解説:忌引き届の手引き(ネタバレ)
この度は拙作「忌引き届」をご覧頂きましてありがとうございます。作中、いくつか仕掛けを施してありますが、気付かれないことも多々あるかと思い、本解説を
「忌引き届ってなに?」「何を言ってるのか分かんねーよ!」って思った方から、「俺みたいな上級者には丸見えだぜ!」という方まで、暇つぶしにでもして頂ければ幸いです。
★用語と設定★
<忌引き届>主に会社内部の届け出です。身内がなくなった社員が会社に知らせるために提出します。会社は忌引き届をもとにして、忌引き休暇を与えたり弔慰金を支給したりします。もちろん、そういう制度が有る会社の話ですが。
<グループウェア>会社内の情報共有、資料保存、資料配布、スケジュール管理、プロジェクト管理、勤怠管理、社内の届け出などの機能があるソフトウェアです。ソフトウェア会社のサーバーか、自社内のサーバーにインストールして、ブラウザや専用のソフトウェアでログインして使用します。
★この小説の造り★
本作は作中の*を境に大きく二つのパートに分かれています。タイトルから*の前までと、*の後の部分です。
タイトルから*の前まで、つまりタイトルがすでに忌引き届の用紙のタイトルでもあり、そして*の前までの文章が上司の言うショートショートなのでした。
★上司の発言から読み取れること★
この発言ですね。
「なんだこの忌引き届は!! 父親が死ぬの、これで何回目だよ!! 概要欄に細かい字でショートショート書くのもやめて!! 虫眼鏡で読んじゃっただろ!! あと、うちはグループウェアないから!! 全部紙だから!! ……まったく、なんでお前はそうやって嘘ばっかり」
「父親が死ぬの、これで何回目だよ」からは、佐藤がこれまでにも何回か父親が死んだという内容で、忌引き届を提出していたことが分かります。これは異世界の話ではありませんので、人間が何度も死ねるはずもなく、最後の「嘘ばっかり」という発言になるわけです。
続いて「概要欄に細かい字でショートショート書くのもやめて!! 虫眼鏡で読んじゃっただろ!! あと、うちはグループウェアないから!! 全部紙だから」からは、佐藤が実際に勤めている会社ではグループウェアを導入しておらず、*の前にあったようなパソコンでの届け出はできない。
よって、紙で提出しなければならないことと、佐藤の遊び心で忌引き届の書類の概要を書く欄に*前の文章を、それも細かい字で書き込んでいたことがうかがえます。
★オチ★
佐藤の名前の政治は「まさはる」と読みますが、最後の「政治に嘘はつきものですから」のところはそのまま「せいじ」と読みます、古今東西、政治というものには、常にではありませんが、嘘があるという歴史的事実ですね。ただし、嘘を吐き通せないような人間に国など任せられるものか、というタヌキ親父万歳な考え方もありますので、嘘が悪いか否かも時と場合による、というところなのかも知れません。
忌引き届 津多 時ロウ @tsuda_jiro
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