第7話

 捕まえた村人に改宗を施し信者となってから生贄の儀式を行うようになった。

 それは上手くいき、信者を増やしつつ戦力も整いつつある。

 

 ゴブリン達が村人を捕まえ戻ってきた。

「離せ、化け物共!」

「ようこそ、邪神の村へ。

君は洗礼を受けてもらう」

「ナナシ、やはり邪悪な存在だったのだな」

「そうさせたのは君達。

あの時あんな仕打ちをしなければこんな事をせずにすんだ」

「あの時直ぐに首を跳ねておけばよかった」

 指を鳴らすと邪教徒達が村人の口を塞いだ。

 これ以上話しても無駄だろう、後は彼らに任せておくだけだ。

 邪教徒は邪神様の事を延々と聞かせ、村人を眠らせることはなかった。

 睡眠を奪われ、空腹と乾きに襲われる。

 延々と話を聞かさせ狂っていく。

「さあ、お腹が空いたでしょう食べなさい」

 与えられるのは肉だ。

 兎耳族なら拒絶し食べない。

「……いらない」

「私どもが口に含み移して差し上げましょう」

 強引に食べさせていくと次第に肉しか受け付けない体となる。

 そうなれば邪神を崇めるようになり忠実な信者へ変わった。


 悍ましい事だと思いつつも、そうするしか無かった。

 仲間を増やせば儀式による恩恵が大きくなる。

 邪神から受けられる加護が多くなれば、過ごしやすくなり皆は幸せに暮らせる。

 この地が及ぼす害によって出産率が低下しているのだ。

 外から確保しなれば、簡単に滅びてしまう。

 

『優れた魔物を作り出したと思わないか?

初めから生贄となる巫女として育てれば良い』

「巫女?」

『14を迎えたき、生贄となる女だ』

「……生贄の予約なのか、そんな死ぬことが決められている人生なんか最悪だ」

『少ない犠牲を望むのだろう。

より強い魔物を作れば結果的に犠牲は減る』

 普通の儀式ではゴブリンのような雑魚しか作れない。

 それで襲撃をしても被害が出てしまい生贄が必要になってしまう。

 

「確かにそうかも知れない。

巫女を育てよう」

『巫女は我の加護をより得る事になる。

優れた才能を持つ者を選ぶが良い』

 邪神が協力的なのはおそらく何かしらの恩恵を得るためだろう。

 優れた魂の方が復活するのが早くなるのだろうか。

 もう血に染まりきっている。

 邪神のために自分も出来ることをするしかない。


 巫女の育成を始めることになった。

 まずは一人。

 兎耳族は、一月で歳を取る。

 14ヶ月で14歳となる。

「巫女となる子を選定してくれ」

「はい、直ぐに行います」

 

 数ヶ月後、王国がついに動き出し邪神討伐を名目に兵士を送ってくるようになった。

「仕方ない巫女を生贄に……」

『待て、まだ14を迎えていない。

巫女の血を使い召喚を行うが良い』

「巫女の血を使えば良いのか」

『ただし一度だけだ。

それ以上行えば巫女の命は尽きてしまう』

「解った……」

 巫女の血を使った召喚は、強力な魔物を呼び出すことが出来た。

 レッサードラゴン、下位のドラゴンだが兵士100人に相当する戦力だ。

 火炎の息は凄まじく、兵士を焼き払いことごとく討伐隊を壊滅させた。

「勝った……」

『しかし、残念だ。

貴様の命は尽きようとしている』

「何だって、まだ村は……」

『次の世代に託せ。

15歳の若者に地位を譲るのだ』

「嫌だ、このままずっと生きたい」

『我の中で生き続ける事になる。

さあ選ぶが良い』

 最後の使命、それを果たし後継者を任命した。

 彼は名を受け継ぎナナシとなる。


 それと同時に邪神の元へと旅立った。

 村の発展を見守る事になるだろう。

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