第18話 確信

 「お、おはようございます……」

 無理やり叩き起こされたカレンから5分程度遅れて––敵国から逃げてきた転生少女のカエデさんは起きて来た。

 ……多分、急いで起きたんだろう。アホ毛ができている。

 「おはようございます」

 各々が、そんな少女に挨拶をし––朝食が各テーブルに並べられた。


 「……こんな食べて大丈夫?」

 カエデさんは並べられた料理を見て、この国の小ささと貧困の中で出てくる料理に驚いていた。まあ、俺もだったよ。

 そんな姿を見て、王女のカレンは微笑みつつ––

 「この国は自然豊かですから。国民の皆様も同じような食事を摂ってますよ」

 そう言って、「安心して食べてくださいね」とカエデさんに料理を勧めていた。

 「……あ、ありがとうございます」

 カエデさんはその勧めを受け止め、手元にあった魚の煮つけを一口食べると––

 「美味しい…!!」

 手を休めずに、一気にご飯を食べていった。

 そんな姿に唖然としながらも、俺らもご飯を食べることにした。


 「っかぁ、美味しかった~」

 カエデさんと俺らは各々のペースで朝食をとり、今は食後のティータイム中なのだが……明日の事を考えなければならない。

 なので俺は––のほほんとしているカエデさんに声をかけた。

 「そんなに隣国は酷かったの?」

 「……酷いってものじゃない。あんなとこにいたくない」

 「詳しく話せる?」

 「うん。あの国は……私みたいな他所から来た者は“物”として扱うの。だから、目が覚めてからずっと……」

 「……それ以上は大丈夫だよ」

 なんとなくだけど……国の酷さが理解できた。

 

 「この国はそんなことないですから安心してくださいね」

 王女らしい立ち居振る舞いで––カレンはカエデを歓迎した。


 

 そんなこんなで、決戦は明日になるのだが……。

 「なあ、カレン。指示とかサインとかって何かしているのか?」

 応援団ではなく、監督としてこの世界の命運を握るんだ……聞かないといけないだろ?

 「いえ?別に何かしてるわけじゃないよ?」

 「え?」

 「え?」

 カレンの純粋無垢な顔に、それ以上は言えなかった。

 ……ってか、それで前は勝てそうになったな。凄いよ、勇者達。


 俺はそんな気持ちを抱きつつ、状況を整理することにした。

 ……確かに––巻き戻した世界は順調にフラグを折っている。

 自分の応援スキルはカンスト状態だし、監督ならより近くで強力な力になるだろう。

 そして、人質だったカエデさんは……ここにいるわけだ。

 つまりは––

 「これは勝てるんじゃないか?」

 一筋の希望が––俺とこの世界に差した。



 翌日。

 決戦の日が来た。

 俺とカレンはグランド内へと降り立ち、カレンは敵国との決戦の契約を執り行い––試合が開始された。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界応援団~人生捧げたら、クソジジイに抱かれた~ いぬ丸 @inumaru23

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ