第2話 我が家に〇道が通った日
今回は夢で見ただけの話なので、そのつもりでお読みください。
ふと目を覚ますと、前回と同じく明け方らしく、部屋の中はすでに明るくなっていた。 窓の上のエアコンはもちろん、無事に付いている。
が、それよりも一瞬「えっ?」と、体を起こすよりも先に目を見張った。
何故か私の寝ている布団の両サイドを、動物たちが歩いている。
尻尾を真っ直ぐ横にしながらスタスタと歩く狐、その後ろをぴょんぴょん跳ねる野兎、立派な角をした鹿などなど……ザッと見たところ四つ足動物ばっかり。
はいぃっ――?!
ここ私の部屋だよね?
首をまわしてどこを見ても、変わらず私の部屋だ。
ただ動物たちが、私の部屋を2列になって横断している違いがある。
6畳にも足りない狭い部屋、彼らは右側のドアからではなく、壁から現れ壁に消えていく。
私の左側を足元の方から頭の方へ、また右側はその逆で、頭側から足元の方へと動物たちは進んでいる。
その左右一列ずつの中央分離帯に、私は布団に入ったまま横になっていた。
これはどういう状況だ??
なんだかエラい事になってるけど。
おそらく目が点になっている私を全く見向きもせず、動物たちは急ぐでもなく、ひたすら一定速度で整列して歩いて行く。
それにこれだけ色んな種類の動物たちがいるのに、一匹も啼いたり一声も上げない。そういえばこれだけの動物が行き交っているのに、全く足音もしない。
ただ静かに黙々とひたすら前を見て歩いているだけだ。
それにしても人間が一人もいねえー!
自分の部屋なのにすんごいアウェー感。
もしやこれが俗に言う『霊道』というモノなのだろうか?
思ってたのとなんか違うのだが。
よくテレビとかでやってる『霊道』って、なんかこうもっと薄暗くて陰湿な感じで、よろしくないイメージがあるのだけど、これは朝の光サンサンの動物王国大移動だ。
部屋の中は陽射しで明るいし、動物の表情はわからないから悲壮感もまったく感じず、ちっとも怖くない。
いや、動物の中に人間一人って、ある意味怖いはずなんだけど……。
あれ、ポイントがズレてる?
とにかく『動物オンリー霊道』
いや、そもそも霊道って、人と動物は道が違うのか?
しかも森系限定なんだけど。
今じゃテレビとかで色んな映像を見るから、無意識にインプットされてるのかもしれないけど、これだけの森の動物たちを下(もしくは横)から見続けるアングルってそうないな、とこの時思った。
しかもマイルーム。
もうよく覚えてないのだけど、右側を熊とか大きいのも通って行ったと思う。全く興味を示されなくて良かった。
ただその中でハッキリ覚えているのは、左側を通って行ったスカンクだ。
何しろ黒と白のくっきりフサフサの尻尾を、横を通り抜ける際に私に
その時パジャマを着て、上に掛け布団をしっかりかけてあったのにもかかわらず、
何故か直に毛が触れていく感触がした。
それが本当にこそばゆくて、思わず「うっひゃっ!」と声を出してしまったぐらいだ。
何だろう。
前回のポクポクもそうだったが、霊体って放射能みたいにみんな素通りなのか。
ところがこの時、この私の声を聞いて唯一反応したモノがいた。
彼はちょうど私の右側――つまり頭のほうから足のほうに移動する列――を通るところだった。
一体だけ動物じゃない彼は『歩く樹』だった。
おそらく胴体の太さは電柱くらいだろうか。天井近くの辺りに位置するところに顔があった。二本の下に下ろした枝をまさしく腕のように振って、その肩越しに振り返ったという感じだ。
頭の上は葉のない枝が伸びていた。
なんというか、ロード・オブ・ザ・リングのようにリアルで、ディズニーのような擬人化像。
ここら辺が私の夢の表現力の無さなのだろうか。
しかし次に彼が『なんだ このアマ?』と呟いたのが聞き捨てならなかった。
「ちょっと待て」
そのまま行き過ぎようとした彼を呼び止めていた。
具体的な文句は忘れたが、ともかく知らない相手に対してその言い方は失礼だとか言った。
すると彼はすぐに
『おお、そうだな。こいつは済まねえ』と謝った。
どうやら悪気で言ったのではなく、なんとなく使った言葉というだけだったようだ。
あれか、スラング英語ようにクールでイケてるとかのノリで、日本人が意味も大して気にせず使っちゃうヤバい言葉みたいに覚えちゃってるのか。
国どころか種族も違うからなあ。
しかしまあ、なんとあっさり物分かりが良いというか、素直なことか。
やはり人とは違うなあ。
私も「分かってくれればいいよ」とか返していた。
その間、立ち止まって私と話す彼の後ろを、相変わらず動物たちがゾロゾロと途切れず流れていく。
彼が大木でなくて良かった。私のせいで渋滞が起こるところだった。
かくいう私も、一度も起きずに相変わらず横になったまま喋っていた。
ヒトに物申す態度じゃないな……。
そのあと彼が『じゃあ』と、また歩き出す辺りから記憶がない。
そのあたりで夢が終わったのだろう。
起きてから布団まわりを見たが、もちろん蹄や肉球の痕跡はない。毛も落ちていない。あったら困る。
いやあ、妙にリアルだけど変な夢だったなあ、と思った。
流石にこんなオンパレードは初めてだったが、私は時々リアルな動物の夢を見る。
それ自体は珍しいことではないだろう。
私の癖なのか、出て来る動物が自然に喋ることもままある。
前話の猫様以外に、見た目普通の子猫がミャアミャア声で話すのも一度ではないし、何十年もの常連で出て来たサメも、昔と変わらず少年のような声をしている。
(このサメのエピソードは、近況ノート『夢占いか予知夢なのか?☆! モヤモヤした件』に掲載しております。
https://kakuyomu.jp/users/aota_sorako/news/16816700429364404271 )
喋れなくてゼスチャーで意図を告げて来る、コップの高さくらいのオオスズメバチとかもいた。
(考えてみたら、もうオオスズメバチどころの大きさじゃないな……)
普通の動物然としていても、やたらリアル。
目が合ったら近寄ってきた子カバの背中は、硬くザラザラで、しっとりしながらもほんのり生暖かかった。
もちろんカバなんぞ触ったことはない。だからこれが似ている感触なのかどうかはわからない。
誰もいない昼間の十字路交差点で、6、7頭の灰色狼に追い詰められた事もある。
奴らは群れで狩りをする。
狼に襲われる獲物の恐怖がわかった。二方向から回り込んで来るのだ。
車が一台も通っていないのに、横断歩道をきっちり渡ってくるのは犬属性のせいなのか。
この時私は空に泳いで逃げた。
私の夢の中での逃げの一手は、飛ぶことである。
ここら辺の話はいずれ『夢の話』をまとめたエッセイで語りたいし、なんだか下らないと思われそうなのでこの辺で止めておく。
で、そんな夢を見てから十数年後に、あるキッカケで霊能者さんに会い、この夢を思い出して聞いてみたのだ。
「霊道ってのはね、ランダムな場所に〇〇、○○○日に一回しか現れないのよ。つまりまた同じ場所に現れるのは○○年○○日後ね」
そんなハレー彗星並みに長い間隔なんですか。
さすがに次回まで生きてられるか自信ないな。というか、その時まであるのか家?
っていうか、夢の内容否定されてませんね。
『電気がどうしても点かない暗い部屋で焦る』という夢を、何かの霊障じゃないかと思って聞いた時はあっさり違う感じだったのに。
え、コレ、ただの夢じゃないの?
ん? よく怖い話にある『霊道があるようで』みたいなのとは違うんですか?
恐山なんかは周期的どころか、固定されているような気がしますが。
この部分は聞きそびれた。
私の解釈だと、そういう『気』がこもった場に通じるのと、ランダムに出現するのとでは違うのかもしれない。
そうしてそのランダムで稀有な一筋が、我が家の場合『森の動物』編だった。
これが本当に真実ならば不思議というより、珍妙な体験をしたというものである。
そういえば、なぜあの時、左右の方向が違っていたのだろう。
もしかして『行く者 来る者』 『逝く者 生まれる者』だったのだろうか。
スカンクは頭の方へ、樹人の彼は足元の方角に向かって行った。
彼はどっちだったのだろう。
すでに寿命を終えて還るところだったのか、それとも新木として生まれ変わるところだったのか。
いやいや、それ以前に何者??!
覚えている限り通った動物以外は、彼ひとりだけだった。
今更ながらに思った。
書いていて思い起こす、謎が余計に浮かび上がるばかりである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます