第5話動き出した敵

湯村勇夫は戦う。

ヒーローブレイブ仮面として、そしてサラリーマンとして。

月曜日の怪物騒ぎ以来大きな事件も起きず週末を迎えていた。

今日は職場の人達と飲み会に参加している勇夫。


飲み会の席では井上課長も上機嫌だ。

あちらこちらで話が盛り上がっている。

だが、飲み会の席にでもブレイブ仮面の話題が出た。

若い女子社員、西田絵里奈(にしだ えりな)と沢口彩夏(さわぐち あやか)が話していた。

「ねぇねぇ、最近話題のブレイブ仮面どう思う?」

「あ〜カッコいいよねぇ。どんな人なんだろ〜?」

「やっぱイケメンでしょ!ヒーローはイケメンしか勝たん!」

「言えてる〜」

そんな会話で盛り上がる女子社員……。

勇夫はビールをぐいっと飲みながら思った。

おっさんがヒーローやって何が悪い……と。

飲み会が終わりそれぞれ解散する。

二次会に行く者も数名いたが、勇夫は先に帰る。


家に帰ると洋子と香菜はリビングでテレビを見ながらくつろいでいた。

「ただいまー」

「おかえりー」

「ねぇ、お茶漬けでも食べたいんだけどご飯ある?」

「お釜の中に残ってるから適当にやって〜」

「あーはいはい。じゃあ、先にシャワー浴びてくるよ」

そう言って勇夫はシャワーを浴びる。

シャワーで汗を流しさっぱりすると、酔いも覚めていた。

「さてと……じゃあ、ご飯ご飯……」

勇夫が炊飯器の蓋を開けご飯を掬っていると、2人が見ていたテレビからブレイブ仮面の話題が聞こえて来た。

ふと気になり勇夫も目をやると。

それは今、話題となっているブレイブ仮面について町の人達にイメージ調査をすると言う内容のようだった。

芸人のコンビが町の人達にインタビューをする。

インタビューの結果はヒーローとしてブレイブ仮面を支持する良い意見ばかりだった。

やっぱりブレイブ仮面は必要とされてるんだなぁ……。

勇夫はそう思った。

その時香菜が……。

「ねぇ、ブレイブ仮面ってどんな人なのかな?」

「さぁねぇ……でもきっとイケメンよ!」

「ハハッ、それはどうかな……?」

「え?何パパ……」

「ヒーローがイケメンだなんて世間の理想像に過ぎない。だいたい子ども向けの特撮物に影響され過ぎだよ」

勇夫はそう言いながらご飯にお茶を掛ける。

「だってヒーローならカッコいい方がいいじゃん」

「なら、パパがブレイブ仮面だったらどうだ?」

「うわっ……それ最悪……」

酷い言われようだ……。

「もう!夢をごわさないでよ!大丈夫よ香菜。ブレイブ仮面はきっとイケメンだから!」

「だよねー!」

やれやれ……そう思いながらお茶漬けをかきこむ勇夫。

「ねぇ、明日久しぶりに皆で買い物行かない?」

「ん?何だ急に?」

「最近家族でお出かけもしてなかったしさ。たまにはいいじゃない!」

洋子はなぜか急に提案した。

「ん〜?まぁ、明日は友達と予定もないし……いいよ!」

「ねぇ、あなた、いいでしょう?」

明日は休みだからのんびりしたかったのに……。

「分かった。いいよ」

勇夫は了承した。


−翌日−

朝から湯村家では出掛ける準備が行われていた。

「ちょっとあなたー!早く起きてご飯食べちゃってよ!出掛けられないじゃない!」

勇夫はまだ寝ていた。

「ん〜……分かったよ……ハッ!その前にジョギング行かなくちゃ……」

そう思って勇夫は起きた。

「ごめんごめん。でもその前にちょっとジョギング行って来るよ」

「そんな時間ないわよ!さっさと食べて出掛ける準備して!」

「わ、分かったよ……」

結局ジョギングは行けずに急いで朝食を食べ出掛ける事に。

3人は車に乗り込み出発。

車で30分程走った所にあるショッピングモールに向かう。

香菜はずっとスマホをいじっている。

「香菜、携帯ばかり見てないで外の景色でも見たらどうだ?」

「はぁ?ウザっ……」

ショッピングモールに到着すると……。

「さて、どこ見る?」

「私服みたい!」

「そうね、私も見たいからまず洋服屋さんに行こうか」

そう言って洋子と香菜は洋服屋を何軒も回る。

そして勇夫は……。

「あ〜……疲れた……まったく……あの2人はどんだけ服見るんだ……」

勇夫が休憩スペースの椅子でダレていると隣に勇夫と同じ位の中年の男性が声を掛けて来た。

「お疲れのようですね」

「え?」

「あっ、失礼しました。随分お疲れの様に見えたから……」

「ああ、いや……お恥ずかし事に女房と娘に振り回されてもうクタクタで……」

「ハハッ、父親ってそんな物ですよね……私も同じです。平日は仕事で体に鞭打って……休日は家族サービスで体に鞭打って……」

そう言って男性は勇夫の隣の椅子に座った。

「本当……どこの一緒ですね……」

「肩とか凝ってませんか?」

「え?そういえば……確かに……」

「ちょっと失礼」

そう言って男性は勇夫の肩のツボを押した。

「うっ!」

「どうです?」

「あれ?何か、肩が軽くなった気がします」

「そうでしょう?肩凝りに効くツボを押したんですよ」

「へぇ〜ツボ!」

「あっ、申し遅れました。私、宮田と言う者です」

そう言って宮田は勇夫に名刺を渡した。

「あっ、どうも……あっ、すみません……私今名刺を持ってなくて……」

「構いませんよ。もし疲れを取りたい時は是非ウチにいらして下さい」

そう言って宮田は立ち上がった。

「え?」

名刺を見ると、宮田は整体師のようだった。

「ああ、そういう事ですか」

「ええ、あなたがお疲れのようでしたので気になって……職業病ですかね。では失礼します」

そう言って宮田は帰って行った。

「ありがとうございました」

勇夫は改めて宮田の名刺を見た。

名刺に書かれた整体院の住所は家とこのショッピングモールの間辺りのようだった。

「今度行ってみるか」

その時、突然怪物がショッピングモールに現れた。

屋上を突き破り上から突然降ってきた怪物に客は大パニック。

「何だ?」

勇夫は急いで怪物の方に向かう。

「パパ!」

「あなた!」

香菜と洋子が勇夫の元に寄ってきた。

「2人共大丈夫か?」

「ええ……」

「一体なんなの?」

「分からない……とにかく逃げるんだ!」

そう言って勇夫は怪物の方に向かう。

「あなた!どこ行くの?」

「ちょっと用事だ!」

「え?こんな時に?」


勇夫は逃げ惑う人々を掻き分け怪物のモトニ辿り着く。

「コイツ……この前のヤツの仲間か……」

その怪物はトカゲに人間の手足が生えた様な異形の怪物だった。

勇夫は一度通路の奥に行き、トイレへ。

「やれやれ……トイレで変身しなきゃいけないとは……」

勇夫は腕時計のスイッチを押す。

「変身!」

ブレイブ仮面登場。

ブレイブ仮面がトカゲの怪物の前に現れる。

人々はブレイブ仮面の登場に歓喜。

「あっ!ブレイブ仮面!」

「来てくれたのね!」

香菜と洋子もブレイブ仮面の登場を喜ぶ。

そして、トカゲの怪物とブレイブ仮面の様子を見ている謎の影……。

それは先日藤堂と喫茶店で会っていた男だった。

「ブレイブ仮面もご登場か……我々の計画の為にも存分に戦ってくれよ。ブレイブ仮面……」


ブレイブ仮面がトカゲの怪物に攻撃を仕掛ける。

しかし、トカゲの怪物はジャンプで攻撃をかわし、ブレイブ仮面に尻尾で攻撃。

「うわっ!?」

その尻尾の一撃は強烈でブレイブ仮面は跳ね飛ばされてしまった。

ブレイブ仮面が飛ばされた先は高級な時計を売ってる店。

「イタタタッ……あっ、高級な腕時計が……勿体無い……」

だが、トカゲの怪物は更にブレイブ仮面に襲い掛かる。

「うわっ!?……まずいな……ここじゃ、金銭的被害が多く出そうだ……」

そう呟き、ブレイブ仮面はトカゲの怪物を別の場所に誘導する事に……。

ブレイブ仮面はトカゲの怪物を挑発し、店の外に誘き出そうとする。


トカゲの怪物はブレイブ仮面を追い掛け走り出す。

トカゲの怪物は足が早い。

このままでは追いつかれてしまう。

そう思ったブレイブ仮面はジャンプし、上の階に上がる。

トカゲの怪物もその後を追う。

ブレイブ仮面はそのままトカゲの怪物を誘導し、怪物が入って来た天井の穴から屋上に出る。


「よし……ここでならまだマシだろう……さぁ、来い!」

だが、トカゲの怪物は近くの車をブレイブ仮面に向けて突進させる。

「うわっ!?」

ブレイブ仮面は攻撃をかわすが、車同士が激突し、両方の車が大破。

「しまった……こっちも被害が大きい……」

そして内心……。

ウチの車地下の駐車場にしておいて良かった〜。

と思った。

そこへ……。

「お前がブレイブ仮面か……」

「誰だ!?」

それはあの男……。

「よぉ、うちの部下の遊び相手をしてくれてる様だな」

「遊び相手?何を言って……まさか!」

「そう、このトカゲの怪物は元々は人間だ……超人的パワーを手に入れたな」

「じゃあ、この怪物騒ぎはお前が黒幕か!」

「それは少し違う……俺はあるお方の崇高なる目的の為にコイツを使ってるだけだ」

「何?一体何を企んで……」

「我々の理想郷の為に……お前にも協力して貰うぜ」

突如現れたこの男は何者なのか。

ブレイブ仮面の本当の敵が遂に現れた。


続く……。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る