第131話 ROBOSUKEに出ます! その一

 パパンパンパン。

 冬の浅草に乾いた花火の音が轟いた。ここは台東リバーサイドスポーツセンター。その広大な敷地に巨大なアスレチックが施設されており、観客席がその周りを取り囲んでいた。

 会場には大勢の観客が詰め寄せ、冬の寒さを感じさせない熱気を放っている。


『やってまいりましたァ! 浅草冬の一大イベント、「ROBOSUKEロボスケ」! 今年で三十回目となる記念すべき大会が始まろうとしていまァす! 実況は私、音楽ロボのエルビス・プレス林太郎でェす! そして解説はこの方ァ!』

『どうもこんにちは。おっぱいロボのギガントメガ太郎です。よろしくお願いします』

『よろしくお願いしまァす!』


 パンパパパン。

 再び花火が打ち上がると大歓声が巻き起こった。第一ステージにチャレンジャー達が集結する。青い空の下で赤い炎を燃え上がらせているのは一体誰だ!?


『さあ、最初のチャレンジャーはいつものこのコンビィ! 黒乃メル子ペアでェす!』

『いつもの二人ですね。今大会が初出場となります』


 腰に巻いたロープで結ばれた二人がスタート台に立った。黒乃はいつもの白ティー、メル子は青い和風メイド服だ。


「さあ、いくよメル子! 絶対優勝して豪華賞品を持って帰るからね!」

「お任せくださいご主人様!」


 気合い充分の二人は入念に準備運動を繰り返す。


『第一ステージはロープで繋がれた二人が協力しながら進んでいくコースとなりまァす。コースから足を踏み外すとロボローションの池に真っ逆さまでェす』

『ヌルヌルテカテカを期待しましょう』


 ポッ、ポッ、ポッ、ポーン!

 スタートの合図と共に二人はコースへと足を踏み入れた。ロボローションの池の上に二本のコースが設置されており、二人はロープに繋がれた状態でそれぞれのコースを進まなくてはならない。


「滑るっ! メル子気をつけて!」

「はい!」


 狭い足場をゆっくりと進んでいく。足場にはロボローションが塗られている為非常に滑りやすい。案の定黒乃は足を滑らせて尻餅をついた。


「ご主人様! しっかりしてください!」

「すっごいヌルヌルする!」


 コースを進むとメル子の道が途切れている。これでは先に進めない。


「ご主人様がこっちの坂を登って上からメル子を吊るすから。そこで待ってて!」

「お願いします!」


 黒乃はロボローションが流れてくる坂を突起物を頼りにして登っていく。頂上に辿り着くとフックにロープを引っ掛けた。するとメル子はターザンの要領でロープにぶら下がり、コースの裂け目を飛び越えた。


『これはお見事ォ!』

『見事な連携ですね』


 次のエリアでは巨大な振り子が二本のコースを塞いでいる。振り子にもろに当たれば落下は避けられない。タイミングを合わせて避けて進まなくてはならない。


「タイミング合わせていくよ!」

「はい!」

「三、二、一!」「トレス、ドス、ウノ!」

「なんて!?」

「私に合わせてください!」

「三、二、一!」「トレス、ドス、ウノ!」

「どっち!?」

「私に合わせてくださいって言っているでしょ!!」

「三、二、一!」「トレス、ドス、ウノ!」


 二人はバラバラのタイミングで振り子を抜けようとした為、ロープが振り子に引っかかってしまった。振り子に合わせて左右に動くロープがメル子の体に巻き付いた。メル子のアイカップをぎゅうぎゅうと締め付けた。


『あー! これはァ!』

『早速お色気シーンがきました。おっぱいポイント1000点加算です』


 二人はドボンとロボローションの池に落ちた。観客席のカメラ小僧達が一斉にシャッターを切った。


『黒乃メル子ペア失格でェす』

『最近メル子選手だけではなく、一部のマニアに黒乃選手も人気が出てきています。なんでも丸メガネと白ティーの組み合わせが堪らんとかなんとか』

『ステージ毎のポイント制ですので、引き続き次のステージも頑張って欲しいでェす!』



 二組目のチャレンジャーの登場に会場が沸き上がった。


『来ました大人気コンビ。マリーアンテロッテペアでェす!』

『金髪美少女中学生と金髪美少女メイドロボというやりすぎ感のあるコンビですね。公式チートキャラです』


「全ステージクリアでおフランスの凄さを見せつけてさしあげますわー!」

「お嬢様なら裏面まで攻略余裕ですわー!」

「「オーホホホホ!」」


 お嬢様たちは危なげなくコースを進んでいく。ターザンエリアも楽々クリアだ。


「オーホホホホ! 楽勝ですわー!」

「お嬢様ー! 次は振り子エリアですわよー!」


 二人はタイミングを合わせて巨大振り子を避けて進んでいく。ゴール目前まで辿り着いた。後一つの振り子を潜り抜ければ第一ステージクリアだ。


『さあ、ゴールまであと一歩だァ!』

『集中力を切らさないで欲しいです』


 最後の振り子は機械仕掛けで高速で振れている。二人は意を決して振り子に向かった。しかしマリーはロボローションに足を取られて振り子の手前で転んでしまった。そのまま振り子へと滑って突っ込んでいく。


「お嬢様ー! 危ないですわー!」


 アンテロッテは進むのをやめ隣のコースへとジャンプした。見事マリーのコースへと着地すると振り子に突っ込む直前にマリーを抱き抱えた。

 しかし二人もろとも振り子に突っ込み、その直撃を受けたアンテロッテはマリーを抱き抱えたままロボローションの池に落ちた。


「ヌルヌルですわー!」

「テカテカですわー!」


『マリーアンテロッテペア失格でェす』

『失格にはなりましたがメイドロボが見事ご主人様のピンチを救いました。百合ポイント1000点追加です』



 三組目。アニーマリエットペア。


 スタートと同時にアニーがすっ転び、足首を捻ってリタイア。


「グネりましたわー!」

「お嬢様ー!」



 四組目。マッチョメイドペア。


『前大会準優勝のマッチョメイドペアの登場だァ!』

『ますます筋肉に磨きがかかっているようです。優勝候補で間違いないでしょう』


 マッチョメイドとマッチョマスターは鋼鉄のような筋肉を見せつけながらスタート台に立った。


「おで 今年こそ 優勝する」

「マッチョメイドなら 絶対勝てる! ワレも 信じてる!」


 二人のマッチョはスタートと同時にダッシュをした。コースの途切れ目はジャンプで難なく飛び越えた。

 振り子エリアにきてもその勢いは止まらない。二人は振り子を破壊しながら突き進んでゴールをした。


『なんという速さだァ! 記録四十秒でェす!』

『凄まじいパワーと筋肉ですね。しかしセットを破壊したので失格です』



 五組目。ゴリラロボペア。


 飼育員の巧みな指示を確実にゴリラロボが実行して六十秒でクリア。



 六組目。FORT蘭丸ふぉーとらんまるペア。


 FORT蘭丸の計算能力を活かして挑むも体が付いていかずロボローションへドボン。



 七組目。マヒナノエノエペア。

 一際大きな歓声が会場を包み込んだ。


『出ましたァ! 前大会優勝者のマヒナ選手とノエノエ選手でェす!』

『引き締まった褐色の筋肉が魅力のクールビューティーな二人です。マヒナ選手に顔面パンチを貰いたいファンが集結しています』


「ふふふ。今大会も優勝いただくよ」

「もちろんです、マヒナ様」


 スタートの合図と共に二人の褐色美女はロボローションまみれのコースをサーフィンのように滑った。坂を登り、途切れ目を飛び越え、あっという間に振り子エリアに到達した。

 二人はそのまま勢いを落とす事なく振り子に突っ込んだ。全ての振り子の隙間を縫うようにして滑り抜けゴールを決めた。


『なんだァ!? 速すぎるぞォ! 記録は三十秒だァ!』

『まるでRTAのような動きでしたね。二人の連携も完璧でした。優勝待ったなしといったところです』



 最終組。マスターROBOSUKEとROBOSUKEロボペア。


『さあ、最後のチャレンジャーは毎度お馴染みのペアが登場だァ!』

『ROBOSUKEと言えばこの人達。ROBOSUKEに人生を捧げたマスターROBOSUKEとROBOSUKEに人生を捧げたROBOSUKEロボのペアです。三十回目の出場です』

『字面がわかりづらァい!』


 二人はスタートと同時に勢いよく走り出したが、繋がれたロープが足に絡まり即ロボローションに落ちた。


「俺達には……ROBOSUKEしかないんですよ」二人は涙を流して悔しがった。


『第一ステージが終了しましたァ! 皆様第二ステージもお楽しみくださァい!』

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