第34話 ソフィアたちはいつまでも一緒に……
玉座の間にて。
魔女リリスことお母様が国王陛下の前で跪く体勢をとっている。
この状況を周りの兵士たちが見て、とても驚いているようだ。
「伝説の魔女リリスよ、顔を上げたまえ」
「はい」
「今回、こうして直接対談ができることをとても嬉しく思う」
「私も国王と対談できたらと思っていた次第であります」
お母様は国王陛下に対して、尊敬するような口調で話している。
王都に戻るまでの会話も、極々普通のお母様のような感じで親しみやすかった。
どうしてお母様が噂のような恐れられてしまう存在だったのかいまだによくわからない。
「まずはリリス殿に深く謝罪をしなければならないと思っていた。私の選んだ部下たちによって、そなたの評判を著しく下げてしまい、王都に居座れなくなるような状況にさせてしまった……。本当にすまなかった」
「お気になさらず。私も魔力で愚かな行為をするような民を制裁していたのですから、噂が広まってしまっても仕方のないことです」
「だが、当時の治安は良きものでもあった。そなたの制裁があったからこそだと思う」
「そう言っていただけるのはありがたきお言葉」
「ソフィア殿にも迷惑をかけてしまった。リリス殿の生活が王都で普通にできるような環境にあれば、独り身になることもなかったはず」
今度は私に陛下が頭を下げて謝ってきた。
どこまで腰の低い陛下だろう……。
「私は今までの経緯があったからこそ、こうして今の自分があるのだと思ってます。アーヴァイン様との婚約もきっと、今までがあって成り立ったものでしょう。大変だった時期もありますけど、それは今の私を成り立たせるための土台だったと思えば、むしろ感謝です」
実のところ、アーヴァイン様とは王都へ向かう馬車の中で婚約が決まった。
お母様が『この男と結婚しなさい』という強引な推しがあったからこそではあるが……。
「ソフィア殿も器が広すぎて、私も見習わねばならぬな。なお、リリス殿の頼みもあり、ゼノ伯爵たちに関しては、しばらくの間は鉱山送りということになった」
「へ? お母様が罪を軽くするよう促してくれたのですか?」
「そうよ。魔法であいつらの頭の中を探ってみたわ。本気でソフィアのことを感謝していたし、これならば更生の余地もあるでしょうと思ったからよ」
「そんな魔法まで……」
「あくまで悪い人間の証拠を掴むための魔法よ。ソフィアには必要ないわね」
お母様も相手の心を読む魔法を使えたのか……。
さすが伝説の魔女と言われていただけのことはあるなぁと思う。
でも、私は相手の心を読めるような魔法は覚えたとしても使いたいとは思わないかな。
アーヴァイン様がなにを考えているのかなど敢えて知りたくはない。
知らないからこそ、彼のことをもっと知りたいと考えることができるからだ。
「リリス殿には、今後王宮直属魔導士として活躍に期待している。ソフィア殿も、しばらくはアーヴァイン殿と新婚生活を満喫して、そのあとでリリス殿と同じように国を護ってほしい」
「はい、ありがとうございます」
「それではソフィア様。このあと、指輪を選びに向かいましょう」
「幸せすぎてとろけ落ちそうです」
陛下とお母様がゲラゲラと笑っていた。
今までお母様のことを悪く広めていた魔導士はもういない。
これからは平和な王都になっていくだろう。
私も、満面の笑みでアーヴァイン様と玉座の間を後にした。
これからもまったりとした生活が待っている。
用済みで殺されかけた魔女が幸せを掴んでのんびり暮らすまで〜全属性魔法を使いこなし、王様の不治の病を治したら重宝されました〜 よどら文鳥 @yodora-bunchooo
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