第2話命名
勇夫は目を覚ました。
気が付くと自室のベッドの上に寝ていた。
勇夫を激しい頭痛が襲った。
二日酔いの様だ。
「いたたたたっ……なんだ……夢だったのか……」
勇夫はヒーローに変身した。
しかし……それは夢だったのか……。
だが、勇夫の左腕には昨日の腕時計が付けられていた。
「まさかな……」
今日は土曜日の為仕事は休みだ。
もう一眠りしようと再びベッドに横になる。
しかし、そこへ洋子がやって来て眠りを妨げられる。
「ちょっとあなた!休みだからっていつまで寝てるの!掃除するから起きて起きて!」
「も〜……休みの日ぐらい寝かせてくれよ〜」
「何言ってんの!掃除もするしあなたには買い物に行って欲しいんだから起きてよ!」
結局、洋子に叩き起こされる勇夫……。
仕方なく頭痛薬を飲み朝ごはんを食べる勇夫。
そこに香菜がやって来る。
「パパ起きたんだ」
「おお、おはよう。買い物に行けって母さんに叩き起こされてな」
「ふ〜ん……」
「一緒に行くか?」
「冗談でしょ?行くわけ無いじゃん。ウチこれから友達と遊びに行くし」
「そうか……遊びに行くのも良いがちゃんと勉強はしてるのか?」
「ウザっ……マジ萎える〜」
そう言って香菜は行ってしまった。
朝ごはんを食べ終えると買い物に出掛ける勇夫。
「あ〜あ……休みの日ぐらいのんびりさせてくれよな……」
文句を言いながらも買い物に行く勇夫。
買い物は近所のスーパーに行くだけだが足取りは重かった。
ふと腕時計が気になり立ち止まる。
「まさかとは思うが……試してみるか……」
勇夫にはどうしても昨日の事が夢だとは思えなかった。
公園のトイレに寄り誰も居ない事を確認する。
「よーし……変身!なんてな」
勇夫は腕時計のボタンを押してみる。
すると、勇夫の全身を光の粒子が包み込み本当に変身した。
「やっぱり……夢じゃない!!私は……本当にヒーローになったんだ!!」
そして、勇夫はその能力を試してみる事に。
「そういえば……昨日はガラの悪い男を殴ってしまったよな……私は本当に強くなってるのか?」
試しに公園の木に向かってパンチ。
流石に思いっきりやるのは怖かった為、軽くパンチわしてみた。
だが、軽くパンチしただけで木は少し凹んだ。
「ま、まさか本当に!?」
今度はもう少し力を入れてパンチ!
すると木にヒビが入りそこから倒れた。
「え〜!?木を倒してしまった〜!?この力は本物だ……」
そうすると急に昨日殴った男が心配になり始めた。
今度は走ってみる。
思いっきり走るとそのスピードは凄まじかった。
100メートル程の距離をあっと言う間に走り抜けてしまった。
「す……凄く早い……しかし……日頃の運動不足のせいか……流石にキツいな……」
続いてジャンプ力を試す。
思いっきりジャンプ!
あっと言う間にビルを見下ろす程の高さまでジャンプしてしまった。
「まずい……これは……高すぎて怖い〜!?」
そして急降下。
地面に落下するが何ともない。
「凄すぎるぞ、私〜!?」
勇夫は自分の能力に驚愕した。
しかし、急に変身が解除。
時計を見ると変身してから5分が経過していた。
どうやら変身していられる時間は5分間だけの様だ。
「よーし、もう一回!」
勇夫は再び腕時計のボタンを押すが変身出来ない。
腕時計を良く見ると細長いバーが表示されていた。
恐らくここにエネルギーゲージが表示され、それが溜まらなければ変身は出来ない様だ。
「なーんだ、制限時間付きか……」
がっかりして勇夫は再び買い物に向かう。
「しかし……折角ヒーローに変身出来る様になったんだから何か名前を付けたいな〜……」
勇夫はヒーローの名前を考えていた。
しかし中々良い名前が思い浮かばない。
そこで勇夫は買い物を終え少し足を伸ばして駅前の本屋に行った。
本の中から何かヒントを得ようとしたのだ。
探したのはキャラクター創作の本や特撮、アメコミ等の資料本。
手頃なのを数冊買い帰って行く勇夫。
家に帰るなり洋子は……。
「ちょっとあなた!近所のスーパー行くのにどれだけ時間掛かるのよ!」
「いや〜ごめんごめん……ちょっと駅前の本屋に……」
「まったく……生物をある事忘れないでよね」
「すまん……」
洋子に小言を言われながらも勇夫は部屋に行き早速買ってきた本を読み漁る。
するとそこには子どもの頃好きだった特撮ヒーロー物の写真やストーリーの解説が乗っていた。
「いや〜……懐かしいな〜……」
そして子どもの頃特に好きだった特撮ヒーロー「ブレイブマン」のページ。
「ブレイブマンか……好きだったな……ん?ブレイブ?ブレイブは勇気って意味だよな……?私の名前の勇夫の勇でもある……いいかも!」
勇夫は再び出かけた。
今度は自転車で街を走る。
「5分しか変身出来ないからな……事件は自分で探さないと……と言っても事件なんて早々起こらないか……」
だが、しばらく走っていると大通りに出てそれは起こった。
銀行の周りをパトカーが囲んでいる。
どうやら銀行強盗の様だ。
「まさかそんな都合良く……」
勇夫は野次馬の中に入り込んで様子を伺う。
警察が中の様子を話している。
「犯人は3人、銀行内の客と従業員十数名を人質に現金5000万円を要求しているようです」
「そうか……武器は?」
「犯人3名それぞれが拳銃を所持、更にリーダー格と思われる男はナイフの所持している模様」
「そうか……人質の安全が最優先だ。今は下手に刺激せず特殊部隊の到着を待とう」
刑事と思われる2人が会話していた。
「よーし……」
勇夫は野次馬の中から抜ける。
建物の影に隠れ腕時計を見る。
赤いゲージが溜まっていた。
「よし、もう行けそうだ。変身!」
勇夫は変身し銀行に向かう。
ヒーローが銀行の窓を突き破って登場。
警察も驚く。
「何だ!?」
だが、強盗達の方が驚いていた。
「な、何だテメェは!?」
「私は……ブレイブ仮面だ!」
「ブレイブ仮面?コスプレのイカれ野郎が!!」
リーダー格の男が拳銃を向ける。
しまった!?拳銃なんかに耐えられるのか!?
勇夫は変身した際の防御力にまでは考えが至らなかった。
果たして大丈夫なのか?
だが、リーダー格の男は容赦なく拳銃を撃つ。
「うわっ!?」
だが、何とも無かった。
「あれ?全然平気だ……」
「な、何でだ!?バケモンかコイツ!?」
「ふざけるな!私はヒーローだ!!」
ブレイブ仮面のパンチがリーダー格の男を殴り飛ばす。
殴り飛ばされたリーダー格の男はたったの一撃でダウン。
「テメェ!!」
もう一人の強盗犯が襲い掛かって来る。
だが、変身したら動体視力が優れて居る様で犯人の動きが分かった。
攻撃をかわし反撃のパンチ。
もう一人の犯人も伸びてしまった。
「あちゃ〜……大丈夫?」
最後に残った犯人は腰を抜かす。
「ヒィィィ……た、頼む……助けてくれ……」
「銀行強盗なんかしなければこんな事にはならない……それだけの事さ」
犯人2人が気絶しもう一人が降参した事で警察が突入し無事に犯人を確保。
だが、刑事の一人はブレイブ仮面に話を聞く。
「君は一体……何者なんだ?」
「ブレイブ仮面、ただのヒーローですよ。じゃ!」
ブレイブ仮面は立ち去る。
「あっ、待て……」
「警部、奴を追いますか?」
「……いや、いい……もし彼が本当にヒーローならこの街には必要かも知れない……」
勇夫は物陰に隠れ変身を解除。
「ふぅ〜……危ない危ない……制限時間ギリギリだった……さて……疲れたし帰るか……」
勇夫は帰って行く。
だが、ここに正義のヒーロー、ブレイブ仮面は誕生した。
彼の本当の戦いはこれからだ。
事件の一部始終を見ていた謎の男。
「ブレイブ仮面め……中々頑張ってるじゃないか……」
それは勇夫に腕時計を渡したあの男……。
続く……。
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