第17話 夜這い?

 酒を飲み、皆が寝静まった時の事……俺の部屋へと誰かが入ってきた。

 一瞬、カレンかとも思えたのだが……何か違う。

 

 「この世界には何が起きてるんですか!?」

 昨日、敵国から逃げてきた“かつては人質だった転生少女”はベッドに寝ている俺の上に跨り聞いてきた。

 今は少し大きめな服を着て、髪は凄く綺麗なストレートな長髪となっている。

 ……巻き戻す前とか、昨日はあんなに痛んだ服とボサボサな髪だったのに。

 

 「ん~……なんて言えばいいんだ?」

 俺は一口に“こうだよ”とは言えない。ってか、この状況がヤバい。

 だって、あのクソジジイとの話をするとかめんどくさいでしょ?

 それに、俺にだってわかんないことがいっぱいあるんだから。

 「とりあえず、無事でいれてよかった……です」

 その言葉しか返すことができなかった。

 少女はそんな俺の表情と言葉を聞いて、更に追及してくる。

 「いやいや!何で私生きてるんですか!?めっちゃ怖かったんですけど!?」

 「確かに怖いよなぁ」

 「他人事ですか!?」

 ……あまり大きい声出さないで……頭痛い。

 「と、とりあえず、水を飲ませてくれ」

 そう言って、少女の股の方からベッドから抜け出し––この場を立ち去った。

 それでも、少女は俺の後ろを追いかけずっとこの状況を説明するように求めてくる。

 「わかったから!少し待って!!」

 飲んだ酒、きっと元の世界だとウオッカ並みだろ。マジで頭痛い。

 食堂へとフラフラになりながらたどりつく、勿論誰もいない。

 俺はコップを探し出し、水をがぶ飲みする。

 その間、少女は食堂の椅子へと座り––俺が話をするのを待っている様子だった。



 ……これ、一から話すべきなのかよ。

 頭が痛い中、再度水をコップに注ぎ、向かい側の椅子へと腰を掛けた。

 「何か飲む?」

 「大丈夫です」

 少しだけ冷たい態度の少女は、真っすぐに俺を見ている。

 「あー……じゃ、じゃあどこから話そうか……」

 「全て話してください」

 「あ、はい」

 少女の強く真っすぐな瞳に––俺はクソジジイの事や、今は巻き戻した世界の事等ありとあらゆることを話した。

 すると、少女は納得できたのかわからない表情だったが。

 「まあ、何となくですけどわかりました」

 そう言って、椅子から立ち上がった。

 「私、カエデと言います。今回はありがとうござい……ました?」

 自分で言いながら、どこにお礼しているのかわからない様子だった。

 まあ、そうだよな。

 「俺はタカシといいます。よろしく」

 そう言って、互いの軽い自己紹介は終了し、それぞれの部屋で再度就寝することにした。


 そこから、4時間を過ぎた頃……朝を迎えた。

 俺は遠くから匂ってくる朝食の匂い、外から聞こえる鳥の声で目が覚めた。まだ頭は痛い。そして––

 「あ、おはよ」

 いつの間にか隣にもぐりこんでいたカレンの言葉に––完璧に目が覚めた。

 「いつの間に?」

 「へへ、内緒」

 カレンの寝起き眼で出す笑顔は、本当に天使の笑顔だった。


 「おはようございます……」

 軽く身だしなみを整え、食堂へと向かうと……エルフのイリアさんとメイドのルーナさんがいたので挨拶をする。

 すると、朝食の準備をしているルーナさんは「おはようございます」と丁寧に応え、イリアさんは手を振って挨拶を返してくれた。

 カレンはというと、俺の体温が残っているベッドで二度寝を決め込み––少女の方は、まだ食堂へと来てはいなかった。

 「頭いてぇ……」

 「もしかして、お酒弱いんですか?」

 「あれ、かなり強い酒でしょ?」

 「いやいや、私もルーナさんも毎日飲んでますよ?」

 「はあ!?」

 ……そんな、明日に国の滅亡がかかる試合があるとは思えない会話をイリアさんとし––残りの2人が起きてくるのを待った。

 

 「……とりあえず、あの少女…カエデさん?が起きてから考えましょうか」


 そう言って、ルーナさんが持ってきてくれた––しじみの味噌汁を飲み、二日酔いを治めようと努めることにした。

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