釜山の守護者
結騎 了
#365日ショートショート 261
港湾都市、
あぐらをかき、右の掌を正面に突き出している。丸めた頭からはなにやら湯気が立ち昇っているようだった。ぐっと寄った眉間の皺は、彼の極度の緊張を思わせる。
「お勤め、ご苦労さん」
足音も立てずに。男の背後に老人が立っていた。薄汚れた衣装に身を纏っていながら、その気配は只者ではない。真っ直ぐに伸びた白い髭が印象的だ。
「尊師!わざわざこのような場所へいらっしゃるとは……」
「なぁに。昔を思い出していただけじゃよ」
尊師と呼ばれた老人は、はるかに広がる水平線を眺めた。
「釜山の守護者。わしがやったのはもう30年も前のこと。すでに陰陽のパワーはお前の方が上じゃ」
「いえ。そのようなことは。尊師のおかげで今の私があるのです」
男は跪き、大きく頭を下げた。その表情に一点の曇りはなく、心から老人を尊敬していた。
穏やかな海は全くしけることなく、海鳥の鳴き声と潮の香りだけを運んでいた。
「それで……」。老人がおもむろに語りかける。「今回も大きかったようじゃが。無事に済んだのかね」
一仕事終えたばかりの男は、笑みと共に答えた。
「もちろんです。大型の台風は無事に、日本国の東へ逸らしました」
釜山の守護者 結騎 了 @slinky_dog_s11
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