第99話 無限魔力の使い方…え?使われ方??マジで?
「さぁ!魔法陣ロボットを先頭に、地獄へ行くぞ!用意はいいか?」
なんか、こいつ、どんどんと偉そうになっていってね?
「言っておくが、地獄へ行けるのは1人だけだからな…まぁ、原神が相手になるだろうから、行くのは本体だけになるわけだが…」
まぁ、妥当な人選だろう。
だが、釈然としない…。
(なんでこいつが仕切ってんの?)
とか思っていると、周りから
「「「ええぇーーー!!」」」
という、全員からのブーイング。
イノリは俺の助手として同行するのが当たり前だと言い張り、他の従者4人は元地元への帰省目的で…。
…って、わかってんのかね。
本来の目的は、自由に行き来できなくなった地獄への潜入であり、連絡の取れなくなった閻魔の現状把握が主な目的なのだ。
ぶっちゃけ、助手は目を瞑るとしても、地元への帰省ってのは、まったく意味がわからない。
何故なら、そもそも悪魔界の吸血鬼であるチーコ以外は、元々日本古来の妖怪であり、地元は地獄ではないはずなのだ。
「「「それを一緒くたにしたのはドクターでーすっ!」」」
「ぬっ!?そ、それは…」
「つまり、すでに妖怪の世界は地獄とつながり、妾達の故郷とも言えるのじゃ…我らの故郷が危険な状態にあるというなら、妾達も行くのが筋ではないかえ?主殿」
くっ!言い訳できねーよっ!
つか、発言のたびに、俺に対する呼び方がコロコロ変わるのはなんとかならんのかね?
「いやいや、盛り上がっているとこわるいんだが、通れるのは1人だし、能力不明な原神がいるのは間違いないし…」
「「「だまらっしゃい!!」」」
「ひっ!」
「全員が行ける方法はありんすえ」
「チーコ?どんな方法が?」
バシッ!
「ジンよ!お前さんは、わちきらよりも格は下。敬語で対応するのが筋でありんすっ!」
「当然じゃな…いくら主殿の分身体から進化したとはいえ、所詮は主殿の分体…妾達とは天と地ほどの格の差があるゆえのう…」
「くっ…」
こうして、俺以上に自由奔放だと思っていたジンは、従者にコテンパンにされるのであった。
「その方法とは?」
「いいから早く穴を開けるにゃん!あとは我々がやるにゃんよ」
「………」
ギロッ!!!
「あ、はい…やりますやります…だから、全員で睨むのはやめてっ!」
とうとう、最初の勢いをなくしたジンは、数分で従者に頭があがらない立ち位置となってしまった。
あわれ…調子に乗ってたジン君…プッ!
☆☆☆
「さぁ、行きますよ?」
「さっさとやるにゃん!」
「はいはい…」
「はい は一回っ!」
「……」
お約束ワードの応酬だな…ハッハッハ!
「時空魔法陣展開っ!!」
グググッ…。
ボワァァーン!!
魔法陣ロボが地面に頭を擦り付け、まるで土下座のような姿勢で地面に這いつくばる事3秒。
ロボの頭を中心に、マンホールの蓋ぐらいの魔法陣が構築されていく。
(ふむ。確かに、このサイズでは1人が限界だな…)
「いいですか?ロボは先に行けません…何故なら、破壊されて魔法陣ごと消し飛ぶ可能性があるからですっ!!」
ふむ。
女性陣…いや、特にミーコにジンは敬語を使い出した。
顔が俺という事に目を瞑れば、結構笑える。
生意気だった時間の短さよ…プププ。
とか思っていたら、何故か俺にもジンと同じような不遇が待ち受けていた。
「「「「さぁさぁ…準備はできましたよ…ニヤッ」」」」
「え?何???」
ジリジリと歩み寄ってくる従者達…。
ゴクリ…。
(めっちゃ嫌な雰囲気なんだが?)
「「「「「さぁ!ここが無限魔力持ちの見せどころですよっ!」」」」」
(は?何言ってんの?こいつら…)
「ロボは穴を開けて先に進めない…でも、こうして地獄への穴は空きました」
「ん?だから?」
イノリがずいぶんとノリノリなのが気になる。
「みんなっ!やるっすよっ!」
「「「「おぉーー!!」」」」
(!!!!)
こ、こいつら…何する気なんだ??
ガシッ!
「ちょっ!」
ガシャン!!
「いてっ!!」
痛みを感じないはずの俺に、久々の痛みが…。
(これは魔法陣ロボの影響なのか??)
そう、俺はみんなに囲まれ、魔法陣ロボの背中に頭を打ちつけられたのだ。
いや、埋め込まれたと言っても過言ではない。
(周りが見えない…)
痛みがあり、周囲の探知もできなくなっている。
「上手くいったでありんすね…」
チーコの言う、上手くいったとは、つまり…。
俺をロボに埋め込む事で、俺の魔力を使い、マンホールほどの穴を広げたのだ。
ま、残念ながら、どれぐらいの穴になったかは、俺には見えないわけだが…。
俺、もしかしてロボを媒体にして、魔力供給装置にされてね??
☆☆☆
痛みがあり、全身の細胞が個別に意思を持っている俺が、周りを把握できない。
これは、ロボを媒介にして、俺の全魔力が随時使われている事を意味する。
使われた魔力は、減った分だけ瞬時に延々と補充される無限魔力持ちの俺が、ごく普通な人体に成り下がっている現実…。
これは、補充される魔力よりも速い速度で魔力が吸われ続けているとしか考えようがない。
ボボボボッ…。
(あー、わかる。宇宙に広がる隕石、惑星が魔力変換されて消えていく感覚が…。この魔法陣ロボを介して、どれだけの穴を開けるつもりだ??)
俺の無限魔力の源は、全世界、全宇宙に存在する大気、原子を含むすべての物質が根源にある。
極端に言えば、この場に充満する大気…つまり、空気そのものを魔力に変換する事も可能なのだ。
だが、そんな事をしたら、ここにいる全員が死んでしまう。
それだけはできない。
だからこそ、任意で支障がないであろう場所にある物質を魔力に変換して常に補充しているのだ。
それが止められない。
補充が間に合わない…。
本来なら、まずありえない速度である。
おそらく、想像もつかないほどのスピードで、想像もつかない量の魔力が注がれ続けているのだろう。
だからこそ、魔力制御は細心の注意を払わなければいけないのだ。
ヘタをしたら、押さえつけているみんなを魔力に変換してしまう大失態を晒してしまうからだ。
これが、痛みを感じ、押さえつけられている体を自由にできない理由である。
まぁ、簡単に言えば、いつものように自動で魔力変換をしたら、まずは身近な物を魔力変換してしまうため、あえて任意で魔力変換及び、補充を強いられているのだ。
(あー、めんどくさい…)
ズドォォォーン!
ズドォォォーン!
ズドォォォーン!
ほら、今度は大きめな惑星が潰れていった…。
まぁ、視界には捉えられないほど遠い場所…いわゆる宇宙の果てにある惑星だし、気にはしないが…。
(潰れた惑星に、知的生命体が存在していたら、間違いなく報復されるレベルだよなぁ…)
もし、地球とのルートが確立していたなら、地球人にとって、廃棄に頭を抱えているなんたらプラスチックやら、大量にある核燃料のカス、完治不能な未知なる病原菌など、誰にも迷惑…いや、感謝されるレベルの物を処分できるのに…。
と思ったところで、それは叶わぬジレンマよ…。
ルートか確立されてたら、まずは地球に帰るわっ!
ハッハッハ!
え?本音はそれだろ?だって??
そんなの当たり前じゃないか…ちょっと考えたらわかる事だ。
ハッハッハ!
(つか、いつまで魔力を注ぎ続けてんの?心なしか、ロボと一緒に頭がドンドンと沈んでいってるんだが?)
お前らっ!
やりたい放題もいい加減にせぇよ?!
と、いつもみんなが俺に向けて思っているであろうセリフを心の中で叫ぶ俺であった。
そう、これがいわゆるブーメランと言われる行為なのである。
え?
今時ブーメランなんて使わない??
そんなん知らんがなっ!!
天才外科医の異世界スルーライフ 咲谷 まき @karaoke2000
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