転生したら地獄でした。

日傘差すバイト

第1話 転生したら地獄でした。

死ぬ前の事なんてほとんど覚えちゃいない。

だから、どうやって死んだのか、なぜ死んだのか。

そんなことは知らん。


ただ、死んだ先に何かある、そう思っていただろうことは確かだ。


そういえば、『転生』だのなんだのと、そういう話が巷にあふれていたのは朧げに覚えている。

まぁ、そんな話が溢れるなんて、世も末だと思うけどさ。


――、とここまでは現実逃避なわけで。





目の前には地獄が広がっていた。





これは嘘でも比喩でもない。


あちらこちらから聞こえる、阿鼻叫喚。

決して絶えることのない炎。


何処までも広がる灼熱の世界。


そこで繰り広げられている。


死闘、死闘、死闘。


飛び散る肉片。


再起する罪人。


こんなところで俺は、ここ毎日、仕事をしている。


そんなオレの背後に声がかかる。


不意に。


「あなた」




上司の声だ。


さぼってるのがバレた。

冷や汗をかきながら返事をする。


「はい」


後ろを向くと、巨大なナタを担いだ少女が居た。

和装の少女だ。

小柄で、真っ黒な髪の、人形のような少女。


名前はまだ知らない。

見た目だけは超かわいいけど。


灼熱の熱気に似合わない、涼やかな声で言われる。


「忘れものよ」


「はい」


解ってます。

閻魔殿の玄関出るときに、わざわざ用意してくれていたのに。

見て見ぬふりして出てきたアレ。

今あなたが肩に担いでいる、ソレですよね。


「はい、受け取りなさい」


と、刃物が渡される。


「今日のあなたは料理人」



 仕方がない。


 死闘を繰り広げている罪人たちを、このナタでひたすら切り刻むのが、俺の今日の仕事らしい。


 はぁ、しょうがない。


「じゃ、行ってきます」


 自分の背丈ほどもある巨大なナタだが、俺はなんの苦もなく、扱える。


 それはそのはず。


 俺たぶん、鬼なんだわ。


 地獄の。







 でもな!


 背後からポツリと聞こえる声。


「ノルマは、10万人だから」


くっ


「鬼め!」


心は、上司の方が、鬼ですわ。






つーか、転生じゃなくてこれ、ただ死んだだけっすよね!?

 

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