夕ご飯には戻ってきてくださいね」
そんな声が廊下から聞こえてくる。俺は心の中で「分かった」と返事をした。
「羞恥心というものがないのかよ」
「渚くん以外には見せませんよ」
ドアの前に座っているらしく、ドアの下の隙間から着替えたのかパジャマが見えている。俺が理性を落ち着けていたこの数分間で着替えたらしい。
「じゃあ、なんで俺だけに見せるんだよ」
「なんででしょう」
「……」
考えても一つしか思い浮かばない。でも、それを言う勇気は今の俺にはまだない。そうしたら、俺の答えは一つしかなかった。
「分からない」
「今はその答えで十分です」
かさかさと扉と布が擦れる音がした。真昼は立ってどこかに行くらしかった。
「私は夕ご飯を作るので。七時半には来てくださいね」
「……うん」
真昼と話しているうちに赤くなっていた頬はいつもの色に戻っていた。
俺は何事もなかったようにリビングに戻る。
真昼はエプロンを脱いでいる途中でその姿は中学生に見えなかった。
(成長したな)
俺は椅子に座り、真昼が椅子に座るのを待つ。
真昼が座ると俺は手を合わせる。それを見て真昼も手を合わせた。
「いただきます」
ほぼ同時そう呟いた。
まずは肉じゃがに手を付けた。肉じゃがに美味しくないとかはないのはわかるが、こんなに美味しい肉じゃががあるのかと思わせる程美味しい。
「美味しい」
「肉じゃがは色々研究して一番美味しいのを食べてもらいたかったんです。渚くんに私が初めて料理を食べてもらった時に美味しいって言われたから嬉しくて。だから、もっと美味しいって思ってもらいたかったんです」
俺はいつのことか覚えていないが、真昼にとって俺の言葉が料理を励む一言になったのであればよかった。
「明日、お花見行きませんか?いいところ見つけたんです。お弁当も私が作るので」
まあ、暇だし最近は花見をするやつなんて居ないだろ。とその時の俺は甘く見ていた。
「レジャーシートがあったと思うから部屋からそれ探しておくわ」
「よく思い出せますね」
「こっちに来た時、丁度桜が咲いていたから父さんと母さんと俺で花見をしたんだよ。それも、もう一年前か」
「へえ。そんなこともあったんですね」
こっちに来て緊張していたから、花見をしたことで緊張がほぐれた。だから、あのことはよく覚えている。
「で、そのいいところってどこだ?」
「行ってのお楽しみですっ!」
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