ハンセン病のシゲさんが教えてくれたこと。
第18話 『ふれあいハンセン病事業』
14歳の夏、母に連れられ、県主催の『ふれあいハンセン病事業』に参加した。
ハンセン病の困難な歴史もまだ詳しく知らなかった私は行きのバスに揺られながら不安を感じていた。
星塚敬愛園に到着したとき、蝉時雨が鳴り響いていた。
案内された私たちが訪れた場所はシゲさんが住む一室だった。
中に入ると壁際にマリア様の肖像画が飾ってあった。
シゲさんは私たちに包み隠さず、差別の歴史、困難な道のりを話してくれた。
私はその哀しい話を聞いたとき、怒りが込み上げてきた。
なぜ、人間はいわれもない差別や偏見をするのだろう。
まだ幼かった私には怒りしか、分からなかったのだ。
高校生になった私は解離性障害を発症し、自分が他者から冷たい目で見下される日が多くなった。
高校も中退し、病棟でずっと過ごしてきた十代だった。
外泊中にシゲさんが住む鹿屋まで行ったときもシゲさんは項垂れた私に「高校だけは卒業するんだよ」と温かく激励してくれた。
あれから、私は大人になり、無事高校も卒業し、シゲさんの約束も果たせた。
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