第41話 最終話

 レニエ家は衝動的な反乱を起こしたが、あえなく失敗。伯領は王宮直轄領になった。もとより豊かなアリエージュ伯領を直轄領にするのも。オーレリアンの策略だったのだ。

 アリエージュ伯領とレニエ家の怒涛の顛末を訊いたルカは、間抜けに口を開けて弱弱しい溜息を吐く。

「……やり手。すごい人だったんですね、オーレリアン共同王は」


 怒涛なのはルカとセルジュも同じだった。


 秋の訪れと共に始まったオーレリアンの改革に、ルカは法律顧問の手伝いとして散々こき使われ、寝ても覚めてもペンを握っているような生活だった。

 レニエ家が冬場の挙兵という暴挙に出た際、セルジュは討伐軍の将として出陣。アルフォンスも当然それに従い、電光石火の鎮圧とはいえしばし会えない日々が続いた。


 こうしてバルコニーの窓に向かい、ソファにふたり並んでお茶を飲むのも久しぶりだ

「ああ。兄上は素晴らしい王になる」

 ニコニコと目を細めるセルジュに、ルカはカップを置いて肩を竦めた。

「最近よく笑っていますね」


 セルジュは日増しに表情豊かになっていく。

 兄の期待に応えて鎮圧軍を率いて帰って来た日の、誇らしげな顔。

 一緒にユベール国王の部屋を訪ねる時の、優しげな顔。

 こうしてたまに寛ぐ時間の、気の抜けた、幸せそうな顔。


「それは、嬉しいからだろうな」


 こころなしか王宮の日当たりが良くなったような気すらする。きっと、思い込みなのだけれど。


「もうすぐ新年ですね。早かったような、長かったような……」

 春が来れば、ついにセルジュの立太子だ。その後ユベールが譲位し、オーレリアンが国王に、セルジュが共同王に即位することが決まっていた。


「春祭りの衣装がもうすぐ仕上がってくる。楽しみだ」

「そんなに祭りがお好きでしたっけ?」

「久しぶりの春祭りだからな。今年こそサン・ド・ナゼルに行きたいのだ」


 ドキリとした。結局、ルカはまだ一度もサン・ド・ナゼル聖堂に挨拶もできていない。不義理を働いてから実に七年も経ってしまった。


「一緒に行こう、ルカ。アルフォンスも、トマシュも、皆も一緒に」

 ルカは素直に頷いた。

「はい。一緒に」


 窓の外の陽光は、日増しに長く明るくなっている。

 セプティマールにまた新しい春が訪れようとしていた。

















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最年少主席と冷遇王子 みおさん @303miosan

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