第176話 宇宙エレベーターに乗ろう!
「さあ、授業を始めたいと思います」
「起立! 礼! 着信! トゥールルルル。メル子先生よろしくお願いします!」
「はい黒乃くん、よろしくお願いします」
「メル子先生! 今日はなんの授業をしますか!?」
「今日は宇宙エレベーターについて勉強したいと思いますよ」
「宇宙エレベーター!? 宇宙エレベーターってなんですか!?」
「黒乃くん、今我々が乗っているのが宇宙エレベーターですよ?」
「もう乗っているんですか!? 新幹線を縦にしたような乗り物ですけど」
「はい、今我々は宇宙エレベーターのケーブルを伝って宇宙に向かっている最中なのですよ」
「凄いです!」
「ではまず宇宙エレベーターとはなにかを説明します」
「お願いします!」
「黒乃くん、宇宙エレベーターについて知っていることはありますか?」
「ええと、ええと、宇宙まで続く長い塔です!」
「はい、その通りですね。宇宙エレベーター、または軌道エレベーターは宇宙と地表を繋ぐ一本の塔なのです。その長さはなんと10万キロメートルもあります(最終構想)」
「10万!?」
「地球の直径が1万キロメートルですので、どれほど長い建築物かわかると思います」
「いや長すぎですよ!」
「先生! そんな長い塔がなんで真っ直ぐ立っていられるんですか!? 横に倒れてしまいますよ。日本で一番高い建物でも二千メートルしかないんですから」
「黒乃くん、宇宙エレベーターは地面に『立っている』のではありません。宇宙から『ぶら下がっている』のです」
「ぶら下がる!?」
「そうです。宇宙エレベーターは宇宙空間にある人工衛星からぶら下がっているのです」
「意味がわかりません!?」
「宇宙エレベーターの構想は1900年ごろから存在していました。1960年になると長いケーブルを使った構想が現れます。しかしこの時点では宇宙から地表まで届くような長いケーブルを作るための強靭な素材は存在せず、実質宇宙エレベーターを作ることは不可能だったのです」
「残念です!」
「しかし2000年を過ぎた頃からナノテクが徐々に発展。二十一世紀後半にはいよいよケーブルを作るための技術が出揃ったのです。もちろんそれには多くのロボット達の活躍がありました」
「さすがロボット!」
「メル子先生! そもそもなんで宇宙エレベーターを作る必要があるんでしょうか?」
「とてもいい質問ですね。黒乃くん、宇宙エレベーターができる前はどうやって宇宙に行っていたか知っていますか?」
「んーと、んーと、ロケットです!」
「そうですね。以前は地表からロケットを打ち上げて飛んでいっていました。しかしロケットはとてもお金がかかるのです」
「ゼニですか!?」
「はい。ロケットの打ち上げには大量の燃料が必要です。加えてロケットそのものも使い捨てで、その割にロケットに積める重量もごく僅か。宇宙に人や物を運ぶにはコストがかかり過ぎたのです」
「ロケットが落ちることもありました!」
「安全性の面でもロケットには不安がありました。そこで人類は宇宙開発をするために、より安価でより安全な輸送方法を開発する必要があったのです」
「それが宇宙エレベーターですね!」
「はい。宇宙エレベーターならばケーブルカーでケーブルを伝って登っていけるのでロケット燃料は必要ありません。ケーブルに流れる電力を使って登ればいいだけです。帰りはブレーキをかけながら安全に降りてこられます。電力はいりません」
「そのケーブルカーが今ボクちゃん達が乗っているこれなんですね」
「黒乃くん、外を見てください。景色が綺麗ですね。周囲が段々と暗くなってきました。成層圏に突入したのですね」
「地球が丸い! おっぱいみたいに丸い!」
「では宇宙エレベーターの建築方法に話を戻しましょう。まず建築の起点となるのは静止衛星です」
「静止衛星!?」
「赤道の上空3万6千キロメートルに存在し、地球の自転と同じ周期で地球を回っている人工衛星を静止衛星といいます。地面から見ると常に同じ位置にあるように見えます」
「なるほど!」
「その静止衛星からナノテクの結晶である超軽量、超強靭、超耐久のケーブルを地表に向けて垂らしていきます。しかしこの際ケーブルを垂らせば垂らすほど重心が地表に寄ってしまうので静止衛星は地面に落ちてきてしまいます」
「じゃあどうするんですか!?」
「なので静止衛星から宇宙側にも同じようにケーブルを伸ばしていきます。こうすれば静止軌道に重心が残るので落ちなくなります」
「頭いい!」
「このようにしてケーブルが地面まで届いたらフラフラ動かないように固定します。以降はこのケーブルを軸に地上から物資を送ってケーブルの補強、静止軌道ステーションの構築を行います」
「さあ、黒乃くん。地上3万6千キロメートルにある静止軌道ステーションに着きましたよ」
「やっとですか! 数日かかりました! わあ! 凄い! ステーションの中に町ができてる!」
「ステーション内部には数万人が暮らせる居住スペースがあります。ショッピングモール、スポーツセンター、娯楽施設、教育施設、工場が作られています。まだまだ拡張予定がありますよ」
「ここの人達は何をしているんですか?」
「観光客、施設従業員、ステーション開発職員、政府の役人、月開発スタッフです」
「ところで今、ボクちゃん達浮いています。無重力です!」
「黒乃くん、残念ながらこの宇宙に無重力の場所は存在しません。重力は宇宙の果てまで届くので必ず何かに引っ張られているのです。我々も今、地球の重力に引っ張られています」
「え!? でも浮いてますよ? ほらほら?」
「それはステーションの公転による遠心力と地球の重力が釣り合っているから無重力のように見えるだけです。無重力のような状態になっているだけなのです」
「よくわかりません!」
「黒乃くん、気をつけてください。無重力状態なのはこのエリアだけですよ」
「え? 重力があるエリアもあるんですか?」
「はい。静止軌道ステーションは円筒の形をしています。円筒は内側と外側の二層構造になっていて、内側は無重力エリア、外側は重力エリアになっています」
「なぜそんな構造になっているのですか!?」
「内側は物資を運ぶためのハブになっているからです。無重力状態は物資の運搬に便利ですよね。反対に外側のエリアは居住スペースになっています。人々が生活するには重力があった方が便利なのです」
「メル子先生! 宇宙空間なのにどうやって重力を生み出しているんですか!?」
「はい、簡単です。遠心力です」
「遠心力!?」
「外側の円筒をぐるぐると回転させているのです。その遠心力によってみんな外側の壁に張り付いているのです」
「目が回らないんですか!?」
「ステーションは巨大ですので回転は感じないはずです。とは言えステーション酔いをする人もいるにはいます」
「さあ黒乃くん。重力エリアにやってきました」
「ふう、やっぱり重力があると落ち着きます。人は無重力で生きていけるようにはできていないんだ!」
「黒ノ木シャショー! お疲れ様デス!」
「先輩、お待ちしておりました」
「……遅い」
「FORT蘭丸、桃ノ木さん、フォト子ちゃん! みんな久しぶり!」
「シャチョー! コンナところで何をするんデスか!?」
「なにって合宿だよ! 宇宙合宿でお前らの性根を鍛え直してやるからな!」
「イヤァー!」
「宇宙合宿編、近日公開予定です! お楽しみに!」
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