第327話 ご主人様ショッピング その三
「……」
「……」
画面に白ティー黒髪おさげ、丸メガネの上からグラサンをかけた女性と、頭から紙袋を被った赤い花柄和風メイド服のメイドロボが現れた。
二人はピッタリとくっついたまま微動だにしない。
『始まった!』
『久しぶりじゃんw』
『なにしてんのwww』
『動けよwww』
二人はお互いの体に腕を回し、しっかりと抱き合った。
「……」
「……」
『おいwww』
『こらwww』
『イチャイチャすんなwww』
画面にグラサンをかけた金髪縦ロール、シャルルペロードレスのお嬢様と、頭から紙袋を被った金髪縦ロール、シャルルペロードレスのメイドロボが現れた。
「あ、どうも皆様ごきげんよう。あ、司会の
「皆様ごきげんよう。お嬢様の助手のアンキモですのー!」
「「オーホホホホ!」」
『マリ助ー!』
『クソかわwww』
『アンキモ! アンキモ! アンキモ!』
「あ、『ご主人様ショッピング』のお時間がやってまいりましたの」
「お二人とも、挨拶をしてくださいまし」
二人は抱き合ったままボソリと呟いた。
「
「
『どしたwww』
『やる気なさすぎwww』
『しっかりしてwww』
「あ、皆様。実は黒男さん達はタイトバースから帰ってきて数日しか経っておりませんので、こんな有様ですのよ」
「三年ぶりに現実に帰ってきたので、腑抜けになっておりますの」
『あれなwww』
『また世界救っててワロワロw』
『こいつらいつも世界救ってんなwww』
『¥1500。救世主に乾杯w』
「あ、すっかりなつなつさん。今日もよろしくお願いしますの。あ、飛んで平八郎さん、楽しんでいってほしいですの。あ、いいね非公開さん、ロボチャットありがとうございますの」
「お嬢様、そろそろ本日の商品の紹介にいきますの」
「わかりましたの」
アンキモは段ボール箱をカメラの前に置いた。その中から一本のボトルを取り出した。
「では、ご紹介いたしますの。本日の商品は〜?」
「でゅるるるるるるるる、ででん!」
「ベビーローションソラリス〜! ですの」
『なにそれwww』
『でた、ローションwww』
『ソラリスってやべーやつじゃんw』
マリ助はカメラにボトルを大写しにした。
「このベビーローションは現在開発中で、今日は特別に試作品第一号を皆様にご紹介いたしますのよ」
「メル蔵さんがタイトクエストのクリア報酬で、ローション生命体ソラリスをベビーローションとして生まれ変わらせることをお願いして生まれた商品ですの」
『ローションが生まれ変わると、ベビーローションになるのかw』
『クリア報酬がローションwww』
『危なくないのそれ?』
「あ、これは浄化されたナノマシンだけを使用した、赤ちゃんのお肌にも優しいローションになっておりますのよ」
(選別ロボが一匹一匹心を込めて浄化しています)
「では、お嬢様のお顔に塗ってみますの」
アンキモはベビーローションのボトルから液体を絞り出し、手によくなじませた。
「お嬢様のお肌は一歳児並みのデリケートさですので、毎日のケアが欠かせませんのよ」
『一歳児www』
『デリケートすぎw』
『ツルツルだもんなw』
「では、塗りますわよ」
「お願いしますの」
マリ助は急に脱力し倒れかかった。アンキモは素早くそれを支えた。
「お嬢様はお世話される時は、完全に
アンキモは器用にお嬢様の体を支えながら、顔にベビーローションを塗った。
『完全脱力w』
『なんでwww』
『自分で立てw』
「お嬢様、いかがですの?」
「いい具合ですわ」
「このベビーローションは、無添加、無着色、無香料の天然成分と浄化ナノマシンだけで作られた、完全自然派ローションですのよ」
『ナノマシン入ってたら自然派じゃないだろw』
『自然とは?』
『気持ちよさそう』
「皆様、見てくださいまし。お嬢様のお肌がツヤッツヤのプルップルになりましたの」
「なりましたわ」
『すげぇ!』
『ほんまや!』
『いや、元からツヤッツヤのプルップルだから差がわからんw』
「では、ここで黒男さんにも塗ってみたいと思いますの」
マリ助は抱き合って座る黒男とメル蔵の横に膝をついた。
「……なに?」
「なにじゃありませんわよ。ベビーローションの販促中ですのよ」
「そうなんだ……」
マリ助は、黒男の丸メガネとグラサンの上からベビーローションを垂らした。掌で顔全体によく伸ばす。
「ほら皆様、見てくださいまし」
「黒男様のお肌がトゥルットゥルになりましたわー!」
『うーん……』
『まあ、なったっちゃあなったな……』
『黒男のお肌がツヤツヤだとイラっとくるなw』
「それではメル蔵にも塗ってみたいと思いますの」
しかし、ローションまみれの手で握ったため、手からすっぽ抜けたボトルが宙を舞った。それは見事メル蔵の
『うおおおおお!』
『やったぜ!』
『ナイスアクシデントwww』
『¥6000。メル蔵の
「……なにをしますか」
「手が滑りましたの」
「そんな、ベビーローションソラリスを〜?」
「そんな、ベビーローションソラリスを〜?」
「「お買い求めくださいまし!」」
マリ助とアンキモは手に持ったボトルを画面に大写しにした。
「本日は試作品第一号を、特別価格でお譲りいたしますの」
「なんと五本セットが超お買い得価格、二万円でのご提供となりますわー!」
「「オーホホホホ!」」
『くそ高え!』
『なんでベビーローションがそんなに高いのwww』
『だれが買うんだよwww』
『¥30000。十本買いました』
「あ、ニコラ・テス乱太郎さん。ご購入ありがとうございますの」
「博士のくせに計算ができていませんの」
『売れたw』
『マジかよw』
『変態博士がなにに使うのw』
「ここで大物ゲストをお招きしておりますの」
「スペシャルゲストですわよ」
『ゲスト!?』
『マジかよ!』
『だれ!?』
「それではご登場くださいまし」
「どうぞですの」
画面に巫女装束を纏ったメイドロボが現れた。グラサンをかけている。
「
『!?』
『やべえ! ガチ大物じゃねーか!』
『激カワ!』
『やべえギャルきたwww』
『ちょりーっすwww』
「やあやあ皆の衆、元気してた?」
「もちろんですのー!」
「お嬢様はいつも元気いっぱいですのー!」
元気溌剌なお嬢様たちとはうらはらに、黒男とメル蔵は巫女の登場に怯えているようだ。
「ほらほら、黒男さん達もご挨拶しなさいな。無礼ですわよ」
「あ、えへえへ、サージャジャ丸様、こんにちは」
「……こんにちは」
『ビビってるwww』
『なんでwww』
『どしたwww』
「サージャジャ丸様は浅草神社、通称
「浅草神社で、毎日わたくし達の健康と平和をお祈りしてくださっておりますのよ」
お嬢様たちはサージャジャ丸に向けて手を合わせて祈った。
「マジうけるwww」
『ワロてるw』
『なんでギャルメイドなのw』
『ありがてぇ、ありがてぇ』
『人』
『人人人』
『人人人』
「いや〜、みんなタイトバースではご苦労だったね〜」
「ほんとですのよ」
「三年間もゲームの中で暮らしましたの」
「
『ちょっとなにいってるかわかんないw』
『だれだよ、ゲームの中にソラリス入れたやつはw』
『世界崩壊の危機w』
「まあでも、みんなが頑張ってくれたから、現実世界もタイトバースも救われたよね。マジ
「……」
「……」
「黒男さんとメル蔵がなにか言っていますの」
「……」
「……」
『なにいってるかわかんねえw』
『声小さすぎw』
『ちゃんとしろwww』
「サージャジャ丸様のせいで、酷い目にあった……」
「サージャジャ丸様のせいで、三年間もご主人様に会えませんでした……」
「
黒男とメル蔵は抱き合ってサージャジャ丸を睨んだ。
「あんまり無礼な態度をとると、
サージャジャ丸の迫力に黒男とメル蔵は震え上がって怯えた。
『ガチこええw』
『へいへい、ビビってるよ〜』
『ヘタレw』
「ふうふう、オコしたら喉が乾いちゃったよ。アンピッピ、ドリンクちょらい」
「どうぞサージャジャ丸様、こちらですの」
「おー、気が利くねえ。グビグビ……ってこれ、ベビーローションソラリスやないかーい!」
「ソラリスは安全に配慮したベビーローションですので、飲めますのよー!」
「オレンジ味、グレープ味、マンゴーラッシー味、背脂味と各種取り揃えておりますわー!」
「そんな、ベビーローションソラリスを〜?」
「そんな、ベビーローションソラリスを〜?」
「「お買い求めくださいまし!」」
『このローション飲めるの!?』
『すげぇ!』
『飲みたくねえ!』
『¥4000。十五本買いました』
「そろそろ本日の『ご主人様ショッピング』の放送を終わりたいと思いますの。あ、新都知事さん、楽しんでいただけましたでしょうか? あ、ポップステップ禁止令さん、また次回もよろしくお願いしますの。あ、ニコラ・テス乱太郎さん、ロボットなんですから計算はちゃんとお願いしますの」
「それでは皆様……」
「「
『バイバイキーンw』
『また明日〜』
『はひふへほー』
(雅なBGM)
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