第2話 サボってたら笑顔で怒られました
俺は今、絶賛サボり中である。
しめ縄のかかった枯れ木に、巨大なナタを立てかけ、ヤンキー座りで一息ついていた。
そして、さっきのことを思い返す。
俺は、つい、上司に聞いてみたのだ。
「どうして俺、
って。
そしたら。
「いいところでしょ?」
って、あれはどういう意味だったんだろうか。
ここ、地獄ですよ?
良いところなわけがないでしょ。
「はぁ、できれば、もっと、
不満のつぶやきが、ため息とともに零れる。
そんな見渡す世界は、紅蓮の色彩。
まさしく地獄絵図。
ひしめく罪人の悲鳴、嗚咽。
どこまでも続く、断罪のループ。
この俺の勤務地は、『等活地獄』と言うらしい。
俺はここで毎日、三国〇双みたいなことをさせられている。
「どうしてこうなった……」
なぜ地獄なんだ。
そんな俺の二度目のつぶやきに、
「人材不足だから……」
と、返答する涼やかな声。
俺はギョッとする。
居たんですか、上司!?
ヤンキー座りの俺が、真横を見ると、和装の裾と、脚が見えた。
さらに見上げると、長い黒髪の少女が立っている。
まるで、
「って、地獄って、人手が足りないんですか?」
「うん」
子供っぽく返事をされる。
「最近、死人が多いから」
俺は前世の記憶がほぼ無い。その時の社会情勢など、何も覚えちゃいない。
でも、きっとそれだけの何かがあるのだろう。
「死人が多いから、罪人も多いってことですよね?」
「うん、そう」
「皆、想いもしないんでしょうね。本当に地獄があるなんて……」
「罪のある者を、簡単に楽にさせるほど、この世界は愚かじゃない」
「……俺だって、きっと、死んだ先にはもっと、素敵なことがあると思っていただろうに」
まさかこんなことになるとは。
「この世界は、どこかでかならず帳尻合わせがあるの。現世で賄えない分は、
からんころん、草履の音を響かせて、少女が俺に前に回り込む。
「ところで……」
はい?
少女の膝が折りたたまれる。
座り込んだ少女に、真正面から見つめられる。
ちょっと照れる。
「……あなたの帳尻合わせだけれど」
「え?」
「この前のノルマが、残り7万5千と482人、残っているわ」
え? 嘘、あのノルマ マジだったの!?
っていうかどうやってカウントを……?
「今日の分を足すと、残り17万4千998人……」
あれ?
なんか嫌な汗が出てきましたけど?
「さ、立って」
あ、これは許されない流れ!
え、笑顔が怖いです、先生!
しゅたっ、っと俺は勢いよく立ち上がる。
さーせんしたっ!
がし、っとナタをつかみ取り、俺は一目散に、『
有象無象の罪人たちに、俺は果敢に斬りかかっていく。
ノルマのために、ノルマのために!
「おりゃああ、しねええ!」
いや、もう死んでますけどね、きみら!
転生したら地獄でした。 日傘差すバイト @teresa14
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます