配信3 ――初配信(裏)――

 時は遡り、要が奏に変化した時のコメント欄。


【人生初生配信・初ドッキリ!】リアルTSドッキリだぜ!【研究所】


 8人が視聴中:特科研天災ラボ チャンネル登録者数 0人


:初配信に惹かれて来ますた

:いやー、ドッキリから始める、生配信もなかなかなくね?

:それ以前に、リアルTSドッキリのタイトルの意味

:そりゃお前……わからんけど

:ってか、TSなんて現実じゃ起こらんだろ。ファンタジーじゃあるまいし

:どうせ、やらせ的な奴じゃね?

:とりあえず、これ見て、登録するから決めるかねー

:同じく


 と、配信前のコメント欄はこんな感じだった。


 最初は、『なんかよくわからん初配信の動画投稿者がいる』という印象と、謎すぎるタイトルによって数人をキャッチしただけだった。


 視聴者数が減ったり増えたり戻ったりしているうちに、配信がスタート。


「はーい、画面の向こうの皆様、初めまして! 当チャンネルは、私作の発明品を用いて、とある人に実験をしてもらう! という企画をメインでやっていこうとしております」


:いきなり始まったなー

:地味に声が可愛くて草

:ってか、普通に女なのかw


「さて、今回はタイトルにある通り、そのとある人に私の発明品の実験だ――こほん。モルモッ――こほん。テスターになってもらおうと思います!」


:今、実験台とか、モルモットって聞こえたんだが?w

:マッドサイエンティストなん?

:実験台役の人、何されるんだ

:まあ、声のトーン的に、学生っぽいし、発明品って言っても大したもんじゃないと思うけどな


『――、――、来たよー』

「おっと、例の人が来たみたい。じゃ、私たちは早速隠れます! 画面の向こうの人たちは、歴史的瞬間をちゃーんと見ててね!」


 そう言い残して、陽菜は近くにいた京也と共に隠れた。


:今さっきの声……男なのか女のかわからなかったなー

:中性的だったな

:お、誰か来たぞ


 陽菜がいなくなった後、画面に映し出されていた白い部屋の中に、一人の人物が入ってきた。


:ん、んー……?

:あれは……女……? いや、男……?

:ギリギリ男に見える、って感じだな

:つまり……リアル男の娘か!

:おっし、早速拡散しようぜ!

:ww


 画面に登場した要は、見た感じ女に見えなくもない。

 一応、男と判別できなくはないので、視聴者たちもなんとか男だと判別できた。


 そして、その中にいた男の娘好き(?)の存在により、動画が拡散。

 これにより、視聴者数が増えることとなった。


 現在は、八人から数百人規模になっている。


 増えすぎである。


「うーん、いないのかな? ……なんだろう、これ」


:おー、本当に男の娘だ!

:すげぇ、ここまで見事な男の娘、初めて見たわー

:普通に女に見えるのに、その実、生えてるのか……

:馬鹿野郎! それがいいんじゃねえか!

:おい、変態がいるぞ


「……うん? ……何々?『この手紙を見てから十秒以内にボタンを押してください?』どういう意味――」


 ビービー!


:なんだなんだ!?

:なんか警報鳴ってね?

:何が起こったし


『杠葉様が手紙を読んだことを確認しました。これより、カウントダウンに入ります。尚、カウントダウンが終わる前に押さなければ、杠葉要様の全身から動物のような体毛が生えた挙句、二時間目が開けられなくなるほどの痛みを伴うスプレーを噴射します』

「なにそれ!?」

『カウントダウン開始。10、9、8――』


:ちょっ、カウントダウンが始まってるぞ!?

:一体何が始まるんです?

:ってか、押さなかった場合に噴射される奴、とんでもねぇんだけどw

:まあ、そんなあり得ない存在があるわけないし、押さないんじゃね?


「あぁもう! 考えている暇なんてないよね!」


:押すんかい!w

:うっそだろ、すげえ徹底したやらせだなー

:にしても、本当に焦ってるような表情だったよなー、なんか

:演技……にしては本気だった気がする


 と、タイトルからして、やらせなのでは? と疑う視聴者が多数。


 しかし、突然のカウントダウンに焦る様子を見せた要を見て、『あれ? なんか本気で焦ってね?』と視聴者たちは思った。


 そして、要がボタンを押した次の瞬間、


 ドカァァァァァァァァン―――!


 突如として大爆発が発生。

 画面は爆発によって発生した煙のみが映し出されており、要がどうなったかわからない。


:お、おい、爆発したんだけど!?

:無名なのに、やることが違いすぎる。もしかして、めっちゃ金持ってる?

:ってか、煙でなんも見えねえんだけど、どうなったんだ?

:お、なんか出てきた


 突然の爆発に、視聴者たちが混乱していると、ようやく煙の中に何かが浮かび上がってきた。

 よく見るとそれは、人型の何かだった。

 映っているとすれば、間違いなく、先ほどの男の娘だろう、と視聴者たちは思ったのだが、どうにも様子がおかしい。

 どころか、体格が違って見えた。


「けほっ、けほっ……もぉ~……一体何が……陽菜ぁ……京也ぁ……いきなり爆発したんだけど……!」


:お、どうやら無事みたいだ

:ん? なぁ、なんかおかしくないか?

:おかしい?

:明らかに、声が高い気がするんだが……

:それどころか、さっきの男の娘、こんなシルエットだったか?


「うぅ、やっと見えるようになった……って、ふぇ? ……な、なにこれ?」


:やっぱ、声が高い!

:明らかに、クッソ可愛い女の子声がするぞ!

:ま、まさか、タイトルは本当だったというのか!?

:お、落ちるけ1まだあおうと決まったえあけはない111

:いや、お前が落ち着け。誤字しまくって文章がわからん


 明らかに先ほどよりも様子のおかしい要に、視聴者たちはさらに混乱。


 先ほどまで聞こえて言えた要の声と言えば、たしかにやや女寄りの声ではあったものの、それでもまだ男と判別がつくくらいではあった。


 しかし、しかしだ。

 それでも、今聞こえてきた声は、明らかに男の物ではなく、十代の女性の声だった。


「僕、こんなに声高かったっけ!?」


:おい、本人も驚いてんぞ

:マジ? やらせじゃないん……?

:ど、どういうことだってばよ


「な、ない……。……や、柔らかい。……な、長い。……声、高い。……い、一体、何がどうなってるのぉ……?」


 要のそんな声が聞こえてきた頃、ようやく煙が晴れてきた。


:煙が晴れてきたぞ!

:ってか、声的になんか調べてなかったか?

:……い、いやいやいやいや!? ちょ、こ、これは……!

:び、美少女、だとっ……?

:美少女キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

:おいおい、銀髪だぞ!? クッソ可愛いんやけど!

:さっきの男はどこへ行ったんだ?

:おい、今すぐ拡散だ! 拡散するんだ!

:すでにやってるぜ☆


 などなど、画面に映し出された美少女の姿に、コメント欄はお祭り状態。


 そして、


「「だーいせーいこーう!」」


 という、どこか緊張感のない声が響いてきた。


:お? お? ネタ晴らしか?

:どっちだ。これはどっちの意味でのドッキリなんだ?


「あっはははははははは! マジか! すっげぇ、マジで成功してんぞ、陽菜!」

「ふっふーん♪ あたしにかかれば、このくらい造作もないわ! ……まぁ、動物で実験

とかしなかったから、第三の目が出てきたり、腕が増えたり、筋肉が肥大化しないかちょ

っぴり心配だったけど、そこは天才のあたし! 見事に成功だわ!」

「今不穏なセリフが聞こえたんだけど!? ねぇ、二人ともこれは一体どういうこと!?」


:やべぇ、今一瞬、ものすげぇマッドサイエンティスト的な発言が聞こえたんだが?

:第三の目て

:ってか、え? 何? タイトルマジなん……?

:っぽい、よなぁ? 女の子の声、さっきと違うけど、明らかにさっきの男の娘っぽいリアクションしてるし


「おっと、すっかり忘れてた。……こほん。えー、今日初めて見る画面の向こうの皆様。ゲーム機で見ていようが、PCで見ていようが、テレビの付属機能で見ていようが、今日この日より、変化系ユーチューバー奏ちゃんが誕生しました!」


:変化形ってなんだ

:聞いたこともないが……やべぇ! クッソ面白いんだけど

:というか、今画面に映ってる娘も、メッチャ可愛いんだけど

:金髪で白衣で低身長……くっ、萌えの波動がッ……!


「……視聴者……?」


 陽菜のセリフに、要こと奏は、ギギギ……とさび付いたロボットのごとく、ゆっくりと陽菜が見ている方に頭を向けた。

 そこには、いつの間にか設置されていたカメラと、配信中の動画を映し出したPCがおかれていた。

 そして、PCの画面には、今もなお数多くの視聴者のコメントが滝のように流れているところだった。


:お、こっち見た

:やっほー、見てるぞー

:うぉ、真正面から見ると、マジで可愛んだが

:こんな美少女が現実にいると言うのか……!


「これからあたしのスペシャルな発明品を使って、皆さんを楽しませたり、単純にここにいる奏ちゃんがゲームしたり、雑談したりさせていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いしまーっす! あ、チャンネル登録と高評価を貰えると尚嬉しいです! まあ、低評価をくらうような事態でもあるんで、その辺りはお好きなように!」


:マジか! この金髪白衣が発明品を?

:ゲーム実況もするのか

:雑談が面白そう

:初回からすでにぶっ飛んでる気がするんですがそれは

:低評価の下りよw

:何が何だかわかってない奏ちゃんかわゆす


「あ、あの~……」

「よっし! それじゃあ、記念すべき最初の生配信はこれにて終了! じゃあ、奏、最後にこのセリフ読んで! あと、とびっきりの笑顔でね!」

「え、えぇ?」

「ほらほら早く!」

「うぅ、わかったよ……。えっと……変化系TS美少女実験員の奏です♥ これから、よろしくお願いします♪」


:( ˘ω˘)スヤァ……

:お、おい、しっかしr( ˘ω˘)スヤァ……

:おまえm( ˘ω˘)スヤァ……

:死屍累々で草

:……ハッ! あまりの可愛さに、遠い親戚が河原の向こうで手招きしてた……!

:可愛すぎて心臓止まったわ

:心臓止まったニキは成仏して


 と、奏が魅力的すぎる眩しい笑顔を浮かべて挨拶をしたところで、初配信は終了となった。


:乙

:配信乙!

:いやー、うん、素晴らしかったわー

:奏ちゃんのインパクトが半端なかった。この際、男とか女とかどうでもいいや……

:可愛いは正義! やっぱ、この世の心理よ

:これは登録確定ですわー

:もっと広めるか!


 配信終了後のコメント欄はかなりの盛り上がりを見せていた。

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天災幼馴染によってTSした男子高校生の動画配信者的日常 九十九一 @youmutokuzira

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