第9話

 無人島生活三十日目。小高い山の上で、周辺を眺めていた。色々とあったが命だけは繋いでいる。付与の可能性はすさまじく、いまだ全貌が見えない。


 ただ俺自身はやりたいことをできないまま、レイカの支配から逃れられずにいた。月日ばかりが過ぎていく。


 ただ、可能性はある。この島はやはり変だ。記録を残そうとすると自然と制限がかかる。特にこの島の疑念点を残すことはできないに等しかった。


 実はメモを目にしていて自分の筆跡ではと思うことがあった。Ukirは俺自身の筆跡を示すアナグラムではなかったか。感情的だったのは自分に気づかせようとしたのか。


 疑念はあるが晴れない。メモは三十で意図的に区切られていることが多く、この島は三十日目に、なにかが起こることを暗示しているようにも思えた。


 その可能性を踏まえた上で精査し、メモを元の位置に入れ直していた。メモの木箱はどうも魔術を無効化している節もある。


 眼下では、初期から離れた平地に屋敷が築かれていた。レイカの望み通り、きれいで、良い匂いのする屋敷だ。


 空は初日とは打って変わり、暗い灰色の雲が立ち込め、中央に渦を巻いている。


「願わくば自由を」






 気づけば浜辺に打ち上げられ、無人島でサバイバル生活を強いられていた。浜辺の近くには小屋があり、装飾された木箱の中にはメモがあった。


『まずこのメモを読む者に断っておこう。君は島の脱出や他の目的に囚われているかもしれない。だがそれでも君は自由だ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

晦(つごもり)のドミニオン Rlay @Rlay

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ