第214話 ロボチューブ生配信です! その十

(あ、さ〜はじまりました〜、あ、はじまりました〜、『ご主人様チャンネル』の生配信がはじまりましたよ〜)

(みなさん〜、こんにちは〜。助手のメル蔵めるぞーで〜す)


 画面に白ティー黒髪ショート、丸メガネの上からグラサンをかけた女性が現れた。


『はじまったwww』

『いきなりワロた』

『なんでヒソヒソ声なんwww』

『おさげ紛失www』


「あ、どうもみなさん〜、黒男くろおです〜、あ、でんぐりころころさん、今日も〜よろしく〜お願いします〜。あ、飛んで平八郎さん〜、最後まで見ていって〜くださいね〜。あ、ドリフト会議さん、初めまして〜よろしく〜お願いします〜」


『あ〜、耳に響く〜』

『今日はなにするんだよwww』

『ショートヘアの違和感がすごいwww』


「あ、今日はですね、ロボチューブの一大コンテンツ『ASMR』をやりたいと思います〜。ぷぴーぷぴー」


『ASMRwww』

『なにそれ』

『マイクが近いから鼻息がうるさいwww』


「あ、ライブで八曲さん、ASMRはですね、Autonomous Sensory Meridian Responseの略でございましてね、日本語にすると『自律的感覚絶頂反応』と言うんでございますよ〜」

「ようするに、きもちエー!音の事で〜す」


『メル蔵www』

『楽しそうw』

『きもちエー!くなりたい!』


「えー、ではですね〜、あ、最初は、あの、ロボスライムASMRをやりたいと思います」


『ロボスライム!?』

『なんでスライムw』

『まあ、あるっちゃある』


 メル蔵が桶に入った液体とカップに入った液体をカメラの前に置いた。


「あ、ロボスライムはですね〜、ロボポリビニルアルコールとロボホウ砂を混ぜると簡単に作ることができます〜。あ、どちらも薬局でお安く購入できますのでね、あの、皆さんもロボスライム作ってみてください〜」


『薬局で売ってるのかよwww』

『スライム薬局で売ってたw』


「あ、はい、桶の中のロボポリビニルアルコールにですね〜、水に溶かしたロボホウ砂を少しずつ入れていきます〜。ぷぴーぷぴー」


 黒男はカップからロボホウ砂水を桶に垂らすと、腕を突っ込んで掻き回し始めた。


 チャポチャポ、チャポポ。


「あ、はい〜、皆さん見てください〜。今はまだチャポチャポですけど、あ、だんだんと固まってきますからね〜」


 ニュポポ、ニュポポ、ニュポポ。


「ほら、どうですか〜。粘度が高まってきましたよ〜」


 グニュポ、ギュポ、ギュポポ、ギュポポ、ギュプポ、プポポ。


「あ、ほら〜、もう手で持ち上げられるくらいまで固まってきましたよ〜。トロトロですね〜。ぷぴーぷぴー」


『あ〜、触りてえ〜』

『プルップルやん!』

『いいね〜』


「あ、では、ここでですね〜。黒ノ木家秘伝のスライムの作り方をご紹介します〜。これロボローション。あ、ロボローションを入れるとベトベト感が無くなって手触りがよくなるんですよ〜」

 

 黒男は桶にローションを注いだ。


 ニュパポ、ニュパポ、パポパポ、タパパパパパ、ニュプロ、プロプロ、キュパポ。


『いい音w』

『癒されるわ〜』

『あんなことあった後によくローションいじれるなw』

『¥3000。これで大量にロボスライム作って』


「さあ、ロボスライムが完成でございますよ〜、あ、そんなつもりはなかったさん、ロボチャットありがとうね、ございますよ〜」


 黒男はプルンプルンのロボスライムを持ち上げると、中華麺を打つように引き伸ばしては折りたたみを繰り返した。そしてメル蔵の頭の上に乗せた。


「ぎゃあ! なにをしますか! ゴボゴボ! ぶぇ!」


 ロボスライムで顔を覆われたメル蔵は悶絶しながら手で掻きむしって逃れた。


「ぼへっ! ぐええ! ゲホゲホ! パフンパフン! なんてことをしますか!」

「ははは、わるいわるい」


『ドSwww』

『いい声w』

『ひでえwww』

『メル蔵ASMRw』


「あ、ではね、あの、次のASMRにいきますよ〜。ASMRの定番、耳かきです〜」


『でた、王道』

『いいね』

『やっぱ耳かきだわ』


 画面に紙袋を被った赤い和風メイド服のメイドロボが現れた。


「では〜、私メル蔵が〜、ご主人様のお耳をお掃除したいと思いま〜す」


 メル蔵は椅子に座った黒男の後ろに立った。小型マイクが付いた竹製の耳かきを黒男の耳の穴にゆっくりと差し込んだ。


 ボボボボ、ガソソ、ボボボ、シャッシャ、ボボボボ。


「今日は〜、ご主人様の〜お耳の音を拾うために〜、二千円の高級小型マイクを購入してきました〜」


『安いwww』

『もっといいのなかったのwww』

『次はカメラもつけてくれ』


「まずは〜、入り口付近を優しくお掃除しま〜す」

「あ〜〜〜〜〜〜」


 シャリリ、シュリリ、シュッシュッ、シューシュ、シャワワ、ナリナリ。


「あ〜〜〜〜〜〜」


『だらしねえ顔www』

『耳の中見せてくれ!』

『きもちよさそ〜』


「奥の方のお掃除にまいりま〜す」


 ゴゴッ、ズゴゴ、シャパッ、シュシュッシュシュッ、ボボ、シャッシャッ、ザザザザ、ザリザリ。


「あ〜〜〜〜〜〜!」


『うるせぇwww』

『黙ってろw』

『黒男の喘ぎ声は勘弁してw』


 ボゾゾッ、ゾゾゾ、バババババ、ゾゾッ。


「大きいのを発見いたしました〜。只今より討伐にまいりま〜す」

「あ〜あ〜、バリバリいってる〜。メル蔵頼んだよ〜」

「お任せくださ〜い」


 ババババボボボボ、バリリッメリリッ、ゾンゾン、ギャッ、パキャキャ、ゾゾゾゾゾ、バゾッ。


「取れました〜」

「すっごい大物取れたでしょ。五センチくらいの!」

「いえ〜、三ミリ程で〜す」

「ああ、そう」


『五センチはないだろw』

『アホw』

『取れてよかった』


「あ〜、気持ちよかった〜。ぷぴーぷぴー」

「次はオイルでお耳マッサージで〜す」


 メル蔵はカメリアオイルを手に取ると黒男の耳たぶを揉み始めた。


 チュッチュッチュ、チュヌ、チュヌチュヌチュヌ、チパポ、ニュイニュイニュイ。


「ほわ〜〜〜〜、きもちエー!」


 テュパパパパパ、テュポポポポポ、パチュン、ナリュリュリュリュ、ポイップ、ナポン。


『これ好き』

『耳がむずむずしてきた』

『眠くなる〜』


 テレポ、ピャププププ、ペッチョナッチョ、ヤパパナコナコナコ、プルルン。


「は〜い、お耳マッサージ終了で〜す」

「ほげ〜……」


『いい音だった〜』

『顔がだらしなさすぎて集中できないw』

『寝てた』


「……」

「ご主人様、起きてください!」

「あ〜、じゃあ最後のコーナーいきますよ〜」


 メル蔵が床にずらりと料理を並べた。


「あ、最後はね、はひー、咀嚼音そしゃくおんのコーナーですね〜。あの、料理を食べまして、その音を楽しんでいただくというね、あ、マニア向けのASMRですね〜」


 黒男とメル蔵は床に座った。目の前の食材を手に取った。


「あ、じゃあご主人様はね、これ、セロリを食べます〜」

「メル蔵はニンジンを食べま〜す」


 黒男はセロリにマヨネーズをつけて齧り付いた。


 シャクン、シャリリ、シャム、ミチチ、シャムシャムシャムシャム。


 メル蔵はニンジンにマヨネーズをつけて齧り付いた。


 ボリリ、ボリ、ボリリボリビア、バリバリ、チニュ、ニャクニャクニャクニャク、シャクリ。


「あ〜、うまい。メル蔵のプランター畑で採れた新鮮な野菜〜」

「歯応え抜群で〜す」


『うまそう』

『咀嚼音エグい』

『腹減ってきたw』


 黒男はキャンディをいくつかつまむと口の中に放り込んだ。


 カリ、カロ、ボリッ、メキ、バリ、ボリ、ミキ。


「コンニャクには安物のキャンディがよく合うね〜」


 メル蔵はどん兵衛を勢いよくすすった。


 ズボボッ、ズッ、ズズズズ、ズバズバ、バボバボ、ズバボッ、ズッ!


「ゴフッ! ゲホゲホ! ガフッ! バヒンバヒン!」

「メル蔵、落ち着いて」

「ぶぇぇ! 喉が!」


『あーあ』

『勢いよくすするから』

『鼻からうどんwww』


「ゲホッ! アフン! ハァハァ……ご主人様!」

「どした?」

「ハバネロソースを入れましたね!?」

「入れたけど」

「なにをしていますか!」


『ハバネロwww』

『いつものw』

『ひでぇwww』


「ほら、ティッシュで鼻をかんで」

「ありがとうございます!」


 ブー! チーン! ジュルジュル、ブー! ワシュワシュ、ズズッ!


「ハァハァ」

「お疲れさん」


『マニアックすぎるw』

『BANされるぞw』

『¥5000。これでもっといいマイクを買ってね』


「もぐもぐ、では今日の配信はそろそろ終わりにしようかと思います。あ、税金の悪魔さん、ロボチャットありがとうございます。あ、ニコラ・テス乱太郎さん、次回も見にきてください。それでは皆さん、また次回お会いしましょう」


『いや〜、酷かったwww』

『今回過去最悪だろwww』

『またね〜』

『ZZzzz……』


(心が安らぐBGM)

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