第143話 ロボチューブ生配信です! その七

「あ、はい、あ、はい、始まりましたの。あ、始まりましたの。『ご主人様チャンネル』の生放送が始まり、あ、始まりましたの」


 画面に金髪縦ロール、シャルルペローの童話に出てきそうなドレスを纏った少女が現れた。グラサンをかけている。


「名乗ってください!」

「あ、近所に住んでるマリ助まりすけですの」


『始まった!』

『あれ? 黒男くろおは?』

『なんでマリ助までたどたどしくなってるのw』


「助手のアンキモですわー!」


 画面に紙袋を被ったセクシーメイドロボが現れた。


メル蔵めるぞーです」


 画面に紙袋を被った巨乳メイドロボが現れた。


「あ、今日はあの、前回の続きですわ。あ、あっさりコテコテさん、ご機嫌ようですわ。あ、飛んで平八郎さん、今日もお願いしますわ。あ、チンソーマンさん、楽しんで、あの、いってくださいましね」


『またロボクエ3やるのか』

『黒男は追放されたままw』

『もういらないだろwww』


「あ、あの、前回黒男さんがパーティを離脱してロボ僧侶の三人と旅立ってしまいましたの。わたくし達も反省をいたしまして、あの、ちょっとやりすぎてしまったと反省をいたしまして、その、黒男さんを迎えに行こうかと思っておりますの」


『反省できてえらい』

『マリ助可愛いよ』

『ゴリラロボより反省うまい』

『なにここ、公園?』


「あ、今日は近所の公園で、はい、放送しますの。黒男さんは小汚い部屋で一人で、その、黙々とプレイしていますの」

「マリ助ちゃん! 新メンバーを紹介してください!」

「あ、そうですの。黒男さんを迎えにいくにしても三人だと冒険が大変なので、あ、ゲストを呼んでいますの」


 画面にダボダボのパーカーとニッカポッカを着たロボットが現れた。頭から紙袋を被っている。


「……です」


『なんて?』

『声ちっさ』

『なんか可愛いwww』


「あ、この方が新メンバーのフォト三郎ふぉとざぶろーさんでございますわ。よろしくお願いしますわ」

「……フォト三郎ちゃんって呼んで」

「フォト三郎ちゃんの職業はロボ遊び人です!」


『え?』

『ロボ遊び人www』

『なんでだよwww』


「先行して旅立ったご主人様がロボナの塔でロボさとりのしょを手に入れてしまう事を見越して、フォト三郎ちゃんにはロボ遊び人になってもらいました!」

「……ロボ遊び人はロボ賢者に転職できるから」


『最終的には勇戦戦賢か』

『まあまあバランスがいい』

『フォト三郎ちゃんがんばれ』


「あ、じゃあ早速黒男さん一行を探す旅に出ますの。あ、皆さんがんばりますわよ!」

「「おー!」」


 ロボ勇者一行はロボリアの城に辿り着いた。


「黒男さん一行がロボまほうのたまでロボないの洞窟の壁を破壊してくださいましたので簡単にロボリアに辿り着きましたの」

「お嬢様ー! 町の人の話では黒男さんはロボまほうのかぎを求めて砂漠へと旅立ったようですわよ」


『魔法なのかロボなのかもうわからんな』

『結構先に進んでるな』


「戦僧僧僧は意外と堅実に進めるようですわね」

「ロボピラミッドは難関ダンジョンですので、そこで足止めをくらっている可能性があります。急ぎましょう!」

「ロボモンスター格闘場で遊んでもいい……?」

「フォト三郎ちゃん、後にしてくださいましー!」


 ロボ勇者一行は砂漠の国ロボスへと辿り着いた。


「どうやら既にロボまほうのかぎは取られてしまったようですね」

「お城の地下のロボふるうでわも取られてますわー!」

「……ロボふるうでわは素早さが倍になる神装備……ロボ戦士には必需品」

「まずいですわー! 船を手に入れられたらもう追いつくことは無理ですわー!」

「お嬢様ー! どういたしますのー!?」


『すごい追跡劇になってるw』

『ロボテガみたいに泳いで海を渡れwww』


「ご主人様一行はロボこしょうを取りにロボラタの町へ向かっているところだと推測します。一か八か、ここは追いかけずにロボトガの町でご主人様を待ち伏せしましょう」


 ロボ勇者一行はロボトガの港町にやってきた。ロボトガ王の命令でロボこしょうを持ってくれば船が貰えるのだ。


「どうです!? 船はまだありますか!?」

「だめですわー! もう船が出港した後ですわー!」

「詰みましたわー!」


『あーあ、遅かったか』

『どうすんだよwww』

『戦僧僧僧の攻略速度やべえ』

『¥5000。マリ助落ち込まないで』


「終わりましたわ。もう追いつく術がございませんわ。わたくしの責任ですわ。あ、無音でラーメン啜る男さん、ロボチャットありがとうございますわ」

「……ある」

「なんて?」

「ボクに秘策がある……」


『フォト三郎ちゃん、まさかのボクっ子www』

『可愛いwww』



 ——ロボ商人は牢屋にいた。

 ここはロボ商人の町。かつて何もない平地に一人の老人がいた。老人はその平地に町を作ろうと思った。町を作るには人が必要だ。老人はロボ商人を欲した。ロボ商人がいれば町を作り大きくできると踏んだのだ。

 実際ロボ商人が来てくれたおかげで町には人が集まり、大きな町へと成長した。

 しかし町が大きくなるにつれロボ商人は変わってしまった。初めは町が大きくなるのが楽しかった。人が集まってくれるのが嬉しかった。それが生き甲斐だと思った。しかしロボ商人は変わってしまった。

 町を大きくする事に囚われるあまり、人を蔑ろにしてしまったのだ。人あっての町なのだと気が付いた時にはロボ商人は牢屋に囚われていた。


 薄暗い牢屋に光が差し込んだ。ロボ商人は目が眩んだ。鉄格子の向こうに誰かがやってきたようだ。よく見えない。


「探しましたわよ、黒男さん」

「誰だいあんたら。こんな薄汚い牢屋に何しにきたんだい」

「ご主人様……こんな変わり果てた姿になって」


 ようやく目が慣れてきた。鉄格子の前にいるのはロボ勇者一行のようだ。


「みんな……どうしてここに……」

「ずっと探していましたのよ」

「なんで……いや、どうやって? 船は私達が先にとったのに」

「……した」

「なんて?」

「……この町に来る移民達の船に便乗した」


 ロボ魔王の城に乗り込むには六個のロボオーブを集めなければならない。このロボ商人の町にはその最後のロボオーブがあるのだ。必ず立ち寄らなくてはならない場所なのである。町が成長するには移民が必要だ。その移民船に乗ってここまでやってきたのだ。


「ご主人様……ロボ戦士からロボ商人に転職したのですね……」

「ああ、転職してレベル1になったお荷物はお払い箱ってわけさ。ロボ僧侶達に騙されたよ。ロボオーブが手に入れば必ず迎えにくるって言ったのにさ。あいつら新しいロボ武闘家を連れてさっさとロボ魔王の城に行っちまったよ。はん、仲間だと思ってたのは私だけだったってオチさ。これが私の冒険の結末ってね」


 マリ助は鉄格子を掴んだ。金属が軋む音が狭い牢屋に反響した。


「まだ終わってなんていませんわ」

「どういう事だい」

「わたくし達とやり直すのですわ! ロボ勇者がいるのはこちらですのよ!」

「今更何をやり直すって言うんだい。ロボ僧侶達がロボ魔王を倒すのを待つのが賢い方法ってもんさ」

「お嬢様の言う通りですわ! 今からロボガの大穴でロボ魔王が倒されるのを待っておけばいいのですわ。そうすればロボ魔王が倒された瞬間にロボフガルドの世界へ先回りできますわ!」

「そうですよご主人様! まだやれます。真のロボ魔王は我々が倒すのですよ!」

「みんな……」


『やべえwww何この展開www』

『わい、ちょっと泣いてる』

『人生ってやり直しできるんだな』


 黒男はよろけながら立ち上がり鉄格子を掴んだ。四人の歴戦のつわもの達を順番に見つめた。


「わかった……ありがとうみんな。ご主人様も戦うよ! メル蔵! メル蔵のロボベホマズン、頼りにしてるよ。マリ助、アンキモ! 二人の圧倒的HP、頼もしいぜ。フォト三郎ちゃん! 剣も攻撃呪文も回復呪文も使えるその万能さ、切り札になるだろうぜ。そして私は……」

「……」

「……」

「……」

「……」


『……』

『……』

『……』



 こうしてロボ勇者一行はロボフガルドの地を目指して旅立った。完璧な構成の四人の間にレベル1のロボ商人が入り込む余地は無かったのだ。

 ロボ勇者は真のロボ魔王を倒すであろう。世界に真の平和が訪れるまで待とうではないか。ロボ勇者に栄光あれ!


(荘厳なBGM)



 そして伝説へ……

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