第4話本当の戦い
月曜日の朝、勇夫は今日からまた仕事だ。
しかし、激しい筋肉痛に襲われていた。
「イタタタタッ……」
「まったく……急に運動なんか始めるからよ……」
「うわっ……パパ、ダサッ……」
「ハハハッ……いやぁ、参った参った……」
洋子と香菜に呆れられながら勇夫は何とか立ち上がる。
「結局ジョギングの出来てないじゃない……」
「ハハハッ……面目ない……まぁ、今日は今からじゃ時間ないから夜にでもやるさ」
そう言って勇夫は筋肉痛に耐えながら会社に向かう。
朝の通勤ラッシュの時間……。
当然満員電車で筋肉痛でも座って等いられない。
それどころか電車が揺れる度に隣の人がぶつかって来て痛い。
朝から既に疲れながら会社に到着する勇夫。
「はぁ……体痛い……ジョギング辞めようかな……」
「湯村さんおはようございます!」
振り向くと田中が声を掛けて来ていた。
「ああ、おはよう……」
「どうしたんですか?元気無いですね?」
「いやぁ、健康の為にジョギングを昨日から始めたんだけど筋肉痛でね……慣れない事はするもんじゃ無いね……」
「何言ってるんですか!いいじゃないですか!健康が1番!筋肉痛もその内無くなりますよ!」
「ああ、ありがとう」
田中は性格も良い中々の好青年だ。
営業課のオフィスに入ると何やら盛り上がっていた。
「何だろ?」
気になり勇夫が行ってみると井上課長が上機嫌でヒーローに助けられた事を話していた。
「いや〜本当にヒーローって居るんだなぁ。ニュースでやってた強盗事件も立て籠もり事件も彼が解決したそうだが、私も助けられるとは思わなかったよ」
「井上課長、おはようございます」
勇夫が挨拶をすると。
「おお、湯村か!実はなこの前の金曜日の夜凄い事があってな!」
「はぁ……」
井上課長の話を聞くとブレイブ仮面に助けられ非常に感謝して居るようだった。
課長、今日は機嫌良さそうだな。
そう思いながら勇夫も話を聞いていたが、井上課長があまりにも褒めちぎるのでなんだか照れ臭かった。
「やだな課長〜。そんな大した事じゃありませんよ〜」
「はぁ?何を言っとるんだ!彼は素晴らしいじゃないか!何の取り柄もない平社員のお前に何が分かる!!」
「え〜……!?」
勇夫は井上課長の機嫌を損ねてしまった。
難しいな〜……。
ヒーローとしては過大評価され、部下としてな罵られる。
何とも歯痒い気分だ。
「すみません……あ、そうだ。そのヒーローの名前ご存知ですか?」
「ん?そう言えば私が助けられた時は名前を言って無かったが……確かニュースで見た時名前を言ってたような〜……何だったかな〜?」
「ブレイブ仮面ですよ!」
「あ〜!そうだそうだ!それだ!いや〜最近どうも人の名前が覚えられなくてな〜」
そんな話をしていたら直ぐに始業の時間となりそれぞれ仕事を始める。
勇夫の隣の席にはあの北野が……。
「あっ、北野君、手大丈夫?」
勇夫は恐る恐る尋ねる。
「……大丈夫っす」
この様子だと治療費を請求される事は無いと一安心する勇夫。
勇夫が仕事を始めたその頃、勇夫に腕時計を渡して来たあの謎の男はある人物に喫茶店に呼ばれていた。
「よう、こっちだ」
「どうも。話とは?」
「悪いな藤堂(とうどう)……急に呼び出して……お前、コイツの事知ってるだろ?」
そう言ってその男が出したのは一部の新聞。
その記事には立て籠もり事件の現場に現れたブレイブ仮面の写真が載っていた。
「ええ」
「コイツが現れたって事はそろそろ例の計画を進める気なんだろ?ならこっちも動くぜ?」
「そうですね……我々もそのつもりです……ご自由に……」
「じゃあ、俺も部下達に話しておくぜ。じゃあな」
男は去って行った。
「さて、ここからが本当の試練ですよ。ブレイブ仮面……」
昼休み、勇夫は営業で外回りをしていた為、外で昼食を食べる。
勇夫は行きつけのラーメン屋に入る。
「さて……今日は何にしようかな?」
メニューを見ながら悩んでいると外で爆発音が!!
驚き外に出て見るとそこには見たことも無い怪物が暴れていた。
近くの車が炎上している。
恐らく爆発音はこれが爆発したのだろう。
この怪物が暴れる様子を少し離れた所から見ているのは先程藤堂と話していた男。
「さぁ、早く来い……ブレイブ仮面……」
勇夫は逃げ惑う人々を掻き分け建物の物陰に隠れる。
「あんな化け物に勝てるのか?いや、私が戦うしかない!変身!」
勇夫はブレイブ仮面に変身し、怪物の、前に現れた。
「来たな、ブレイブ仮面……お前を殺す!!」
「喋った!それに私を知っているのか?」
怪物はブレイブ仮面に襲い掛かる。
怪物はその怪力でブレイブ仮面を圧倒する。
「くっ……何て……パワーだ……」
怪物はそのままブレイブ仮面を投げ飛ばす。
ブレイブ仮面は車の屋根に落下。
「ぐわっ!?」
更に怪物はブレイブ仮面に伸し掛かり殴る、殴る、殴り続ける。
このままでは直ぐに制限時間が来てしまう。
もしこのまま変身が解除されれば命は無い。
焦れば焦る程攻撃がまともに決まらない。
ブレイブ仮面はこれまでに無い程のピンチを迎えていた。
「まずい……このままじゃ……」
ブレイブ仮面は状況を打開する為渾身の一撃で怪物に反撃した。
怪物がブレイブ仮面から離れようやく体勢を立て直すブレイブ仮面。
「はぁ……はぁ……まったく……こっちは全身筋肉痛だって言うのに……」
そしてピンチのブレイブ仮面の前に藤堂がやって来る。
「お困りのようですね」
「!あんたは……」
「ブレイブ仮面……でしたか?相手は人間離れしている以上こちらも本気で行かなくては……」
「何か策があるのか?」
「これを……」
藤堂は新たなアイテムを差し出した。
「ん?これは?」
「それを腕時計に差し込んで下さい」
それはカートリッジの様なアイテムで腕時計に差し込む事が出来た。
早速使ってみるブレイブ仮面。
すると必殺技のデータがインプットされた。
「これは……」
「さぁ、ヒーローの反撃です」
「ああ!ありがとう!」
ブレイブ仮面はこの人間離れした怪物を相手に初の必殺技を発動。
ブレイブ仮面さ構える。
怪物がブレイブ仮面に襲い掛かる。
ブレイブ仮面はカウンターの必殺パンチで怪物に反撃。
高エネルギーを集めたパンチが怪物に炸裂し怪物は倒される。
「おおー!……名前どうしようかな……」
怪物は倒されたがその怪物の正体は人間だった。
「人間!?……一体どうゆう事だ?」
その人物は完全に気を失っていた。
そして、大勢の人々の前で見事勝利したブレイブ仮面は大歓声を浴びる。
「あっ、どーもどーも!」
照れ臭そうに愛想を振りまくブレイブ仮面……。
「そうだ、あなたに聞きたい事が……」
そう言って藤堂の方を見るが藤堂は既に居なかった。
「まったく……神出鬼没な人だな……仕方ない。時間も無いし行くか」
ブレイブ仮面は再び建物の物陰に隠れ変身を解除。
「あっ!急がないと昼休み終わっちゃう!」
勇夫は慌ててラーメン屋に戻る。
その様子を見ている男。
先程藤堂と会っていた男だ。
「ブレイブ仮面……本当の戦いはこれからだぞ?我々の理想郷を作る為には君にヒーローを演じて貰わなければならないからな……」
ブレイブ仮面の本当の戦いはこれから始まる様だ。
これからどんな試練が待ち受けているのか……。
続く……。
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