第7話 グラム様と宮殿
私は一ノ瀬茜。
初大駅で「白い手」から杏美ちゃんを救ったのをきっかけに、私は不思議な世界に迷い込んだ。そこには白い手の正体であるガゼ、ロウゼ、ミゼという3人がいた。奴らは私を拉致し馬車の中でしつこく尋問する。私はいったい何処へ連れて行かれちゃうのだろうか..
—知らない世界のどこか—
馬車が停まると乱暴に腕を掴まれた。
「ほら、降りやがれ!」
荷車からまるで落とされる形で尻もちをつく。
「イタタタ」
ミゼって奴だ。女の子に何て扱いなの!もっと思いっきり叩いて腕をへし折ってしまえばよかった。
それにしてもきっとここは東京ではない。広々とした牧草地。なんとなく昔、家族で行った那須高原の牧場みたいだ。
荷車を曳いている動物をみて私は言葉を飲んだ。
(なに! この動物! こんな動物見たことない! )
ベースは馬だが牡牛のように大きなツノ。驚きなのは前足だ!なんと3本もある!そんな動物が2頭もいる!
びっくりな容姿だけど、お眼目が子牛のようにまつ毛が長くてとってもキュート。かなり人なつっこくて、私の腕にフカフカと鼻をこすりつけてきた。
「いやん」
「『いやん』じゃねー! 早く行け! 」
ミゼに頭をたたかれて大きな岩を曲がる。そこには砂漠の世界遺産にあるような岩壁を削って建造した宮殿があった。牧草地に砂漠の宮殿というのが何ともミスマッチ。
宮殿の中は炎のついたランプが四方に配置されている。それは確かに古めかしい西洋式ランプだった。不思議なのはその明るさだ。ランプの炎がLEDのように明るいのだ。
「その者か」
響き渡る初老の男性の声。
「はい。左様でございます。グラム様」
グラム様の服装からどこかの宗教の偉い人のようだ。首から下げているのは間違いなく長数珠..
「まだ、小娘ではないか」
「はい、その通りでございます」
「して、お前たちは大切な修正を、この娘に邪魔されたというのか」
「申し訳ございません。まずはグラム様の前にと思い急いで舞い戻りました」
「 ..まぁ、良い。ガゼよ、下がれ」
「はっ」
グラム様の眼差しはどこか侮蔑的だ。
「娘よ。名は何というか? 」
「茜」
「茜よ。お前は何者だ? 」
「 ..女子高生」
こんな上から目線で偉そうに質問するおじさんには当然、反抗的な態度になってしまうというもの。『です』『ます』など付けるもんか。
「女子高生? そうか。あちらでの勉学をする場所に通う女子だな。いつから見えていたのだ? 」
「な、何が? 」
察しはついていた。でも今は言ってはいけない気がする。
「私たちの影がだ」
「何のことかわからない」
「では質問を変えよう、お前は持っているのであろう」
「それ前にも聞かれたけど、何を言っているのかわからない」
グラムが目くばせをするとガゼが私のカバンを持ってきた。そして無造作にカバンを逆さまにする。
「ちょっと、何するのよ!」
学校の教科書、ノートがバサバサと石の床に落ちていく。そして最後まで辛抱してカバンにしがみ付いていた懐中時計がガツンと鈍い音をたてて落ちた。
それを見た瞬間、グラムの顔が引きつる。
「これは.. こ、殺せ! すぐにその娘を殺すのだ! 」
「え? ちょ.. 」
胸ぐらをつかまれるとガゼの持つ剣が首を貫こうとした。
「や、いやだー! 」
その瞬間、宮殿の中に凄まじい竜巻が砂塵を吹き上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます