第63話 ヨミ襲来
私は「時の加護者」アカネ。
獄鳥パルコの呪いを解く方法を求めて今、南極タイサント中心部に行きました。カギは光鳥ハシルがどこかに残した3つの卵にあると思うんだ。光鳥ハシルの巣をふさぐ岩を見てシエラが怖いことをいいだした。聞きたくないよう..
—タイサント 中心部—
—かつて宗教というものの信仰心を利用し、自分の欲望のためにこの世界をおもちゃにしようとしていた男がいた。その男は人々を争わせ、その愚かさを楽しんでいた。
そして「秩序の加護者」トバリは目撃してしまった。自分たち3人の加護者が現れること笑顔で祈る母と子、それを笑顔で殺害する兵士の姿を..
悲しみと怒り、激情の中でトバリは、『審判の瞳』を開いてしまった。
人も建物も全てが砂に帰った—
「そしてトバリ様が姿を消したあと、アカネ様はその原因を作った欲望まみれの男と対峙したのです。その男は私たちに近い力を持っていました。それは魔法という力です」
「え? だって魔法はないって.. 」
「はい。この世界には魔法は存在しません。しかしそういう力を持つ者が稀に現れます。その力は絶大です。この世界はまだ秩序のトバリ様の力の残り香が残っています。トバリ様は魔法を認めなかった。故に魔法の力は私たちを越えることはなかったのです」
「じゃ、もしかして魔法を認めないのって.. 」
「はい。魔法をこの世界の秩序に組み込まないためです。それでもその男の力は強く、私たちは闘いの中、巨大な岩に押しつぶされそうになったのです。しかしアカネ様は尋常じゃなかった。トバリ様を無くした悲しみは怒りに変わり、その巨岩を全て空の彼方へ蹴り飛ばしたのです」
「って.. まさか.. 」
「はい、おそらくこの南極タイサントの天災とは.. 」
「私たちが原因? 」
コクリと頷くシエラ。
「で、でも、そうとは限らないじゃない? 違うかもよ? 」
「いいえ.. あのひときわ大きな巨岩はアカネ様と私で蹴とばしたものです。あの特徴ある岩の形、はっきり覚えてます。おそらくどこかに私たちが蹴とばした跡も.. 」
私は耳をふさぎたくなった。
「どうしたのです? 2人で長々と? 」
突然、後ろからカレンが話しかけて来た。
「い、いや、今、シエラと岩をどうにかできないか相談してたの。そうですわよね、シエラ? 」
「は、はい。そうですわ」
「えっ? アカネ様たちなら何とかなるんですか? あの山のような大きな岩を? 」
「えっと.. どうかしらね。もしかしたら.. 」
まったくの出まかせだった。しかし、昔にアカネとシエラで大地の果てまで蹴り飛ばしたのならば、もしかしたら今回も何とかなるのかもしれない。
私たちは一度、宿舎に帰ることにした。
—レンパス村 宿舎の丘—
宿舎に帰ると船長ラオスを始め船員の姿が見えない。
それどころか異様な気配がする。
「ちっ!! 」
シエラがいち早く気づき、カレンへ向けられたボーガンの矢を蹴り飛ばした。
「相変わらず攻撃の察知能力はアカネ様以上ね」
涼しげな水色のロングドレスを着た黒髪の女が空間の裂け目を手で押し広げる。
注目すべきはそのエメラルドに輝く右手に浮き出る時計だ。
「ヨミ!! 」
シエラの神経が尖った。
「お久しぶりです、アカネ様。いや、初めましてと言った方が良いでしょうか」
ヨミは私が思っていたよりも知的で高貴な感じがした。昔話の悪い魔女のイメージとは違った。年齢も25歳くらいだろうか。しかし油断はできない。
「あなたがヨミ? 」
「はい.. あぁ、やはりアカネ様ですね。その警戒したときに瞬きをする癖は昔のままです」
「でも私は貴方が言うアカネとは違うわ。貴方が言うアカネは私のおばあちゃんだもの」
「いえ、そうではありません。魂が引き継いでいるのです」
「そ、ところで何の用なのよ? 」
「はい。今日ここに来た理由は、貴方にご挨拶と、出来れば.. 」
「出来れば? 」
「出来れば、死んでいただこうと思いまして! 」
その瞬間、閃光のような蹴りが飛んでくる。
だが、私への攻撃はそれ以上の速さと力で防ぐシエラの「無限の守り」がある。
「おい! ヨミ! アカネ様への攻撃が無駄なのはわかっているだろ」
「そうね。シエラ、貴方がいる限りはね」
ヨミがシエラの脚元に手をかざすと空間の穴が開いた。
「し、しまっ.. 」
シエラが空間の穴に吸い込まれると瞬時に穴は閉じられた。
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