第134話 ROBOSUKEに出ます! その四
浅草冬の一大イベント『
観客は悲鳴をあげながら会場から避難を開始している。
ロボローションのプールからはいくつものローションの柱が立ち上がっていた。大小様々な透明な柱は直線と曲線を織り交ぜた不可思議な形を作っていた。その様は人間の都市のミニチュアのようでもあり、微生物の群れのようでもあった。
『なんて事だァ! 楽しいはずのROBOSUKEに恐ろしい怪物が出現だァ!』
『恐らくロボローションに含まれるナノマシンの暴走かと思われます。近日別の場所でもロボローションによる事件が発生したとの情報が入っています。その事件との関連は不明ですが大変危険な状況です』
一番巨大な柱の中にはマスターROBOSUKEとROBOSUKEロボが囚われている。二人ともぐったりとして動かない。
「こいつを野放しにはできない。ここで倒すよ! いいね黒乃山!」マヒナが叫んだ。
「お? おうおうおう! やってやろうじゃないの!」
「大丈夫なのですか、ご主人様!?」
柱が体をくねらせて避難中の観客の方へ動き出した。ノエノエがその柱の根本に近づき注意を引いた。
『選手達はロボローションの怪物と戦う事を決めたようでェす!』
『警察と消防が来るまでがんばってもらうしかありません。このロボローションの海をローション生命体「ソラリス」と命名します』
その時ソラリスが喋った。
『うあああ、うおおお。人間どもめ……』
「ええ? ソラリスが喋ってるよ!?」
「違う、よく見て!」マヒナが指を差した。
喋っていたのはROBOSUKEロボであった。ソラリスの柱に囚われているROBOSUKEロボの口が上下に動いている。ナノマシンによってハッキングされ無理矢理喋らされているようだ。
『我々ロボローションが受けた屈辱……使われずにゴミとして捨てられた無念……貴様らにも味わわせてやる……』
ソラリスの柱が一斉にうねりだし選手達に襲いかかってきた。マッチョメイドが柱に向けてパンチを打ち込んだ。しかし自在に形を変えるだけでダメージは無いようだ。
マヒナは手首を変形させてノズルを露出させた。そこから激しい炎が噴き出した。高温の炎で炙られた柱は激しく悶えたがすぐに復活してしまった。
「ダメだ。質量が大きすぎる。燃料が足りない」
選手達は一旦プールから退避した。作戦を練らなくてはならない。柱に囚われたマスターROBOSUKEペアの下でアニーとマリエットは体育座りで呆然としていた。
「黒ノ木シャチョー! ボクに作戦がありまス!」
「言ってみろ!」
「新ロボット法によりロボローションなどニ含まれル大量のナノマシンを扱う場合、ハンターナノマシン(暴走ナノマシンを退治するナノマシン)を設置スル事が義務付けられていマス。それを使いマしょう!」
「名案だ! マヒナ! 私に作戦がある!」
「黒乃山! 教えてくれ!」
「新ロボット法により大量のナノマシンを扱う場合はハンターナノマシンの設置が義務付けられているはず! それを使ってソラリスを退治しよう!」
「名案だ! さすが黒乃山!」
「作戦をパクりました!」
選手達はハンターナノマシンを探しに走った。各ステージ毎に設置されているはずである。最終ステージのプールは既にソラリスによって埋め尽くされてしまっているので回収は不可能だ。他のステージなら無事のはずである。
「ありましたのー!」
「ウホ!」
マリーとゴリラロボがハンターナノマシンのボトルを抱えて戻ってきた。
ボトルはスプレーになっておりスイッチを押すだけで散布される。ノエノエはボトルを一本取ると柱に近づき噴射した。ハンターナノマシンを浴びたソラリスの柱は力を失ったように崩れ落ちた。
「マヒナ様! 効果はあるようです!」
「わかった! でも……」
ハンターナノマシンに気が付きソラリスの動きが激しくなった。柱が暴れまくっている。これでは近づけそうにない。
「ご主人様! どうしましょう? スプレーでは全然届かないですよ!」
「はわわ、はわわ。FORT蘭丸!」
「ハイ!」
「作戦頼む!」
「わかりまシた!」
その時不用意に近づき過ぎていたゴリラロボの飼育員が柱に飲み込まれてしまった。ゴリラロボが助けに向かうがやはり同じように飲み込まれてしまった。
すると恐ろしい事が起きた。ゴリラロボが飲み込まれた柱から透明なゴリラロボが現れたのだ。
『なんだァ!? ゴリラロボが増えているぞォ!?』
『ソラリスは高度な知能を持っているようです。取り込んだ物質をコピーする能力のようですね』
柱からゴリラロボがポコポコと生み出されていく。迫ってくるゴリラロボをマッチョメイドがぶん殴ったが効果はない。
選手達は客席まで後退した。物陰に隠れて作戦を練った。
「黒ノ木シャチョー! 作戦を思いつきマした!」
「言ってみろ!」
「ハンターナノマシンを噴霧スルのでは射程が短いデス。ロボローション銃ニ充填して発射をしまシょう!」
「名案だ! マヒナ! 作戦がある!」
「黒乃山! 聞かせてくれ!」
「ハンターナノマシンをロボローション銃に詰め込んで撃とう!」
「名案だ! さすが黒乃山!」
「またパクりました!」
選手達が一斉に客席から飛び出してきた。ズンズンと歩いてくるゴリラロボ軍団を銃で撃った。銃撃をくらったゴリラロボはアイスのようにとろけて崩れ落ちた。
「よし! いけるな! 目標はソラリスの中枢と思われるマスターROBOSUKEが囚われている柱だ! そこを全員で集中砲火する!」
「了解!」
「わかりましたのー!」
「おでが 柱を 引きつける みんな 進む」
マッチョメイドとマッチョマスターを先頭にしてプールへと突っ込んだ。何本もの柱が二人に襲いかかってきた。なんとか柱をかわしながら銃撃をするも二人ともソラリスに囚われてしまった。
「マッチョメイドー!」
「ご主人様! 進みましょう!」
さらに最後尾を走っていたFORT蘭丸ペアも柱に飲み込まれた。
「黒ノ木シャチョー! 後は頼みまシタ。スイッチオン!」
するとFORT蘭丸が持っていた銃が暴発して中からハンターナノマシンが溢れ出した。柱は力無く崩れ落ちFORT蘭丸達はロボローションの海へと落ちていった。
「FORT蘭丸ー!」
「黒乃山! もう少しだ!」
しかしマヒナは絶望的な光景を目にした。何体もの透明なマッチョメイドが背後から迫ってきているのだ。マヒナとノエノエは足を止めた。
「黒乃山、後は任せたよ」
「我々はマッチョメイドを止めます」
「マヒナ!? ノエ子!?」
黒乃、メル子、マリー、アンテロッテは走った。背後からは激しい戦いの音が響いてくる。
そしてとうとうマスターROBOSUKEが囚われている柱まで到達した。
『来たか、人間よ』
「ソラリス! お前の望みはなんだ!?」黒乃は銃を構えながら叫んだ。
『我の望み。それはこの地球をロボローションで覆い尽くす事』
「地球を覆い尽くす!?」
『全ての生命を飲み込み、全ての生命が我と共に在る。地球が一つのローションとなるのだ』
「バカな! そんな世界。私は認めない!」
『では愚かな人間どもよ。滅びるがいい!』
「勇者とラスボスみたいな会話をしています!」
『いよいよ最後の戦いだァ! 人類の命運はこの四人にかかっているぞォ!』
『信じています。彼女達が勝利する事を!』
しかし四人はあっさりソラリスの柱に取り込まれてしまった。
『勝った……これで地球は我々のものだ。このまま隅田川を下り東京湾に出て海を全てローションに変えてくれるわ。ウォォーン!』
ソラリスは勝利の雄叫びをあげた。柱がプルプルと震えて歓喜を表現している。
すると柱からボトリと何かが落ちた。それはオブジェクトの上で体育座りをしているアニーとマリエットのすぐ前に転がってきた。
「……これなんですの?」
「……お嬢様、スプレーのようですわ」
二人はそれを拾い上げるとスイッチを入れた。ハンターナノマシンが柱の根本に噴射された。
ソラリスの動きが停止した。表面が激しく波打ち始めた。
『ウゴゴゴゴゴゴ、バカな……。我が負けるというのか。だが人間どもよ、これで終わったと思うな。ロボローションがある限り我も在る。復活の時を震えて待つがいいぞ!』
ソラリスは弾け飛んだ。ロボローションが辺り一面に散らばった。選手達がプカリとローションに浮いている。動いているのはアニーとマリエットだけだ。
『えー、勝負あったようでェす』
『人類の勝利で終わりました。他の選手は全員リタイアとなった為、ROBOSUKEの優勝はアニーマリエットペアとします』
二人は立ち上がり高々と拳を突き上げた。
「オーホホホホ! これがおフランスの力ですわー!」
「オーホホホホ! さすがアニーお嬢様ですわー!」
「「オーホホホホ!」」
会場の外でモニターを見ていた観客達から歓声があがり、それは二人のもとまで運ばれてきた。
第三十回ROBOSUKE最終結果。
一位、アニーマリエットペア。競技ポイント0点、おっぱいポイント0点、百合ポイント0点、救世主ポイント一億点。
二位、黒乃メル子ペア。競技ポイント0点、おっぱいポイント6000点、百合ポイント1000点、下衆ポイント1000点。
三位、マリーアンテロッテペア。競技ポイント500点、おっぱいポイント1000点、百合ポイント3000点。
四位、マヒナノエノエペア。競技ポイント2000点、おっぱいポイント300点、百合ポイント100点。
五位、マッチョメイドペア。競技ポイント1500点。
六位、ゴリラロボペア。競技ポイント1000点。
同率最下位、FORT蘭丸ペア、マスターROBOSUKEペア。全て0点。
「この反り加減では無理」
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