だいじょうぶ?

「とりあえずもう一度リビングに戻るぞ。」


―――ガチャッ。


はぁ...さっきはびっくりしたなぁ...


「じゃあ今から玄関をみんなで出て...」


「ちょ、ちょっとまってください!」


ん?なんか声震えてるなぁ...大丈夫か...?


「あの...団体で行動したら危なくないですか?玄関から外を見る限りなんかずっと白い風景が続いていましたし。そ、それに...」


それに...なんだ?


「女子にも行かせるっておかしくないですか?こういうのは男子が...」


筋肉質の大きな男子がその女子の胸ぐらを掴みながら言った。


「んだとビビってんのか?この野郎!!!そんなの女子だけ...セコいだろ!!!」


おいおい、やべぇやつを敵に回したぞこの女子...


「っ......。」


「おい、こんな状況で仲間割れは良くないぞ。」


メガネが筋肉質の男子をその女子から引き剥がす。


すげぇなぁ。


「確かにこの女子の言う通りだ。男子で...えーっと、そうだな、5人ぐらいで行こう。」


「私も、行きたいです。」


おやおや...女子か...すごい勇気だ。


「...行きたいなら好きにすればいいぞ。よし、他に行きたいやつはいるか?」


―――...。


「じゃあ俺と.........お前も来い。」


メガネのやつ俺のこと...ゔ...


「わかった...」


「お前が行くなら俺も...」


「私も行っていいですか?」


メガネの人気度高いな。


「よし、それじゃあ早速...」


「行くぞ!」


―――オーーー!


玄関の外にはさっきと同じように真っ白な景色が続いている。


なにか見つかるのだろうか。


しばらく歩いていくと、アニメ調の草が所々に生えているのを見るようになった。


自分の腰ぐらいはある、まぁまぁ大きめの草だ。


それ以外は何もない。


白い空間に彩度の高い黄緑色の物体だけがあるのはなんだか不思議な感じがした。


「ん?あれはなんだ?」


目を凝らして見ると、確かに黄緑色ではない何かがある。


ちょっと待て、近づいてきていないか?


青ざめた顔で女子が言う。


「なん、か、嫌な感じがする。なんだろう、何かに全て見られているような...よくわからない。」


メガネが続けて言う。


「汽車じゃないか?あれ。」


「た、確かに...そうかも...」


ってあれ...?気がついたら僕は、草に隠れていた。


いや違う、さっき一瞬、理由はわからないけど隠れないといけない、本能のようなものがはたらいたんだ。


周りを見るとメガネたちも草に隠れている。


―――...。


あれ、4人しかいない。


慌てて草から顔を出す。


すると向こうにはアニメ調の大きな汽車が走っていた。


そしてあれは...さっき、最初に私も行きたいと言った女子じゃないか...


どうして1人であそこに立っている。絶対に危ないって思わなかったのだろうか。


...違う、震えてる。


多分怖すぎて動けないのだろう。助けに行かないと。


顔を出して、走り出そうとした瞬間、横にいたメガネが僕を草の後ろに戻した。


「絶対に行くな。」


「ど、どうして...だってあの子が危ないんだぞ...!」


メガネが僕の口を抑えながら小声で言う。


「静かにしろ。もうあいつは助からない。」


―――...!


「...良いから黙って隠れとけ。無駄な犠牲者を増やしたくない。」


僕は静かに頷いた。

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