第139話 面接をします!

『ゲーム制作スタッフ募集。

 明るく楽しいアットマークな職場です。

 完全週休三日制。社会保障完備。交通費支給。ランチ無料。浅草駅から徒歩十分。

 ゲームスタジオ・クロノス代表 黒ノ木黒乃』



 一人目。ピエール=オーギュスト・ルノ悪太郎るのわーるたろう


桃「お入りください」

ル「失礼します」

桃「どうぞおかけになってください」

ル「ありがとうございます」

黒「どうもゲームスタジオ・クロノス代表の黒ノ木黒乃くろのきくろのです」

桃「チーフプランナーの桃ノ木桃智もものきももちです」

蘭「チーフプログラマーのFORT蘭丸ふぉーとらんまるデス」

メ「メル子めるこです」

桃「お名前をよろしいでしょうか」

ル「はい、フランスから参りましたお絵描きロボのピエール=オーギュスト・ルノ悪太郎と申します」

黒「えー、ルノ悪太郎さんはグラフィックデザイナー志望という事でよろしいでしょうか」

ル「はい。御社おんしゃで私のスキルがお役に立てるのではないかと思い志望させていただきました」

黒「具体的にどういったスキルをお持ちでしょうか。得意な絵などはあるのですか?」

ル「はいあります。おっぱいです」

黒「おっぱい?」

ル「おっぱいの絵を描かせていただいております」

メ「お帰りください」

黒「おっぱいというと具体的には何カップのおっぱいの事を指しているのでしょうか」

ル「アイカップのおっぱいを描かせていただいております」

黒「なぜアイカップなのでしょうか。敢えてアイカップを選ぶ理由はあるのでしょうか」

ル「ベストなサイズだからです。重さ、形、色、味。様々な要素を最も美しく表現できるのがアイカップなのではないかと考えさせていただいております」

メ「させていただく、させていただくうるさいですね」

黒「採用」

桃「結果は後日郵送をもって代えさせていただきます。本日はありがとうございました」

ル「ありがとうございました」



 二人目。ジョン・フォン・ノイ満太郎。


桃「お入りください」

ノ「失礼します。アメリカから来ました数学ロボのジョン・フォン・ノイ満太郎と申します。プログラマー志望です」

黒「ノイ満太郎さんはこういうゲームを作りたい、とかありますか?」

ノ「あります。おっぱいゲーです」

メ「お帰りください」

黒「おっぱいゲーですか。具体的には何カップのゲームを作りたいと思っていますか?」

ノ「アイカップです。正確に言いますとアイカップ以上です」

黒「アイカップが最低カップという事ですか?」

ノ「はい。おっぱいスライダーの一番左端がアイカップ。右は無限です」

蘭「システム的に無限をゲームデ表現するのは難しいのデハないでしょウか」

ノ「出来ます。私が発見した第二不完全性定理と公理的集合論を応用すれば可能です」

メ「お帰りください」

黒「採用」

桃「結果は後日郵送をもって代えさせていただきます。本日はありがとうございました」

ノ「ありがとうございました」



 三人目。マリー・マリー。


桃「お入りください」

マ「失礼しますわ。おフランスから参りましたマリー・マリーと申しますわ」

蘭「採用」

黒「フランス被りしてるな。えー、マリーさんはどのような理由で弊社へいしゃを志望されたんでしょうか」

マ「面白そうだったからですわ」

黒「しかしマリーさんは中学生ですよね? 学校はどうしますか?」

マ「学校に行きながら働きますわ。サポートにアンテロッテを連れてくるからなんとかなりますわ」

黒「採用」

メ「ゲーム制作の経験はあるのですか?」

マ「ございますわ。おフランスにいた頃はお父様の所有する会社によく企画を持ち込んでいましたのよ。児童向け文学を何冊か出版していますからシナリオも書けますのよ」

黒「……」

桃「……」

蘭「……」

メ「お賃金はいかほどご所望でしょうか」

マ「このくらいはいただかないとやってられませんわ」

黒「……」

桃「……」

蘭「……」

メ「お帰りください」



 四人目。ゴリラロボ。


ゴ「ウホ」

メ「お帰りください」



 五人目。美食ロボ。


美「店主、ここはゲーム屋だな?」

黒「そうですけど」

美「では御社で一番面白いと思うゲームを出してみろ」

黒「いや、まだゲームは作ってませんが。これからですよ。まあ私は以前いた会社でロボハザードを作りましたけど」

美「店主、このロボハザードは本物か?」

黒「もちろん正規で作って正規で販売したんだから本物ですよ」

美「ほほう、では教えてくれ。本物のロボハザードとはなんなのだ」

黒「ゾンボが出てきて襲ってくる怖いゲームですよ」

美「ふうむ、ゾンボか……そもそもゾンボとはなんなのだ? 死んだロボットが動いているからゾンボなのか? ロボーンシティにもゾンボはいるのか? 御社のゲームが本物と言ったからには答えてもらおう。まず第一にゾンボとは何か?」

黒「別にゾンボの定義なんてないですよ」

美「ゾンボの定義もできないくせにロボハザートというのはおかしいじゃないか」

黒「けぇってくれ!」



 六人目。黒ノ木鏡乃くろのきみらの


桃「お入りください」

鏡「黒ノ木鏡乃です! 中学生です! 兵庫県尼崎あまがさき市から来ました! よろしくお願いします!」

桃「採用」

黒「鏡乃さんはどうして弊社を志望したんでしょうか」

鏡「鏡乃がへーしゃを志望したのは、早く働いてたくさんお金を稼いでメイドロボを買いたいからです!」

黒「単純にお金を稼ぐだけなら他の会社でもいいじゃないですか。どうして弊社を?」

鏡「えっと、お金が欲しいからです!」

黒「いや他の会社じゃなくて、うちじゃないとダメな理由は……」

鏡「わかりません! でも働きたいんです! ここで働かせてください!」

メ「それ以上は危険です!」



 七人目。ノエノエ。


ノ「ハワイから来ましたノエノエです」

黒「採用」

蘭「ヒィッ!」

メ「ノエノエさんはどうして弊社を志望したのですか?」

ノ「マヒナ様に副業をするのもいいんじゃあないかと言われまして」

メ「どのようなスキルをお持ちでしょうか。弊社がノエノエさんを雇用するメリットを教えてください」

ノ「ハワイ料理が作れます。それと不審人物が現れたら鉄拳で仕留められます。サボっている社員がいても鉄拳で制裁できます」

蘭「ヒィッ!」

黒「ヒィッ!」

メ「ゲーム制作をする上でのスキルはありますでしょうか」

ノ「進捗管理ですね。スケジュールに遅れが出た場合は原因を鉄拳制裁します。健康管理も出来ます。毎日地獄のトレーニングを行い、万全の体調で業務に臨めるようにします」

メ「採用」

黒「お帰りください」



 八人目。影山フォトン。


桃「お入りください」

フ「……」

桃「お入りください」

フ「……す」

桃「お座りください」

黒「ずいぶん可愛いロボットが来たな。えー、お絵描きロボのフォトンさん?」

フ「……ください」

黒「なんて?」

フ「……フォト子ちゃんって呼んでください」

黒「あー、フォト子ちゃん。弊社を志望した理由を聞かせてもらえるでしょうか」

フ「……てたから」

黒「なんて?」

フ「募集してたから」

黒「してたから?」

フ「してたから」

メ「フォト子ちゃんはどのような絵を描くのですか? 得意な絵はありますか?」

フ「……系」

メ「なんて?」

フ「可愛い系」

メ「可愛い系?」

フ「……あとキモい系」

メ「キモい系」

フ「キモい系」

蘭「フォト子ちゃんは3Dモデルの作成はできマスか?」

フ「……ばないで」

蘭「なんて?」

フ「キモいから名前で呼ばないで」

蘭「呼んでって言ったノに!?」

桃「フォト子ちゃんのマスターはどのような方なんですか?」

フ「先生は書道家。水墨画もやる」

桃「お名前を伺ってもよろしいですか?」

フ「……影山陰子かげやまいんこ先生」

桃「有名な方ですね。いただいたポートフォリオに先生の面影があります」

フ「……こいって」

桃「なんて?」

フ「先生が外で修行してこいって」

黒「なるほどなるほど。それが志望動機か」

フ「……れた」

黒「なんて?」

フ「疲れたから帰ります」



 九人目。チャーリー。


チ「ニャー」

黒「お前はタダ飯食いにきただけだろ」

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