かくれんぼ
@kuro_0301
①黒いしるし
朝六時、目を覚ますと付けっぱなしのテレビから昨夜起きた事件のニュースが視界に映る。
最近、若い女性を狙った連続殺人事件が多発しているらしい。
犯人はまだ捕まっておらず、毎回同じ手口で女性を殺し、金銭などを奪い逃走している。
朝から嫌な物を見た。テレビのリモコンを手に取り、チャンネルを変える。
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最初は、ちょっとした出来心だった。
二ヶ月前、友人が作った大量の借金の連帯保証人になってしまった俺は毎日、借金取りに追われる日々を送っていた。
いつの間にか、友人の連絡先は途切れ孤独になってしまった俺を救ったのは、女を殺す事だ。
殺す事によって得られる快感。また金も手に入る。最高の天職だ。
最初は金欲しさでやっていたが、いつの日か殺す事によって満たされる何かを求めている自分がいた。
そして、今日もまた俺は満たされた。
普通では、無いことは分かっているが、自分で止めることが出来ない。ただ、それだけだった。
ひと仕事終えた後、夜の繁華街をひたすら歩いていた。進んでいるうちに、段々人混みが減っていく中、興味深い物を見つけた。
その興味深い物は、街灯の離れた薄暗い路地裏で顔を膝に伏せて蹲っていた。
俺は、そいつに意味のない殺意を湧かせた。
俺は、そいつに近寄り手を伸ばす。異変に気付いたのか、そいつは顔を上げて、俺の顔をじっとり睨んだ。
肩まであるレンガ色の髪。顔を覆い尽くすそばかす。木の枝のように痩せ細った身体。
『コイツは、殺せない。』そう思った。
「おじさん、何かよう?」
そいつは、霞んで低くなった声でそう言った。
「何してるの君?こんな夜遅くに。」
俺は、慣れない微笑みで優しく声をかけた。
「そんな事、聞きに来たんなら帰って下さい。」
そいつは、視線を下に戻してそう言った。
「君が心配なんだよ。そんなに痩せ細って。」
そう言うと、そいつはまた俺の顔を見て眉間を寄せて力強く言った。
「おじさんに関係ないですよね。そんな事言っても何も出来ないくせに…。」
その言葉の意味を考えて、俺は少し考えて答えた。
「そうだ、お腹空いてるだろ。おじさんが奢ってやるから一緒に着いてこい。」
そいつは、数分考えた後に立ち上がって言った。
「な、何を食べさせてくれるの?」
俺は、微笑んで言った。
「君が食べたい物を言ってごらん。」
少し、歩いて着いた先は、ファーストフードのチェーン店だ。
そいつは、手いっぱいにハンバーガーを持ち、勢いよくかぶり付いた。
下から、ボロボロ何かが落ちているが、気にせずそいつは、話し出した。
「おじさん、何。ボランティアか何か?」
少し心を開いたのかそいつの方から段々、自分の事を話すようになった。
彼女の名は、衣舞(いぶ)。15歳の家出少女だ。
家を出た理由は、教えてくれなかった。
「それでおじさんは、ボランティアなの?」
よっぽど、俺の事が気になるのか、俺の事を探ろうとしてくる。
「俺の事がそんなに気になるか?」
「いや、教えてくれないんだったら別にいいんだけど。」
仕方なく、俺は彼女に聴こえるほどの、小さな声で言った。
「俺は殺人鬼だ。」
彼女は、驚きも動揺もせず少し間を空けて言った。
「ふーん。」
「驚かないのか?」
「別に、普通じゃない。殺人鬼なんてこの世に腐るほどいるし。」
普通と言う言葉に俺は、惹かれた。
話しているうちに俺は段々彼女の事を、少し不思議に思えた。
こんなに自分の事を打ち明けた事が今まであっただろうか。
彼女は、孤独だ。
俺も孤独だ。
俺たちは、少しだけ似ていた。
「おじさん、私を殺したいとは思わないの?」
「お前は特別だ。殺したいとは、思えない。」
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おじさんにとって私は、特別らしい。
「おじさん、私を弟子にして。」
咄嗟に出たその一言が私の運命を大きく変える事となる。
私たちは、黒いしるしで繋がっている。
かくれんぼ @kuro_0301
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