第7話立ち上がれヒーロー
ブレイブ仮面はカマキリの怪物に敗北した。
そのまま変身が解除され勇夫の姿に戻り倒れていた。
しばらくして目を覚ます勇夫。
「うっ……う〜ん……はっ!」
勇夫は目を覚ますと直ぐに辺りを見回したが既に敵の姿は無かった。
「私は……負けたのか……」
勇夫は三浦の事が気に掛かり三浦を探しに行った。
三浦の足から流れ落ちていた血を辿り1番近くの外科に入ってみた。
しかし、この時間、個人でやっている小さな病院は当然しまっており誰も居なかった。
そこで勇夫は1番近くの大きな病院をスマホで調べる事に。
「ここだ……」
1番近くにある総合病院に向かう。
だがその途中、洋子から電話が掛かって来る。
「もしもし?どうした?」
「どうした?じゃないわよ!遅いから心配して電話してあげたんでしょ?まだジョギングから帰って来ないの?」
「ああ……ちょっとトラブルがあってね……今病院に……」
「病院!?怪我したの?」
「いや……俺じゃなくて知り合いがね……ちょっと行ってくるから」
「それならそうと連絡位してよ!」
「ごめんごめん……」
「じゃあ、あんまり遅くならない様にね」
そう言って洋子は電話を切った。
勇夫はまた急いで病院に向かう。
病院に到着した勇夫は三浦が来ているかか問い合わせてみる。
しかし、個人情報なので、赤の他人の勇夫には教えて貰えない。
勇夫は仕方なくこの病院の待合室で一休みする事にした。
「はぁ〜……」
一度椅子に座るが、ふと自販機を見つけ飲み物を買おうと立ち上がる。
ポケットから財布を取り出し小銭を探す。
数枚小銭を取り自販機に入れる。
「え〜っと……」
勇夫はアイスコーヒーを選んだ。
買ったコーヒーを飲んで一息ついていると、「湯村さん?」と勇夫に声を掛ける人物が。
勇夫が振り向くとそこには松葉杖を突いた三浦が立っていた。
「三浦君……怪我の具合は?」
「……全治3ヶ月だそうです……」
「そうか……」
「来週大会だってのに……何でこんな事に……俺は……何の為に練習して来たんだ……」
三浦はそう言いながらボロボロとなみだを流し始めた。
「三浦君……」
勇夫は三浦に掛ける言葉が見つからなかった。
勇夫はただただ、その場に立ち尽くす事しか出来ない。
これまでの努力を台無しにされ、未来を奪われた若者に言葉を掛けてやる事も出来ない。
そんな自分が憎かった。
一人の男が病院に駆け込んで来る。
「三浦!!」
「あっ……監督……」
「大丈夫か?一体何があった?」
三浦から来週の大会に出られなくなったと連絡を受けた監督が慌ててやって来た様だ。
余程慌てたのだろう、その監督と呼ばれる男は明らかに部屋着であろうTシャツに上着を1枚羽織っただけの格好だった。
「監督……すみません……全治3ヶ月だそうで……来週の大会は……」
「そうか……何故こんな事に?」
「見た事もない化け物に襲われたんです……チクショー……チクショー……」
三浦と監督の会話を聞いていて勇夫はいたたまれなくなって帰って行く。
家に帰り着くと早速洋子から小言を言われる勇夫。
しかし、勇夫は洋子の小言に耳を貸さず自分の部屋に入って行った。
私のせいだ……私のせいで若者の未来を奪ってしまった……。
勇夫はそんな罪悪感にさえなまれていた。
そんな勇夫の様子を見ている藤堂。
「さぁ、シナリオは順調に進んで居ますよ……後は貴方が立ち直れば次のフェイズに進める……」
勇夫はそのまま寝てしまった。
翌朝、スマホのアラームが鳴り起こされる勇夫。
「しまった……寝てしまったか……」
勇夫はベッドから起き上がると昨日ジョギングの帰りでジャージを着たままだとゆう事に気が付いた。
「はぁ……シャワーでも浴びるか……」
勇夫は風呂場に行く。
シャワーを浴びながら昨夜の事を考えていた。
あれから三浦はどうしたのか、そしてあのカマキリの怪物は何処へ行ったのか。
考えれば考えるだけ気になってしまう。
シャワーを出た所で香菜と遭遇。
「ゲッ!?……パパ何でシャワーなんか浴びてるのよ!!」
「いや、昨日風呂に入って無かったからな……」
「うっわ……最悪……ウチもシャワー浴びようと思ってたのに……」
「浴びれば良いじゃないか?」
「パパの後とかマジあり得ないから!!ってか早くパンツ履いてよ!!」
「ああ、すまんすまん……」
香菜は脱衣所から出て行く。
「はぁ……昔は素直で可愛かったのにな……」
そんな想いが溢れ出る。
シャワーを出てからダイニングに行くと洋子が朝食の準備をしていた。
「あら、おはよう。今日早いのね」
「ああ……昨日風呂に入らず寝てしまったからシャワーを浴びようと思ってな」
「あー……だからさっき香菜が怒ってお風呂場から出てきたのね」
「ああ……」
「トースト、もうすぐ焼けるからジャムでもバターでも塗って食べて」
「ああ」
湯村家ではいつもの朝食の風景だ。
しかし、そんな時もつい考えてしまう。
もし、昨日の三浦の様な事が家族に起きたらと。
妻の洋子は今はアレだが、長年連れ添った大切な妻だ。
娘の香菜は反抗期で生意気盛りだが、可愛い一人娘には違いない。
自分がこの家族を守れるのか。
そんな事をずっと考えてしまう。
「ほらあなた!早く食べちゃって」
「あ?ああ……」
朝食を食べ終えると勇夫はいつもの様に身支度を整え会社に向かう。
今日は月曜日だ。
会社に行くもの気が重い。
いつもの様に満員電車でぎゅうぎゅうにされ、女性が近くに居る時は痴漢に間違われない様に常に両腕で吊り革に捕まっている為腕が疲れる。
会社に着く頃には既に疲れている。
今日からまた憂鬱な1週間が始まるのかと、勇夫は思った。
会社に着き自分の椅子に座ると自然とため息が出た。
「あれ?湯村さんお疲れみたいですね?」
田中が声を掛けて来た。
「ああ……昨日は朝から家族サービスしたり夜も色々あったりで全く休まらなくてね……」
「ハハッ……お父さんは大変っすね」
「全くだ……」
「あっ!コレよかったらどうぞ」
そう言って田中はエナジードリンクを1本差し出してくれた。
「ああ、ありがとう……じゃあお言葉に甘えて頂くよ」
田中は自分にも色々と良くしてくれる。
後輩だが、気の良い奴で好感が持てる。
勇夫は田中から貰ったエナジードリンクを一気に飲み干した。
「よ〜し、今日も頑張るぞ!」
勇夫は仕事の準備を始める。
そこへ井上課長が慌てて入って来た。
「皆ー!大変だ!近くで怪物が暴れてる!急いで避難するんだ!!」
「えっ?」
井上課長の一言で他の社員達もザワつき始めた。
「怪物ってマジっすかね?」
「ああ……」
すると、巨大な触手が窓ガラスを割って入って来た。
「きゃーっ!?」
近くに居た女性社員は大パニック。
そして、周りの社員達も逃げ出す。
「ヤバい……逃げましょう!!」
田中が声を掛け、皆に逃げる様に促す。
勇夫は急いで隠れられる場所を探す。
だが、もうどの部署も出社してる時間、社内はどこでも人が居た。
隠れられる場所を探している内に社内での被害が大きくなる。
パニックに陥った社員達が我先に逃げようと押し寄せて来る。
「うわっ!?」
勇夫はもみくしゃにされなが、何とか抜け出す。
階段を見つけ勇夫は屋上に行く事を思い付く。
直ぐ様屋上へ向かう。
屋上まで階段で上がるのは流石にキツい……。
だが、そんな事は言ってられない。
何とか屋上に出るとそこには人は居なかった。
「よし、ここなら……」
勇夫は腕時計のスイッチを押す。
「変身!」
ブレイブ仮面に変身し、怪物との戦いに向かう。
怪物に向かってパンチを繰り出すブレイブ仮面。
しかし、この怪物はタコの様な軟体動物の様でパンチが効いていない。
「くっ……そんな……」
そして、触手で反撃を受けるブレイブ仮面。
その触手の一撃は強烈だった。
「がはっ!?な……なんて威力だ……」
「よぉ、ブレイブ仮面……無様な姿だなぁ……」
現れたのは怪物が現れる度に共に現れるあの謎の男。
「お……お前は……」
「そうそう、コイツもお前に会いたいってよ」
そう言って男は昨夜のカマキリの怪物も呼び出した。
2対1の不利な戦いを強いられるブレイブ仮面……。
今度はカマキリの怪物の鎌が襲い掛かる。
何とか攻撃をかわすが、続けてタコの怪物の触手が逃げた先に襲ってくる。
「うわっ!?」
この2体の強力な攻撃にブレイブ仮面は大ピンチ。
しかし、ブレイブ仮面を応援する人々の声が耳に聞こえて来た。
「がんばれ!ブレイブ仮面ー!!」
それはいつも叱られてる井上課長の声だった。
かつては井上課長もヒーローを応援する少年だったのだろう。
その目はまさにヒーローショーでヒーローを応援する子供の様に輝いて見えた。
井上課長の応援に感化され、周りの人々もブレイブ仮面を応援し始める。
いつもは馬鹿にしてくる北野までも。
勇夫は今自分がヒーローになっていると言う事を改めて確信した。
今、街の平和を守れるのは自分しか居ない。
そう自分を奮い立たせ立ち上がるブレイブ仮面……。
たちあがったブレイブ仮面の姿に人々は歓喜する。
その様子を見ている藤堂……。
「うん……いい頃合いだ……そろそろ行くか」
藤堂は新たなアイテムをブレイブ仮面に向かって投げた。
「ん?コレは?」
ブレイブ仮面は足元に転がって来たアイテムを拾う。
「そうか……あの人……よし!」
ブレイブ仮面はその新たなアイテム『ブーストガジェット』を腕時計に装着する。
そしてスイッチを入れるとブレイブ仮面は新たな姿『ブーストフォーム』にチェンジした。
「さぁ、新たなフェイズへ突入だ!」
藤堂は高らかに叫ぶ。
続く……。
おっさんがヒーローやって何が悪い 山ピー @TAKA4414
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