第295話 ロボチューブ生配信です! その十四

「あ、はい、あ、はい。あ、始まってる? あ、始まりました『ご主人様チャンネル』の黒男くろおです」


 画面に白ティー黒髪おさげ、丸メガネの上からグラサンをかけた女性が現れた。


「助手のメル蔵めるぞーです!」


 画面に青い雪柄メイド服を着て、頭から紙袋を被った巨乳メイドロボが現れた。


『始まったああ!』

『貧乳あらわるwww』

『メル蔵ー! 愛してるぞー!』


「あ、メッキリハルハルさん、初めまして、楽しんでくださいよ。あ、飛んで平八郎さん、今日もね、あ、最後まで見ていってくださいね。あ、ドヤドヤコンコンさん、ほどほどにお願いしますよ。あ、じゃあ今日もね、あの、あれ、いつもの二人が……」

「オーホホホホ! 近所に住んでるマリ助まりすけですわー!」

「オーホホホホ! お嬢様の助手のアンキモですわー!」

「「オーホホホホ!」」

「あ、出てきた」


 画面に金髪縦ロールの二人組が現れた。


『きたああああ!』

『マリ助ー!』

『アンキモ! アンキモ! アンキモ!』


「あ、じゃあ今日もこの四人でやってまいりますよ。メル蔵!」

「はい!」

「今日はなにをするの!?」

「今日はレトロゲームをプレイします!」


『レトロゲーム?』

『楽しそうw』

『マリオとか?』


「プレイするゲームはこちらです! デュルルルルルル、デン! 『熱血硬派くろのくん それゆけ大運動会』〜! パフパフパフ!」


『知ってるwww』

『これかよwww』

『名作じゃんwww』


「ああ、これね。知ってる」

「面白そうですのー!」

「四人で遊べるやつですのー!」



 ——熱血硬派くろのくん それゆけ大運動会。

 二十世紀に発売された『くろのくんシリーズ』の一本。横画面の2Dアクションゲームで、様々なキャラクターが様々な競技に挑む。二頭身のコミカルなキャラクター達が個性的な技で暴れまくる大人気作である。


『時代劇のやつが好きだったw』

『性格出るゲームなw』

『クサカリ学園使うやつ、マジクズwww』


「じゃあ早速やろうか! ご主人様はデカケツ高校を選ぶぜ!」

「私はハチマタ高校を選びます!」

「わたくしはオーホホ連合ですわー!」

「せっかくですのでわたくしはクサカリ学園を選びますのー!」


 プレイヤーは『デカケツ高校』、『ハチマタ高校』、『オーホホ連合』、『クサカリ学園』の中から一つを選ぶ。それぞれのチームには複数のメンバーがおり、自由に選択することができる。

 競技は『クロスカントリー』、『障害部屋競争』、『ケツ割り競争』、『格闘大会』の四つを順次行う。

 各競技で得た点数の合計点により優勝が決定する。



 ——第一競技、クロスカントリー。

 クサカリ学園内に設置されたコースを走り順位を競う。コース上には様々なアイテムが設置されており、それらを使った妨害も可能だ。


「よし! 最初だから主人公の『くろの』を出走させるぞ!」

「私は足の速い、『ちゃーりー』を出します!」

「わたくしは『ごりらろぼ』を出しますのー!」

「わたくしは出し惜しみせずに、最強キャラの『あんてろって』でいきますわよー!」


 四名がスタートラインに並び、一斉に走り出した。


「くろのいけ!」

「ちゃーりー走ってください!」

「ごりらろぼー! 突き進むのですわー!」

「あんてろって、そこですわー!」


 あんてろってはおもむろに飛び上がり、着地と同時に高速の膝蹴りを炸裂させた。あんてろっての必殺技『爆乳龍神脚』だ。

 必殺技をもろに食らったくろのとちゃーりーは、派手に地面に転がった。


「なにしやがる!」

「背後から卑怯ですよ!」

「お嬢様、今ですのー!」

「オーホホホホ! アンキモ、このままいきますわよ!」


『開幕ひでえwww』

『いきなり最強キャラの最強技かよw』

『マリ助とアンキモ、組んでやがる!』


 トップを独走するマリ助とアンキモ。黒男とメル蔵はその後ろを追いかける。そのまま民家の中へと突入した。


「ご主人様! こちらもコンビネーションでいきましょう!」

「おうよ!」


 民家を抜け、庭にやってきた。塀の上に登った先が順路である。ごりらろぼとあんてろっては塀を登り始めた。


「ご主人様! 今です!」

「任せろ!」


 くろのはちゃーりーの頭に乗って飛び上がった。よじ登る二人を尻目に塀の上に着地をした。


「フハハハ! 地の利を得たぞ!」

「やられましたのー!」

「まずいですのー!」


 くろのは塀の上でジャンプをした。そのまま巨大なケツを叩き落とす。


『でたー! くろのの「マッハケツ」だ!』

『塀の上でこれやられるとマジキツイ』

『やべえwww』


 マッハケツの衝撃で、壁に張り付いていたごりらろぼとあんてろっては地面に叩き落とされた。


「さすがご主人様です! 二人で先に進みましょう!」


 ちゃーりーも塀をよじ登り始めた。しかし次の瞬間、ちゃーりーは地面に叩きつけられていた。


「痛たたた、ご主人様?」

「……」


 チャーリーは再び塀を登った。再びマッハケツが発動し叩き落とされた。


『黒男やりやがったなwww』

『あーあー、やると思ったよ』

『ガチクズwww』


「ご主人様! 裏切りましたね!」

「勝負に裏切るもなにもあるか! そもそも四チームは全員敵じゃい!」


 その後、しばらくマッハケツで三人が叩き落とされる図が繰り広げられた。


「フハハハハ、タイムが迫っているから先に進むか。あばよ!」

「卑怯ですわよー!」

「お待ちなしゃれー!」


 その後はくろのがトップでレースは進んだ。そして最終エリア。


「オラオラ! 追いつけるかな? イテェ!」


 くろのは地面に転がっていた。


「なんで転んだ!? しかしまだ後続との差は充分! イテェ!」


 再びくろのは転がった。地面には黄色いバナナの皮が落ちていた。


「ごりらろぼの必殺技『バナナ投げ』ですのー!」

「さすがお嬢様ですのー!」

「ちくしょおおおおお!」


 転がるくろのを尻目にごりらろぼ、あんてろって、ちゃーりーの順でゴールを決めた。


 一位、マリ助、オーホホ連合、400点。

 二位、アンキモ、クサカリ学園、200点。

 三位、メル蔵、ハチマタ高校、100点。

 四位、黒男、デカケツ高校、50点。



 ——第二競技、障害部屋競争。

 様々な障害が仕掛けられた部屋を順にクリアしていく競技。走る速さよりも、攻撃の重要度が増している。


「え? デカケツ高校って『くろの』と『るびー』と『びしょくろぼ』しかおらんの!? しょうがない、るびーいけ!」


 体力は各競技間で持ち越されるため、連続で同じキャラを出すわけにはいかない。回復が必要だ。


「私はハチマタ高校のエース『まっちょめいど』でいきます!」

「わたくしは『まりー』でいきますわー!」

「わたくしはもう一人の最強キャラ『まひな』でいきますわー!」


 競技の結果、一位、まひな、二位、まっちょめいど、三位、まりー、四位、るびーとなった。


『るびーよっわ!』

『まひなとまっちょめいどの独壇場だったな』

『まりーはよくがんばった』


 総合順位はこちら。

 一位、アンキモ、クサカリ学園、600点。

 二位、マリ助、オーホホ連合、500点。

 三位、メル蔵、ハチマタ高校、300点。

 四位、黒男、デカケツ高校、100点。



 ——第三競技、ケツ割り競争。

 画面の上部に吊り下げられた『くろの』のケツを、ポールによじ登って叩いて割る競技。二チーム一組となり、どちらが先にくろののケツを割るかを競う。


「『びしょくろぼ』しか出せない!」

「『くろめるこ』の出番です!」

「登るのが得意な『びかーるさんたろう』がよろしくてよー!」

「もう一人の最強キャラ『のえのえ』を出しますわー!」


『びしょくろぼ動かねえw』

『びかーるさんたろう凍ったw』

『クサカリ学園強過ぎだろw ゲームバランス考えろw』

『そもそも、ケツは最初から割れてるだろwww』


 総合順位はこちら。

 一位、アンキモ、クサカリ学園、1000点。

 二位、マリ助、オーホホ連合、900点。

 三位、メル蔵、ハチマタ高校、500点。

 四位、黒男、デカケツ高校、300点。



 ——第四競技、格闘大会。

 四人入り乱れてのバトルロイヤル。校舎の上に作られたリングが戦いの舞台だ。殴る蹴る、武器、必殺技、リングアウト。なんでもありの戦いが幕を開ける。


「最後の戦いは当然『くろの』でいく!」

「『めるこ』で勝負を決めます!」

「『まりー』の力を見せてさしあげますわー!」

「お嬢様ー! 『あんてろって』でサポートいたしますわー!」


『この戦いで優勝が決まる!』

『勝てば十万点だから、一発逆転あるぞ!』

『¥6000。メル蔵がんばれ』


 戦いが始まった。四人が一斉に動き出す。


「メル蔵! 今度こそコンビでいくよ!」

「はい!」


 まりーは一目散にリングの端へ走った。目指すは床に落ちているアイテムだ。


「メル蔵! まりーはスナイパーライフルを拾う気だ。阻止して!」

「お任せください!」


 めるこは必殺技のファイアブレスを吐いてまりーを足止めした。


「お嬢様ー! 今まいりますわー!」


 あんてろっては爆乳龍神脚でめるこを吹っ飛ばした。その隙にまりーはスナイパーライフルを拾った。


「これで勝ちですのー!」


 まりーは迫り来るくろのに向けて銃を発射した。もろに銃弾を食らったくろのはステージの端まで吹っ飛ばされた。


「ご主人様ー!」

「いや、これでいい。これがベスト!」


 くろのが飛ばされた先にはアイテムが落ちていた。それを拾い、めるこに向かって放り投げた。


「ご主人様! この武器は!?」

「そう、このゲーム最強の武器だよ!」


『まじかよ!』

『あの武器があったのか!』

『勝ち確じゃん!』


 めるこは武器を握りしめた。長い柄、二又に別れた先端。そう『刺股さすまた』である!

 刺股を装備しためるこは猛烈な勢いで回転を始めた。刺股スペシャルだ。


「食らえですのー!」


 まりーはスナイパーライフルでめるこを狙撃した。しかし刺股は銃弾をいとも簡単に弾いた。


「効きませんのー!」


 竜巻のような刺股がお嬢様たちに襲いかかる。二人はなす術なく蹂躙された。


「アハハハハ! どうですか刺股の力は! 無敵! 不死身! 刺股パワー! アハハハハハ!」


 サイクロンと化しためるこはリングを縦横無尽に駆け巡った。


「ぐわわわわ! ご主人様も巻き込まれているよ!」

「アハハハハハ! すべてを破壊し尽くしてご覧にいれますよ!」


 暴風に巻き込まれたまりーとあんてろっては、リングの下に消えていった。


「アハハハハ! アハハハハハ!」


『やばすw』

『破壊の化身w』

『あーあー、もうめちゃくちゃだよ』


「なんてこった。刺股ちからを手にして、我を失っている。ご主人様がなんとかしないと! やるしかない! あれを!」


 くろのは飛び上がった。無敵とも思える刺股スペシャルには弱点がある。その回転力ゆえ、サイドからの攻撃には無敵を誇る。しかし回転エネルギーが少ない部分が一箇所あるのだ。


「それは回転の中心軸じゃーい!」


 めるこの真上から襲いかかるマッハケツ。慌てて回転を止め、真上に刺股を突き出した。


「予想通り! どりゃあああああ!」


 突き出された刺股がくろののケツに突き刺さったかと思われた。


「かかったな!」


 しかし刺さってはいなかった。刺股の股がケツの割れ目にジャストフィットしていたのだ。ケツ筋で万力のように刺股を挟み込んだ。


「ぎゃあ! 刺股が動きません!」


 ケツの力で刺股を奪い取った。そしてくろののもう一つの必殺技『さばおり』がめるこに炸裂した。


「フンフンフン!」

「ぎゃあああああ!」


『さばおりきたあああ!』

『またこれかいwww』

『あーあ、ここから長いんだよな』

『¥3000。ケツに乾杯』


「フンフンフン!」


 勝負は決した。

 一位、黒男、デカケツ高校、100300点。

 二位、アンキモ、クサカリ学園、1050点。

 三位、マリ助、オーホホ連合、1000点。

 四位、メル蔵、ハチマタ高校、700点。


「フンフンフン!」

「あ、今日の配信はここら辺にしたいと思いますの。あ、シャドーしながら落水さん、楽しんでもらえましたの? あ、人間魚雷さん、次回も見てくださいましね。あ、ニコラ・テス乱太郎さん、ロボチャットありがとうございますの。それではみなさんごきげんよう」


『ごきげんよう』

『ごきげんよう』

『ごきげんよう』


「フンフンフン!」


(軽快なBGM)


「フンフンフン!」

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