第8話

 遠目に拠点を確認でき、始めて安堵の吐息がもれた。見覚えのある景色を頼りに、なんとか帰りついていた。


 半壊した扉を開けると、そこにはレイカが立っていた。


「おかえり、大丈夫」

 そう言って駆け寄ってくる。


「なんとか。体中痛いけどな」


「血だらけじゃない。手当するわ」


「深手は負ってないはずだけど」


 珍しくレイカが優しく、傷を負った部分を洗いながしてくれた。


 レイカとイオンは、あの後各自の拠点へ戻ることにしたそうだ。イオンは拠点を移ることにしたそうで、荷物をまとめているとのことだ。


 食料集めも、揃ってから時間と場所を変更しようとのことだ。また自衛の武器も必要となり、イオンが制作意欲を燃やしているらしい。


「これでひとまず良し。血は止まっているみたいだから、あとはイオンに作れるなら治療薬を作ってもらいましょう」


「そうだな。今後はそういうのも必須になりそうだ」


 ふとレイカと視線が合うと微笑んだ。


「見直したわ。あなたやる時はやるのね」


「そうだろ、そうだろ。やる時はやるんだぜ」


「あなたにご褒美をあげるわ」


 レイカはそう言って何かを手に取り、頭に付けようとしていた。髪の毛に触れる手が優しい。そんな気配に気付くのが遅れた。


 レイカが手に持っていたのは洗脳が付与された髪留めだった。


「えっ、なんで」


「私の言うことを聞きなさい」


「は、はい」


「言ってなかったけど、私ちょっとSなところがあって、でもフォーマルな場はもちろん、プライベートな部分でも絶対見せられなかったの」


「それとこれとどういう関係が」


「誰でも良いって訳じゃないのよ。魅力のない男性を侍らせる気はないし、触らせたくもない」


 レイカの瞳は溶けたようになっていた。瞳の色は変わらないのに、紫色に怪しい雰囲気を放っている。


「たまにで良いから。私の我儘に付き合って欲しいの」


「どんなことをご所望なんですか」


 レイカは満面の笑みを浮かべていた。


「私の脚をなめなさい」


「ぐっ、かしこまりました」


 首の根元から勝手にこうべを垂れていく。目の前にはレイカの爪先がある。足場が悪かったせいだろう。所々赤くなっている。


 赤い所を避けるようにそっと舌を触れさせた。


「ふふっ、ふふっ」


 レイカはこみ上げる笑いを抑えていた。


「うれしいわ。なんという素敵な世界。もっと頑張るわ私」


 嬉しそうでなによりです。


「そうそうこれも言ってなかったんだけど、私ボーイズラブ?にも興味があるの」


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