第3話
何千もの光を探し、ようやく見つけた。
洗面所の鏡で、海外らしい派手な見た目の商品がいくつか置かれていた。
入ってからスマホでマップを表示する。
自由の国、アメリカに到着した。
家を出て、近くのスーパーへ向かった。
商品の一つ一つが、日本の商品の倍の大きさだった。
フルーツやお菓子などをカゴに入れ、簡単な朝食を取る。
トイレに行き、カゴごと鏡から出た。
次はヨーロッパに行きたくなった。
今度は数百ほどの光を探し、見つけた。
特徴的な文字のäやöが使われている本が見えた。
恐らくドイツだ。
マップを確認すると、ベルリンと表示されていた。
冷蔵庫に入っていた生ハムを一枚いただき、次の国へ行く。
漆黒の空間を少し歩き、私は立ち止まった。
巨人の背丈ほどの光が沢山並んでいた。
私がとても行ってみたいと思った国だ。
光の中に入ると、カゴが一番似つかわしくない場所だった。
豪華絢爛なシャンデリアに、見渡す限りの金色。
ヴェルサイユ宮殿、鏡の間。
フランスに到着した。
写真や映像では感じることの出来ない空気。
舞踏会の真似をして、貴族の気分を味わった。
マリーアントワネットはどんな気分だったのだろうか。
「鏡の世界はなんて自由なの!」
鏡を見て、鏡に見られながら私は叫んだ。
その後も様々な国へ行き、約40ヶ国を旅した。
観光スポットで写真を撮ったり、お土産を選んだりと旅を存分に楽しみ、満喫した。
一週間の旅を終え、自宅に着いた頃にはスーツケース一杯に荷物を詰めて帰って来た。
服もお洒落なジャケットと、綺麗なワンピースに着替えた。
鏡の前に立ち、例の言葉を口にする。
「お前は誰だ。」
ついつい可笑しくて笑ってしまう。
「アハハハハハハハハハハ」
少女の狂気的な笑い声が響く。
鏡に写った服が段々と変化していく。
初めて鏡の世界に来たときと同じ服になる。
「お前は誰だ。」
鏡に写っていたはずのスーツケースが消えた。
「お前は誰だ。」
少女の目から輝きが失われていく。
「お前は誰だ。」
少女の声はすでに生気を失っていた。
「お前は誰だ。」
視界がブラックアウトする。
少女は倒れ意識を失った。
病的なまでに真っ白いベッドに、少女が横たわっている。
少女の両親らしき人物は少女の手を握り、必死に話しかけている。
少女の虚ろな目には何が見えているのだろうか。
鏡の私にさようなら リーア @Kyzeluke
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