第28話 戦い終わって①
――聖歴1547年/第2の月・
―――時刻・未明
――――レギウス王国/辺境の街アルニト/南門前
――――――モーニングスター使いの勇者『リリー・アルスターラント』
「これで――50体目!」
同時に1体のスケルトンがバラバラに弾ける。
炎の勢いも弱まり、突破してくるスケルトンの数も増すばかり。
とはいえ――防げない、というほどでもない。
衛兵たちによる弓矢の援護も大きいが、それ以上に敵に勢いがなかった。
南門に押し寄せる数も激減し、スケルトンたちもどこか混乱していたように見受けられる。
間違いなく、ラクーンの作戦が上手くいっていたのだ。
敵の大軍に誤情報を蔓延させ、戦力を分散し、攻撃力を削ぐ。
そして混乱の最中で、ラクーンが〝頭〟を倒す。
今頃、スケルトンの大半は西門と東門の周辺で存在しない【勇者】を探し回っているのだろう。
南門を攻めているのは、大軍全体の僅か3分の1だ。
オマケに
だから、なんとか守り抜けているが――――正直、もう時間の問題だ。
衛兵たちとの連携でかなりの数を減らしたはずだが、
……ラクーンは、どうなったのだろう。
まだ〝頭〟である高等魔族と戦っているのだろうか。
もしかしたら、彼はもう――
――――いや、
「ラクーン、信じていますよ……あなたを……」
信じるんだ、彼を。
彼は必ず目的を果たして帰ってくる。
だから、私は待たなきゃ。
私が信じて待っていてあげなきゃ、誰が彼に〝生きる意味〟を教えてあげられるっていうんだ。
そんな不退転の決意を胸に、ぐっと
『コロセ! コロセ!』
――またも、スケルトンが
「こ、の――ッ!」
スケルトンたちが間合いに飛び込んでくる。
私は
互いの武器が相克しようとした、その刹那――――突然、彼らの動きがピタリと止まった。
「……?」
私はなにが起こったのかわからなかったが、次の瞬間スケルトンたちは周りを見てオロオロと狼狽え始める。
『デ……〝デモンズ・ホール〟ガ……ソンナバカナ……!』
スケルトンたちは
反対に、彼らから発せられた言葉を聞いた私は確信する。
ラクーンが――――やってくれたのだと――――
その直後だった。
東の空に、眩い輝きが現れる。
気が付けば夜空が曙色に染まっており、僅かに明るくなっている。
目の前の
――――〝日の出〟だ。
太陽が、昇る。
『!!! タイヨウ! タイヨウダ!』
『アアアアアアアアアアッ!!!』
太陽の光を浴びたスケルトンたちは全身から煙を出して悶え苦しみ、ボロボロと骨の身体を崩壊させていく。
そしてあっという間に塵となり、風の中に消えていった。
「これが……神々が魔族に与えた罰と枷……陽の光を浴びれぬ理由……」
初めて目の当たりにした光景に、私はしばし茫然とする。
きっとアルニトの街にいた全ての魔族が、同じように塵と消えているのだろう。
数千からいた骨の大軍が、たった一瞬で――
「【勇者】様……これは一体……?」
消えゆくスケルトンを見ていた衛兵たちも
そんな彼らに対して、私は振り向き――
「……勝ったんですよ、私たち。
そう言った。
初め、若い衛兵たちは信じられないという顔をしたが、徐々に顔に笑顔が浮かび上がり――最後には、歓喜の大声を上げた。
「や……やった! やったぞぉ!」
「俺たち魔族を倒したんだ! 街を守れたんだよ!」
「信じらんねえ……本当に魔族を……は、はは……」
喜んで両腕を掲げる者、仲間の勝利の喜びを分かち合う者、安心感から腰を抜かして座り込む者。
誰も彼もが、己の故郷を守れた喜びに震えている。
良かった――本当に――
私も【勇者】として、最低限の役割を果たせただろうか。
…………いや――
「……皆さん、喜ぶのはもう少し後にしましょう。まずは犠牲となってしまった大勢の人々を弔わないと……。それから――本当の〝勇者様〟も迎えに行かなきゃ」
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