おわりに——写真に正解無し、素人ならお作法にとらわれず楽しんだもん勝ちなのです

 まあ何だかんだ書いてきましたが、やっぱりこれですよ。

 別に写真1本で食っていこうってんじゃないんなら、楽しまなくちゃ損ですから。もちろん、他人に迷惑をかけてまで自分の撮りたい写真を追求するってのはナシですからね(盗撮をはじめとした公共の場での迷惑行為など)。


 だがしかし、いくら好きなことでもただ漫然とやっていると次第に飽きては来ませんかね? たとえその分野には無限の可能性が秘められていたのだとしても。どうやったらそこまでたどり着けるのか知らなけりゃ、その人にとっては無限の可能性もただの虚無です。


 では趣味の可能性を広げるのはどうすればいいのか?

 他人がどうやってその趣味を楽しんでいるのか参考にすればいいのです。


 たぶんその人は、自分とは全く違う楽しみ方をしているはずです。着眼点も、理論も、行動原理も、自分には無いものを持っているはずです。ただ、それは自分が他者より劣っているというわけではありません。

 その相手にとっちゃ、こちらのことが『何だかおもしれーやつ』と映るかもしれません。


 所詮この世は青い芝なのです。

 自分と同じ趣味を、どこかの誰かが楽しんでいるのを見てしまったら、それは凄く輝いて見えてしまうのです。それに引き換え自分はいったい何をやっているのだろうか……と沈んでしまうこともあるでしょう。


 しかしそれは『隣の芝生は青い』というやつです。自分からは輝いて見えるあの人も、実際は色々と苦悩があったりするのです。だってこういう所に発表するときは、いちいちネガティブなことを書き連ねたりはしませんからね(ネガティブなことをグチグチ書くのが大好き? まあそれはそれで)。


 そうやって、色んな人の『楽しみ方』を見ることで、そのいい部分を1%でも取り入れる。そうすることで自分の人生が少しでも楽しくなったらそれはそれで儲けもん。

 普段からそんなことを考えつつ本を読んでいる自分が、そんなことを考えながら本作を書きました。


 ◆ ◆ ◆


 人間の眼っていうのはスゴい器官です。

 だってこんな小さなまん丸レンズなのに、解像度無限で、なのに処理落ち皆無で、F値最強で、超高速オートフォーカスで、完全HDR対応なのですから。こんな超性能カメラレンズは未だに開発されたことがありません。


 人間の認識機能の半分以上を受け持っているだけはあります。

 なので、人間は写真を見たときに様々なことを思い出すのです。


 この写真を撮ったのは誰で、場所はどこで、年代はいつで、この時どんな気持ちだったか、周りが騒がしかった、変な臭いがした、風が強かった、このときは家族が病気にかかってなかった、このときは友人たちとつるんで遊ぶことが多かった……などなど。


 そういう感情を一気に想起させてくれるのが1枚の写真です。

 もちろん、表現力を上げようとあれこれ工夫していた思い出っていうのも、写真の中にはしっかりと記録されているはずです。他人にはなにも見えませんがね。


 写真とは、見る人がいて初めて完成するのです。


 ◆ ◆ ◆


 テクニックやら理論やらをあれこれ書いてきといてアレですが、たまにはなにも考えず、無心で撮りたいものを撮るっていうのもいいかもしれません。


   【初心に帰れ】


 これはどんな分野のどんな達人でも、必ず胸に留めておくべき言葉ですから。


 思い思いにただ好きなものを撮っている——外出先でそんなちびっ子をふと目にして、とある大人はそんなことを思ったのでした。

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