第10話 希望はある!?
私はこの世界で生きる為の可能性を模索していた。
帰る事を諦めた訳ではないが、暫くはここで過ごす事を余儀なくされるだろう。
帰る事ばかり考えていてはここでの生活がお座成りになってしまう。
私は自分にできる事が何かを見つめ返していた。
しかしこの世界で私にできる事は何であるのか?思い悩んではいるが答えは一向に見つからなかった。
あれから既に1か月が経とうとしている。
その間、アナスター家にお世話になっていたものの、私と言えば何をする訳でもなくその日暮らしの生活を送っていた。
対照的にアナスターは勇者の一員として朝から晩までモンスターの討伐を行い、疲労を隠し切れない様子で戻ってくる。
まるでヒモの様な生活に私の焦りは増すばかりだった。
「よう!おっさん…」
そんな私の元にエルザが訪ねてきた。エルザは自堕落な私の姿を蔑んだ眼差しで見つめていた。
「良いご身分だな!」
エルザは吐き捨てるように言った。
私は何も言い返す事などできなかった。
「何か見つかったのかよ…やりたい事とやらは」
「いや…まだ何も…」
エルザは呆れたように深いため息をついた。
「やりたい事を見つけるのも良いが、本来のおっさんの役割は何だったんだよ」
「マネジメント…」
「まねじめんと…?」
エルザは何だそれはと言いたげな様子だった。
私は組織管理の在り方を順を追って説明した。
エルザはピンとこないのか私の話を退屈そうに聞いていた。
そして何を思ったのか私の話を遮るように切り出した。
「それ…魔王討伐する私たちのパーティーに役立てる事はできねえの?」
その言葉に愕然とした。マネジメントなど、この世界には必要ないものだと思っていた。
しかし魔王討伐という目的がある以上、それに向けてのマネジメントは重要である。
今まではパーティー内の話し合いで決めていた段取りを第三者が状況を分析してそれを行う。
無い話では無いと思った。もやもやした私の心に光が差し込んだ。
「エルザ、ありがとう!」
私はエルザの手を握り感謝の念を伝える。
「キメェよ!」
しかしエルザは咄嗟に私の頬を思い切り引っ叩いた。
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