日高璃奈と言う人物

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 日高璃奈は低身長モデルとして雑誌でデビューしてから人気を博すようになった人物だった。

 赤っぽい茶髪は、実はここ最近になって染めたばかり。

 彼女の咲きたての華のように明るい笑顔と、誰とでも仲良くなれるコミュニケーション能力の高さ。常にポジティブな思考を持っていることが売りの彼女が――

「優夏ぁ。どーすればいい~」

 ――友人に、泣き着いていた。

「優夏にそんなこと言われても、わかりませーん」

 と、友人でもありアパレルブランドで仕事をしている河瀬優夏はきっぱりと切り捨て、カップに注がれた熱い紅茶を飲む。

「第一、ってあのだよね? なんで今更仲良くしたいって言い始めたの?」

 優夏が言うことはもっともだった。

 昔の級友に再会したとして、その当時仲が良かった訳でもないのに、今更仲良くなりたいと言うのは無謀が過ぎると言う話だ。大人に成ってから分かり合えることがあるかもしれないが、それは前例として話したことがないと成立しない。

 なにも歯車がかみ合っていない時に抱くそれは、ただより深い破滅へと向かうのみだ。

「卒業以来会ってなかったでしょ」

 優夏は、そんな破滅を璃奈に迎えてほしくなかった。

 真琴と言う人物を知っているから。覚えていたから、彼女が関わろうとするのを止めたかったのだ。

「うん。でも、昨日偶然会ってさ」

「え? 真琴に会ったの? どこで?」

「駅前の通り道。たぶん、仕事の帰り道だったんじゃないかな? なんか、リュックに沢山もの詰めてたし」

 と、璃奈は昨日真琴と再会した瞬間を思い出しているような表情で語る。

「後ろでシャッター音が聞こえてさ。やっば撮られたって思ったら真琴でビックリ。相変わらずの雰囲気だったけど、昔よりは少しは――」

「やめておきな。真琴は、昔虐められていた子でしょ? 私たちは虐めてはいなかったけど、それを止めもしなかった。あの子からしたら共犯でしかないでしょ」

 そう、優夏が言い切ると璃奈はまた黙ってしまった。

「――…………やっぱり。そうなのかなぁ」

 実際昨日はそれに近い反応を真琴に見せられたばかりだったから。

 あの拒絶はもう二度と関わりたくないと言われたに等しい。

「……やめとくよ。ありがとう、優夏」

 そう、口頭では言ったものの。

 璃奈は諦めていなかった。

 


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不合理の共依存 川端 誄歌 @KRuika

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