Ms.テリーとyou、流れ。美味しいカレーは、怖いカレー。
龍玄
容疑者Hのジレンマ
missテリー
「youさん、夕飯、食べました?」
you
「えっ?どういう風回しだぁ、何か拙い物、入れたんじゃないか」
missテリー
「う~ん、入ったのを見た…からかなぁ。youさん、和歌山毒物カレー事件って知
ってますか」
you
「聞いたことはあるけど、良く知らないけど?」
missテリー
「僕も知らなかったんだけど、metubeで見てしまったんです」
you
「テリーが興味を持ったってことは、一筋縄で行かない事件ってことか」
missテリー
「判決は出てるんです。死刑って。でも、納得がいかなくて…」
you
「珍しいな、いつもはトコトン、自分で調べるのに。で、どんな事件なんだ」
missテリー
「1998年7月日、和歌山市園部で夏祭りに提供されたカレーラースがもとで食した
67人が急性ヒ素中毒になり4名が死亡する毒物混入・無差別大量殺傷事件にな
ったんです。最初は食中毒、青酸化合物と初動捜査の迷走もあった。」
you
「裁判でDNAが採用されたのが1994年頃か。密室の自白より、物証に重きを置き
始めた時代だな。そんな時に起きた凄い事件なんだ。でも、犯人は逮捕され判決
も出てるんじゃないか、それの何が気掛かりなんだ。まさか、”美味しいカレー
は怖いカレー”なんて言わないよな」
missテリー
「続けます。一審で極刑判決。その後、上告、控訴棄却され、2009年に死刑が確
定してます。それが、2021年5月に再審請求が受理されたんです」
you
「23年も経って?どうやら冤罪の香ばしい匂いがしてきたな。事実は小説より奇な
り、だな」
missテリー
「不謹慎は良くないです。もし、冤罪なら、こうしている間も自由を奪われ、不安
な時間を背負わされている人がいるんです。被害者の方もね。真犯人がいたら生
きた心地がしないでしょうから」
you
「犯人は違うだろう、自業地獄でしょう」
missテリー
「youさんの造語ですか、まぁいいか。でも、犯人にその自覚がなかったら」
you
「意味深な事を言うなぁ」
missテリー
「続けます。容疑者Hは、まず保険金詐欺と殺人未遂で逮捕し、その後、カレー事
件で逮捕したんです。容疑者Hは一環としてカレー事件の関与を否認。2021年5
月には第三者の可能性である証拠として、ヒ素ではなくシアン化合物ではないか
との訴えが受理されたんです」
you
「そんな凄い出来事が報道されないのは何故なんだ」
missテリー
「そこも特殊なんです。容疑者Hは、保険金詐欺を繰り返し優雅な生活をしてい
た。今では考えれないでしょうが、当時、マスゴミは容疑者Hを毒婦として特集
し、犯人として世間に印象付けた大罪があるんです。報道することは、自戒の念
を呼び覚ますようなものですよ」
you
「正義感を振りかざし、決めつけて弱者を責める、糞マスゴミの加担があるのか」
missテリー
「はい。マスゴミの得意技発令です」
you
「カレー事件なのに保険金詐欺事件の悪態を掘り出して、如何にもこいつがやりそ
うだ、と印象付ける認知戦か」
missテリー
「金を得るための保険金詐欺。一文にもならないカレー事件とマスゴミの煽る主張
とは符合しない。今までに得た保険金を危険に晒すことなど用意周到な容疑者H
がやるとは考えにくいです」
you
「金への執着は、感情を凌駕する、からな」
missテリー
「続けます。容疑者Hは否認しているにも関わらず極刑の判決がでる。物的証拠も
なく。これはおかしいと僕は思うんです」
you
「初動捜査のお粗末さか。死因の特定も出来ず、闇雲に動いた結果、無差別殺人じ
ゃないかと騒がれ、解決を焦ったか。マスゴミはお得意の切り取りを発動だな」
missテリー
「はい。容疑者Hに水を掛けられたぁ、と騒ぐ。しかし、報道されない部分では、
24時間365日、家の中や家族の行動をカメラで追い回す。当初、お疲れ様、と報
道陣にお茶をだしていた容疑者H。家を四六時中覗かれ、郵便物を勝手に開けら
れ、隠しカメラも設置される過剰な取材方法。注意するも止めない。その積み重
ねからの行動を批判できるでしょうか。怒りを表わすのに”頭でも冷やせ”と怪我
をさせない程度に水で応戦。窮地に追いやられても怒りに任せるのではなく、冷
静な行動に思えます。マスゴミの世間に流す怒りに任せて動く毒婦とかけ離れて
いると僕は思います」
you
「心理学的にも行動学的にもマスゴミの描く人間像と容疑者Hの人物像には開きが
あるな。聞けば聞くほど事件経緯そのものが捏造か創作に見えてくる」
missテリー
「僕もそう思います。事件と容疑者Hキャラが一致しない。違和感だらけです。警
察の捜査も衝動捜査のミスを隠すように、声を張り上げるマスゴミの報道のご機
嫌を取るように後付けするように動いているとしか思えなくなって、これは駄目
だとyouさんに話しています」
you
「答えありきの検証など糞くらえだ」
missテリー
「はしたない言葉は僕は嫌いです。冷静になってください」
you
「済まない」
missテリー
「正直に過ちを認めることは大事です」
you
「しかし、保険金詐欺ってそんなに儲かるのか?」
missテリー
「儲かっていたみたいです。きっかけは、容疑者Hの夫がシロアリ駆除に使われる
ヒ素は少量なら死なないどころか保険金が手に入ると聞かされていた。ギャンブ
ルでの損失で咎められていた。少し舐めた。オエッとなって入院。保険金が入っ
た。保険金には180日程入院すれば死亡保険と同額が貰える高度障害保険がある
ことを知る。働かずして大金が手に入る。ヒ素を少量飲んでオエッとなって入
院。それを組織的に行うようなになった。容疑者Hは、保険金契約の手続きを管
理していた。詐病では数値を偽れない。ヒ素を使えば検査数値が大きく乱れる。
あとは症状を誇張すればバレなかった」
you
「費用対効果はあったのか?」
missテリー
「じゃ、僕が知っているのを話します。最初は夫にバイク事故を起こさせ、2050万
円。容疑者Hが自転車で火に突っ込み500万円。7500万円で自宅を購入。その年
に容疑者Hの母が脳卒中で亡くなり1憶4000万円を手にする。これを機に夫は高
度障害保険に手をだす。なんだかんだと受け取った保険金合計は8憶円を超えた
みたいですよ」
you
「そんなに?でも、掛け金が凄いんじゃないか」
missテリー
「年間2000万円ほどだったらしいです、でも受け取っていた保険金は1憶2000万円
だったらしいです」
you
「採算は充分とれているが別世界の話だ。であれば、夫への殺人未遂って」
missテリー
「そう、夫が主犯です。本人が言っているのを裁判所が妻を庇っての供述と判断さ
れ、問われた罪です」
you
「何としても裁く側は容疑者Hを犯人にしたいようだな」
missテリー
「僕はいってませんよ。でも、何人も囲って保険金を払い、お金に困ると保険金を
搾取し、山分けする組織的保険金詐欺に関しては、裁判では保険金不正搾取の疑
いはあるが強く疑われるが無罪となっています」
you
「無罪って、詐欺し放題じゃないか」
missテリー
「保険受取人は自らの意志で自傷行為をし、生活費を稼いでいた。無理やりやらせ
ていたことが立証できなかったんです。当時は、審査が甘かったんですね」
you
「異常・異質が容疑者Hを毒婦に仕上げていくんだ、恐」
missテリー
「それで一審で死刑判決を受けるんです。理由が曖昧なんです。ヒ素を入手できる
立場にあって、且つ、カレー鍋にヒ素を混入し得える具体的現実的な機会があっ
たのは容疑者Hだけだというものと保険金詐欺でヒ素を使っていたこと、道路側
の様子を気にしながら西側のカレー鍋の蓋を開ける不自然な行動をしている、と
言うものでした。でも、毒物が混入された鍋は東側の鍋。毒物を入れたというの
なら西側に入れず、東側だけだったのかも不明なままです」
you
「容疑者Hだけって、なぜ、言い切れるんだ。ヒ素も容疑者Hだけが使っていたん
じゃないだろう。直接的な証拠がなく状況証拠のみで…。これで、特定するのは
余りにもお粗末じゃないか、それも極刑だろ」
missテリー
「僕、youさんをミスリードしてませんよね」
you
「人の意見に流されるほど、やわじゃないから心配なく。で、犯行動機は?」
missテリー
「ご近所トラブルが動機だとの検察の主張を裁判所は否定てるんです、が、当時、
現場にいた主婦たちの証言もあってね。でも、裁判所は、犯行動機が分からない
と言って犯人性を認めない事にはならない、と締めくくったんです」
you
「犯行動機を蔑ろに。じゃ、容疑者Hの犯人たる根拠まで否定しての判決?」
missテリー
「…。大量無差物殺人を狙うなら西側・東側鍋に入れるはず。自分たちの子供が食
べるかも知れないが子供の非難をさせていない。家族の保険金を狙った?でも、
その契約書類が確認できていない。咄嗟的犯行だとしても容疑者Hが憎むのが子
供も含む地域全員だったのか。容疑者Hの性格からそのような事があれば、周知
される言動・行動があったはず、それがない。だから、裁判所もそこは否定し
た。であれば、容疑者Hと断定するものは、検察のシナリオを何が何でも裁判長
が覆したくなかったとしか思えなくなったんですよ」
you
「本当に物的証拠はなかったのか?」
missテリー
「実はひとつあるんですがこれも可笑しいんです。ヒ素の入った入れ物が見つかっ
ているんですが、台所のすぐ見つかる場所にあったにもかかわらず、家宅捜査の
四日後というのは余りにも不自然です。探したがなかった。世間もマスゴミも警
察上層部も注目している。不味い、何か用意しなければ、と疑われても仕方がな
い気がします。それにはこんなこともあったらしいです。司法取引が認められて
いない時期に保険金詐欺で逮捕されていた容疑者Hの夫にこのままではHをおと
せない。頼む、妻がヒ素を使ったと言ってくれ。そうすれば条件のいい刑務所に
入れてやると、ね。これは夫が刑を終えた後の告白です」
you
「容疑者Hに同情しかなくなるな。再審請求を出してからまた半年から1年以上、
放置されるんだろ。虚しすぎる時間と付き合わされるなんて俺には無理!」
missテリー
「僕も同じです。だから、youさんに話しています」
you
「テリーから聞かなかったら、こうしている間も法治国家の中で理不尽過ぎる扱い
を受けている人がいるなんて知らなかったよ」
missテリー
「youさんも知ってくれたのが嬉しいです。僕にはそれしかできませんから」
you
「他にも疑わしい判決・事件があるだろう。その中でテリーがこの事件に注目した
のは他に何かあるのか」
missテリー
「裁判の進行が可笑しすぎるからです。テレビドラマのように動き回る探偵のよう
な判事はいないと思いますが、いれば、こんな結果には絶対にならなかったと
思うからです。動かない判事は何を見るのか。検察の起訴内容でしょう。それに
反論する弁護士の主張でしょう。罪を負わせたい者、罪を隠したい者の駆け引
き。アメリカの司法のように判事が白黒チームの指示派閥にあるのは言語道断で
すが日本は違うと信じたいんです。でも、この時の判事が可笑しいんです」
you
「検察と判事がグルだとでも言いたそうだな」
missテリー
「そんな大それたこと言ってませんよ。ただ、担当判事は、カレー事件の前に娘を
殺めた保険金殺人事件を担当していた。容疑者は否認。検察が参照した海外の実
験結果によって容疑者の言葉を一切聞かず、無期懲役を言い渡した。その後、弁
護団が結成され、新たに実験を行うと犯行不可能の結果が。問題になったのは、
現実と供述調書の食い違いだった。事件当日使用されたのは7リットルのガソリ
ン。実験では2リットル。検察は実験で示された2リットルのガソリンを撒いて
ターボライターで火を点けたというもので7リットルも2リットルも同じ結果だ
というものだった。実際は、7リットルの場合、気化したガソリンに引火し爆発
と共に大炎上し、着火した者も大やけどを負うのは明らかだった。この頃、判事
はすでにカレー事件を担当していた。そして、無期懲役は破棄され無罪となって
いたという事実があるんです。この判事は、検察の主張しか認めない。明るみに
出ていないだけで他にも検察都合で作り上げられた冤罪があるように思えます」
you
「その判事が関わっているから、首を傾げたくなる判断が飛び出すんだ」
missテリー
「その判事はもう他界されています。真実は闇の中ですが、判決を受けた者は、刑
を受けていると思うと怖いです」
you
「この事件ってさぁ、殺人事件に繋がるようなご近所トラブルなければ、事故の
可能性があるんじゃないか」
missテリー
「邪推ってことで聞いてください。実は、カレー事件の前に近所の行け付近で動物
の死骸が見つかっていた。毒物によるものだった。犯人は子供だった。偶然、袋
に入った小袋を見つけ、食べ物に掛けた。それをのら猫が食べたものだった。虫
の解体跡もあった。子供の頃の好奇心と遊び心が成せる物だった」
you
「私も経験がるよ。今考えるとゾッとするけどね」
missテリー
「子供の可愛い無邪気さは時には残酷に変わります」
you
「意味深な言い方だなぁ、まさか…」
missテリー
「毒の入っていたカレー鍋は、警察が動いた時には、綺麗に洗われていた事実が解
明されていないんです。初動捜査の失態ですよね、これ。寸胴鍋を洗うのを誰に
も見られずに出来るのか。公園で洗えば誰かが見ているはず。見られたくなくて
隠して移動し、洗い、元に戻す。時間が掛かるし人目もあるだろうに」
you
「おいおいテリー、それって…最初に言っていた、犯人に自覚がないってことと関
連してるのか」
missテリー
「子供がカレー鍋に遊び心で粉を入れた。子供は自慢気に親に話した。慌てて現場
に向かうと事件に遭遇する。事の大事に気づき、隠蔽工作を親がした。鍋にはま
だカレーが残っていたかもしれない。重い。母一人では無理かも知れない。持ち
帰って洗って戻って来るには相当時間が掛かる。直ぐ側に川がある。そこなら覗
き込まなければバレない。そこで洗ったとも考えられる。だとすれば、残留成分
が草や石などに付着してることもある、が当然調べていない。子供は罪の意識な
どなく、親に叱られた思いだけです。親は、針の筵。機を見て”こんな恐ろしい
町にはいられない”と逃げるため、引っ越しても不思議ではないです。容疑者Hに
警察の眼が及んでいる間にね」
you
「初動捜査のお粗末さ。マスゴミの偏見・認知戦・大衆誘導。未熟過ぎる警察。特
異な判事。何もかもが破綻した悲しすぎる事件かも知れないな」
missテリー
「僕たちはただの傍観者に過ぎません。でも、自分には関係ない、誰かがやってく
れるだろうと無関心を装うといざ、自分の身近な問題として触れた時、認知戦で
誤報を鵜呑みにし、真実・事実を見誤ってしまう危険性があると思います」
you
「ネット時代と言っても好きなものにしか手を出さないからな。食わず嫌いじゃな
いが反対意見にも耳を傾け、論理的に物事を考えなければ、被害者意識が先行し
て進むべき道を誤る事もあることを肝に銘じなければな」
missテリー
「僕も同じ気持ちです」
you
「食欲が失せたよ~」
missテリー
「じゃ、いいです。カレーに罪はありません。僕だけで食べます」
you
「待てよ。腹が減るのも罪にはならないから、頂きま~す」
missテリー
「今日のカレーは茄子を美味しく頂けます」
you
「そうかそうか」
missテリーはyouにカレーを盛りつけた。そこには茄子が入っていなかった。茄子の取り合い鍋の中の攻防が繰り広げられる、いつもと変わらない時間がふたりに戻っていた。
Ms.テリーとyou、流れ。美味しいカレーは、怖いカレー。 龍玄 @amuro117ryugen
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