第2話 砂防堰堤の片隅で




 

 頭上に浮かぶは


 いつかの雨雲の切間にある


 輝く事を忘れた明けの三日月


 終始聞こえてくるのは


 頭上に降り注ぐ


 雨の交響曲と


 流れ落ちる河川の


 淙淙たる響きが


 夜の深みを増すごとに


 静けさを圧倒する


 

 

 僕の心は憂鬱だ


 せっかくの休日


 自分の不運さを呪いたい


 そんな心を暖かく抱いてくれるのは


 雨の中でも燃え続ける広葉樹の


 焚き火


 彼らはただ燃え続け


 その祭囃子は


 僕を明朗とさせる


 


 そんな祭囃子は


 闇夜に溶け込む


 秋空に舞い上がる火の粉も


 響き渡るパチパチという合唱も


 ついにはうたた寝を始める


 やがて彼らは疲れ果て


 今宵の宴の終わりを告げた




 僕は一夜を過ごすテントへと


 身を預ける


 寝袋にくるまり目を瞑る


 少し湿気った布地が僕を包む


 そこらでは待ちわびていたかのように


 雨が元気良く降り続く


 遠くで聞こえる砂防堰堤の囁きも


 鼻をくすぐる雨の匂いも


 少し冷たい寝袋も


 今日この時でしか味わえない感覚


 


 僕を呼ぶ明日の朝日におやすみを告げ


 焚き火の余響を思い浮かべ


 今日この日に感謝する






 『小柳沢砂防公園オートキャンプ場』

 


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野営ノひととき soupan @soupan

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