第11話 それが私の生きる道‼

 それから私は勇者パーティーのマネジメントを手掛け始めた。

 上手くいくかはわからなかったが自分なりの道を模索しようと考えていた。

 今までの経験で目標に向けての理論建てと現状把握は得意分野である。

 私は3人の話を聞いて現状を確認した。

 その話をまとめると今までは行き当たりばったりで計画などほぼ無かったらしい。

 魔王討伐という目標がどこまで進んでいるのかも把握できていない様だった。

 私はチャートを作り目標までどこまで進んでいるのかを確認することから始めた。

 具体的な目標達成までの期間を明確にして無理のない様にスケジュールを組んだ。

 1日の討伐件数と内容もキッチリとスケジュールに織り込んだ。

 討伐ばかりだった毎日に討伐以外のスケジュールも積極的に取り入れた。

 奉仕活動やアピール活動は町人からの評価が上がるし骨休めにもなる。

 無理をする事も無いのでアナスターが疲労して戻ってくる事も無くなると思った。


「君には苦労を掛けてばかりだったね」


「ええ…本当に」


 アナスターはからかう様に笑っていた。

 その笑顔はどこかホッとしたように見えている。


「この仕事をしながら帰る方法を諦めずに探して見るよ」


「貴方が前を向いてくれて本当に良かったです」


 その言葉にすべての思いが込められていた。私は今までの愚かさを恥ずかしく思った。

 アナスターは初めて会った時から私の本質を見抜いていたのではないだろうか?

 多分、この娘がいなければ私は何も変わっていなかったかも知れない。


「ありがとうございました」


 私は深々とアナスターに頭を下げた。それを見てアナスターはニッコリと微笑んでいる。

 日の光に照らされて後光が差したその姿はまさしく天使だった。

 私は眩しさから目を見開いていられなかった。


「おい!おっさん!」


 そんな時、後頭部に衝撃が走った。エルザが不貞腐れた顔でこちらを睨んでいる。

 隣ではマリーシアが申し訳なさそうに微笑んでいた。


「私たちを忘れんじゃねぇよ!」


「す、すまん…」


「そろそろ出発するぞ!」


 私の時間は動き出した。もうウジウジと後ろを振り返る事はしない。

 これからの未来は作っていけば良いし、道が無ければ切り開いていけば良いのだ。


 最初は石に躓いて転んだ不運な災難だとしか思っていなかった。

 しかしその先には新しい自分に生まれ変わる希望が広がっていた。


                 END








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

石に躓いて倒れた先に 神社巡り @jinnjya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ