第3話

そう。100倍バフ。

俺のバフは微妙と言っていたけど、頑張れば100倍ぐらいチョロ。

じゃあなんでいつもは微妙なバフなのか。


サイクロプスを見てみる。


100倍バフが掛かった次の瞬間。右足が地面を蹴る。100倍の力で。

足の筋肉やひざが耐えられないよね。ということでぐしゃっと右足がつぶれてバランスを崩すサイクロプス。

足やひざが耐えられないからといっても威力は残ったまま。明後日の方に飛んでいくサイクロプス。


ズ……ウゥゥン。ガガガァ。


派手に転ぶサイクロプス。腕が吹っ飛び、首がもげるサイクロプス。あ、高額素材の目玉も飛び出ちゃったサイクロプス。もったいな。


「……」


ヨシュカをはじめ、みんなが俺の横に無言で並ぶ。あ、死んだわけじゃないよ。いや、サイクロプスは死んだけど、みんなは生きていて。


「助かったね」

「……」

「どうする?帰る?」

「……」

「いつもショボいバフでごめんね」

「……。いや」


ようやくヨシュカが返事をしてくれた。


俺はポーターらしくサイクロプスだった肉塊を集めてヨシュアのところに戻る。

もう一回聞いてみる。


「帰る?」

「……。ああ」

「帰り着くまで何がでるか分からないし、タシュナにバフを掛けとく?」

「ひっ。い、いや、いつものバフで。いつもので」

「あはは。そんなに強いのはもう無理だし。強すぎたらちょっとした音も轟音になるし、真っ昼間もまぶしすぎて目を開けてられないのは知ってるし」

「……。だからいつも微妙だったのか」


タシュナは顔色が悪い。サイクロプスとの遭遇だったもんな。

ヨシュカもまた微妙って言うし。


「まあね」


強いバフは掛けられる。でもバフだけ。体が耐えられないのよね。サイクロプスの惨状を見てもらうとわかるように、過ぎた力は身を亡ぼすんだよね。


そしてぞろぞろと街に戻る。タシュナはまだ顔色が悪い。やだなーサイクロプスや他の魔物はもういないよ。ちょこちょこ自分にバフを掛けては外して周りを確認しているから。


「あ!ということは、もっとスベスベになるの?ねえ!」


ミリーは黙ろうか。

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バフがちょっと得意なポーターなので戦闘は苦手です @a_tomi

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