笑い方
ネルシア
笑い方
「おい笑えよ!!」
そうキツめの声が響くクラス内。
数人のうるさいいわゆる陽キャの女子が気の弱そうな女の子を取り囲んで命令する。
でも笑いなんて面白いものがないと笑えないもので。
でもそんな無茶振りをされてきたのか、その子は笑い始める。
「ウゲッ……ヘッヘッ……。」
独特な笑い方。
でも、私はそんな笑い方が好きだ。
無理やり笑わされてるのは腸が煮えくり返る程にムカつくけど。
でも、私にはあの子を助ける勇気は無い。
いじめを見て見ぬふりをするのもいじめだと言う人もいるけど、誰もがヒーローでは無いしそこまで勇気を持てる人は少ない。
そういうことを出来るのは空気があまりにも読めないか、心臓が鋼で出来てるかのどちらかだろう。
「やっぱこいつの笑い方気持ちわりー!!
ギャハハハハハハ!!!!」
どっと一同が笑い合う。
私は机の下でテメーらの方が気持ちわりいよ、と、ぎゅぅと手を握りしめるしか出来なかった。
放課後、部活終わりに図書室から借りてた本があったのを思い出し、返却に向かう。
するとどこからともなく嗚咽が聞こえてくる。
その物陰をそっと覗くとあの子がうずくまって顔を抑えていた。
涙が止まらない様子で拭いても拭いても涙が溢れている。
いてもたってもいられなくなり思わず抱きしめてしまった。
「あえ!?!?好美さん……?」
「いい、今は……泣いていいよ。」
「うん……うん……!!」
今までの嗚咽から1人の人間の絶望とも取れる泣き声と、私を痛いほど抱きしめるその温もりが私の中の何かを決定的に変えた。
泣き止むと、迷惑かけてごめんねと一言その子が言うとそそくさと帰っていってしまった。
次の日、私との距離が近くなったその子と楽しくおしゃべりしてるとまたちょっかいを出してくる。
「今笑ったっしょ?マジ受けんだけどww」
すぅーと息を吸い、静かに立ち上がり、ちょっかい出てきた子の顔を片手で抑える。
その威圧に固まった子に怒りを込めて、けど声を荒げずに告げる。
「周りのことを気にして無理やり笑ってる声を作ってる人より、この子の自然な笑い声の方が全然気持ち悪くない。
分かったらどっかいけ。」
「ひゃい……。」
足取りがおぼつかない様子でフラフラと立ち去っていく。
「えっと……好美ちゃん……?」
「何?」
私の袖をきゅうと握って赤面しているその子の顔を見て私も急に恥ずかしくなってしまった。
それから2人で幸せな長い長い時間を過ごしたのはまた別の話。
Fin.
おまけ
笑い声が変わってたからからかった。
ってわけじゃない。
周りの絡んでる子がからかえという圧を私にかけるのだ。
そう、仕方ない。
仕方なくからかって、仕方なくみんなで笑って、仕方なく友達ごっこをしてる。
だって……1人が怖いんだもん……。
いじめられるのもヤだし……。
でも私のことを半ば無理やりだけど真っ直ぐと見つめて真っ直ぐ否定してきた好美さんの顔を見て何かに目覚めてしまった。
その日、好美さんに無理やり迫られる夢を見て確信した。
好美さんが好きだ。
その日から私は好美さんのストーカーになり、2人の幸せな生活を監視しつつ、その幸せを確実なものにするためにめっちゃ努力してめっちゃ権力持って職権乱用しまくりましたとさ。
笑い方 ネルシア @rurine
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