Ⅰ章 天鳥船 ――それを待った者たち――
1ー1話 此花姫香 --不思議な青年--
「……
教室の最後列の席で講義を聞く
教壇では、よれよれのスーツをまとった
姫香は昨年、2年生でその授業の単位を取得していた。友人には笑われるのだけれど、吉本准教授のゼミ生なので、卒論の参考になる話を聞けるかもしれないと考えて聴講していた。
「……彼女は九州の
相変わらずだわ。……姫香は身体の真中からせり上がるあくびをもう一度かみ殺し、【神宮皇后=オキナガタラシヒメ】とノートに落書きした。
〝神功皇后は戦いが終わるまで子供を産むわけにはいかないと、腹に石を当てて出産を遅らせた。妊娠期間は実に2年!〟とか〝応神天皇は、神功皇后と共にいた
実は、姫香には授業に出る別の目的があった。前方の席に座る
「……神宮皇后が誉田別尊をつれて畿内に入るのを、彼の異母兄弟にあたる
吉本准教授がぐるりと教室を見回す。視線がぶつかり、姫香は会釈した。
「なければ、今日はここまでにしましょう。来週は休講です。奈良での発掘が始まりますので。……すごいですよ。地底レーダーに巨大な石室の反応がありましてね。世紀の大発見になるかもしれません」
その口調は、それまでの授業と全く違った。まるで新しいオモチャを手に入れた子供のようだ。そうして彼は、終業のチャイムが鳴る5分前に授業を切り上げた。
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